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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
第7章〜神を打ち砕く英雄達〜
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4.蒼の血筋

ファルクラム領。グレゼリオン王国において東の端にある領地。四大公爵の一つであり、現在はグラム・フォン・ファルクラムが統治する場所。


他の四大公爵の領地の中で、ファルクラム領だけは観光によってその土地を栄えさせている。ファルクラム領だけはダンジョンが存在しないのだ。しかしその分、ここはグレゼリオンの要の一つとなっている。他の領地は冒険者が強い土地だが、ここは国家の力が強い場所。騎士などの訓練に使われる場所であり、王都の闘技場よりも栄える地下闘技場が存在する。地下闘技場というのもダンジョンがないが故に成り立つものであるが。



そしてファルクラム邸の地下。そこには、()()()()()()()()()場所があった。明かりはなく、ただただ静かな場所。



「ここは、一体……」



そしてそんな場所に少女が一人。シルフェード・フォン・ファルクラム。ファルクラム家の一人娘。



「びっくりしたかい?」



その隣には本来いるべきでない存在が一人。ファルクラム家が開祖にして、二代目勇者ヴァザグレイ・フォン・ファルクラム。既に死んだはずの英雄の一人であった。



「あなたの言っていたことは本当だったんですね。」

「ああ、だから言ったろ?一時的に聖剣から出てきたお前らの先祖だって。」



シルフェードは彼に連れて来られた。英雄として、成すべき事を成しに来たのだ。ヴァザグレイは指を弾き、シルフェードの前へと歩いていく。そして、振り返ると同時に暗いこの場所に灯りが宿る。そしてシルフェードは大きく目を見開いた。



「これ、は……」

「ああ、そう。これがファルクラム家の秘密。当主にすら受け継がれず、初代当主の俺と、当時のグレゼリオン王国二代目国王だけが知る場所。それは神力によってありとあらゆる干渉を弾き、千年以上この地を守ってきた。」



それは、蒼い竜。手足はない東洋のタイプの竜。とぐろを巻いているはずなのに数十メートルの高さがあるのは見るだけで直ぐにわかる。



「これが、ファルクラム家に力を貸す神獣。王国を守る四つの無形兵器の一つ。東の守護者、青竜だ。と言っても、もう何千年も目覚めてないけど。」



そう言ってヴァザグレイは青竜の体を撫でる。昔を思い出すかのように。



「ああ、おっと。本題はこれじゃない。別にこいつに会ったところで君の青竜の力が強くなるわけじゃないしね。」



そしてその青竜の体によって見えなかった奥の方へとヴァザグレイは進む。それにシルフェードも着いていく。



「本題はこれだ。」



そこには箱があった。長方形の横に長い箱。無骨で、装飾など二の次だと言わんばかりの形。



「俺は、二つの剣を持って戦場を駆けた。今は俺を含めた九人の勇者の魂が入り込んでいるからスターダストは使い物になるけど、昔はただ頑丈でよく斬れるだけの剣だった。それだけじゃ魔王を倒すにはあと一歩足りない。だから俺は、この剣で魔王を殺した。」



そう言ってヴァザグレイはその箱に手を置く。そして箱を開ける。ズラすようにしてその箱を開け、ヴァザグレイは剣を取り出した。



「世界に三つしか無い聖剣の一つ。それこそがこれ。これを君に授けたい。」



それは箱と同じように無骨な剣であった。特徴もなく、派手でもない。武器屋の量産的な剣よりも華がない剣。



「……さて、剣を抜け。我が子孫よ。」



そしてシルフェードは遅い来る殺気を前に、ヴァザグレイが言う前に剣を抜いた。そして体に強化魔法を重ね掛けし、構える。



「この剣はとても偏屈でね。二つの条件を満たさなければ、持つことすら許されない。一つは俺の血を引いていること。」



ヴァザグレイが地面を蹴り、シルフェードの前に立つ。



「もう一つは、この剣に所有者として認めてもらうことだ。」

「要は、あなたに勝てば良いと?」



ヴァザグレイはその答えを示すようにして剣を振り下ろした。それをシルフェードが防ぐ。



「そういうこと。しかしここは青竜の眠る場所だ。攻撃魔法と青竜の力の使用は禁止にしよう。」

「……それは、かなり私の得意分野ですが?」

「俺も、伊達や酔狂で勇者をやっていたわけじゃないからね。」



力でシルフェードをヴァザグレイが押し出すが、それに合わせてシルフェードも大きく距離を取る。



「いいのかい?そんなに近くて。」

「ッ!」



しかし、先程より遥かに長い剣がシルフェードへと振るわれる。突然伸びた剣にシルフェードは動揺しつつも、反射的にそれを防ぐが、その一瞬の驚きが思考が、隙を作り出す。

ヴァザグレイはその右手の剣を手放し、距離を詰める。そしてシルフェードが次の体制に入るより早く、振りかぶりの動作を取る。すると剣が光となり、ヴァザグレイの右手に握られた。そして剣の腹でシルフェードの横腹を叩き、吹き飛ばす。



「君は随分と俺を舐めているようだ。」



壁へと叩きつけられたシルフェへとゆっくりと、それでいて確かに近付いていく。



「この世界に未だ八人しか認定されていない英雄の一人。新しい聖剣を作り出し、魔王を討伐した勇者。青竜を従え、ファルクラムという家を作り出した開祖。」



そして剣を向ける。その蒼き目が、シルフェードを射抜く。



「君は今、伝説の前に立っているんだぞ。」



シルフェードの体が震えた。

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