2.そして、旅に出る
アクト・ラスは槍を持って歩いている。しかし、それは戦闘学部であるアクトがあまり近付かないはずの鍛治工房であった。グレゼリオン学園に存在する一流の施設が揃った鍛治工房。その端にて、一人のドワーフの少女が剣を打っていた。
「よ。」
「ン?ああ、来たカ。」
用があったのは鍛治王。クラウスター・グリルである。
「んで、何の用だよ。俺は結構忙しいんだが。」
「どうせ、武闘祭だロ?」
「まあそうだけどよ……」
クラウスターは剣を打つのをやめ、その手に持つ金槌を置く。そしてアクトも近くにあった椅子に座る。
「どうせ修行なんてしても大して変わんねエよ。やるだけ無駄ダ。」
「おいおいそんなわけねえだろ。」
「いーヤ、間違いねえな。」
やけに自信満々にクラウスターが言う。
「テメエは全部の力が極まってる。神帝の白眼と愚王の黒眼、それに夢想技能。これがテメエの力を支える大部分だ。そこはもう伸び代がねえ。だけど他の部分を今からつけようとしても付け焼き刃にしかならない。」
それは事実である。アクトの強さは主に三つ。槍の技術、特殊な眼、魔法の槍。これが絶妙に噛み合うことによって大きな力を発揮している。今だけでも十分な強さがあるが、悪く言えばここから伸びようがない。全ての力を引き出して、それを眼によって完璧に使いこなしている。だからこそ伸ばしようがないのだ。
「だから、テメエの時間貸せよ。オレが効率良く使ってやるヨ。」
「……一応話だけ聞いてやるよ。」
「悪い話じゃないゼ。オレには作りたい武器があるって話をしたろ。それを実現する日が来たってことさ。」
意味有り気にクラウスターが笑う。
「名付けて人器プロジェクト、ってやつダ!」
人の武器でありながら神器の域に至り、そして超えるというプロジェクト。これは後の歴史の教科書に載るほどの有名なプロジェクトである。
「テメエのその槍、打ち直してやるよ。だからそのための素材集めに手伝え。神を越えるにはそれ相応の素材が必要なんだ。」
神器は普通、そこらの鉱石ではできていない。聖剣であれば、星がないこの世界であるのに降ってきた隕石から採取した隕鉄。この隕鉄は神が作った一級品であり、これが聖剣が神器と呼ばれる理由でもある。
アランボルグ、ヌル、レイシリア、アグリオン。その他にも神器というのは神が作り出した素材から、作り出された武具達。だからこそ地上の素材から作り出した武器であるならば、神器に並び得るとクラウスターは考えたのだ。
「ええ……一応これ親父の形見なんだが。」
「人の心ってのは魂に残るもんだろが。形だけ守っても仕方ねえだろ。それに流用してやるんだから十分譲歩してる。」
「でもなあ……」
「強くなりたくねえのか?アランボルグは確かに神器ではあるけどよ、最弱の部類だぜ。勇者がスターダスト使うんだからそれに並ぶ武器を用意してやっと平等ってもんだろ。」
アクトはうんうんと唸った後に、覚悟を決めたようにクラウスターをよく見る。
「分かった。折角だから受けるぜ。」
「よし、じゃあ今すぐいくぞ。」
「え、今から?」
「当たりめエだろ。善は急げってヤツだ。」
クラウスターはリュックを背負う。いつでも行けるように準備をしていたのだろう。
「このリュックはオレが作った特別性。無限の容量ってのはまあ無理だが、相当入るリュックだ。旅に必要なのは全部揃ってる。」
最後にと金槌をリュックに入れて年相応に楽しそうに笑う。
「じゃあ行こうぜ!最強の武器を作りにナ!」
アクトはどこか諦めたかのように溜め息を吐き、そして己の誓いを胸にクラウスターの後ろを付いていった。
というわけでアクトはアクトで旅に出ます。伝説の武器の素材を探しに行く旅ですね。と言ってもそれの描写はあまりにも本編とは関係なさ過ぎるので書きません。




