17.vsホブゴブリン亜種
間に合わなかった。壁にぶつかり、ピクリとも動かないシルフェを見てそう判断する。しかし微かに魔力は感じる。つまりまだ生きているのだ。
「さて、どうするか。」
生きてさえいれば、何があろうが治せる。こいつを倒しさえすれば。
「ふう。」
俺は全身から力を抜く。強化は途中で尽きる。だから長期戦は避けたいが、あいつはどちらかというと長期戦を望んでいる。ここから勝利できるパターン。それを早く考えなければ。
「さあ、蹂躙しようか!」
俺はそう言い自分を鼓舞する。戦闘においてメンタルは非常に重要なものだ。
「『水打ち』」
目に向かって水を放ち、ゴブリンはたまらず目を閉じる。しかしゴブリンは攻撃をやめない。この距離なら適当に振るだけで当たる。それをわかっていたからこそ、出来るだけ身を屈め攻撃範囲から外れる。
「『氷の床』」
床が氷漬けになる。相手を滑らして、行動を阻害させるためだ。俺はできるだけゴブリンから距離を取る。
「氷の花園」
その言葉と同時にホブゴブリンをいくつもの氷の柱が覆う。さっきより動きも遅い。恐らくシルフェがなんらかの手段で足を攻撃したのだろう。
「御開帳だ。」
俺はボロボロな紙をポケットから取り出す。この紙は特殊な紙で、付与された魔法を劣化させ発動させる。なぜ今までこれを使わなかったか。一つ効果範囲が広すぎるから大きく距離をとる必要があったから。二つ目に確実に仕留めるために機動力をそぐ必要があった。条件は揃った。
「魔法刻印書!『落星』」
魔法が刻まれた紙に魔力を込める。師匠が込めた第七階位の土属性攻撃魔法。スクロールに込めた分威力はかなり落ちるが、それでもこいつに与えるダメージとしては十分。俺の持つ紙は粒子になり、上空にて再構築される。
「落ちろ!」
それは巨大な石の塊。このフロアの半分を占めるほどの巨大さ。中心部に打ち込むが故に、既に退避した俺と壁際にいるシルフェには当たらずゴブリンだけを狙える。空を切り、ゴブリンごと地面を抉らんと迫ってくる。今頃氷柱を壊したってもう遅い。
地面に触れた瞬間、爆発した。魔力で構成されている石はすぐに消えていくが、それでも異常と言わざるをえない破壊力。シルフェが作り出した木々を一つ残らず吹き飛ばし、全てを撒き散らす。
GUGYAAAAAAAAAAAAAA!!!
ゴブリンの叫び声が響く。この状況下において声を出せるだけでもすげえもんだよ。俺なら考える間も無く死ぬ。
GUGAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!
それでなお俺の方に一直線に突っ込んでくる。体はボロボロで今にも崩れそうだ。しかしそれでも突っ込んでくる。俺はそれに合わせるように木刀を振るう。刹那の一瞬で俺は真っ直ぐ胴を切り裂いた。冷静さを失ったゴブリンなど、ただの雑魚だ。
『レベルが上がりました。』
この声を聞いた瞬間体から力が抜け、膝から崩れ落ちる。
「終わり、か。」
俺は意識を落とした。
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『レベルアップボーナスを実行します。』
『スキル[剣術]、スキル[水属性魔法]を確認。スキル[魔法剣]を会得しました。』
『一定の技術値を確認しました。スキル[剣術]、スキル[魔法剣]、スキル[闘術]、スキル[完全耐性]を統合。上位技能[剣王]を会得しました。』
『隠し上位技能[勤勉]が、神位技能[勤勉]に進化しました。』
『ステータスがアップしました。』
『これでレベルアップボーナスを終了します。』




