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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
第6章~人という無限の可能性へ~
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24.そして、頂へと至る

破壊神とグラドが駆ける。レベル10であるシンヤより速い破壊神。それと同じ速さというだけでグラドの力がただのレベル10を超えていると分かるだろう。



「俺の仲間は優秀でな。テメエの能力はほとんど把握した。」



ミラ・ウォルリナは世界学と呼ばれる神々が定めたルールを細かく調べ、突き止めるということを専門としていた。だからこそ遠視の魔法で破壊神を見たミラは数回の能力使用でその力をおおよそ予想し切った。



「一つ目は必ず動作が必要だって点だ!明確な破壊の意思を持てる行動をしなきゃテメエの破壊は機能しねえ!」



真上から大きく剣を振り下ろす。それを破壊神は腕で止めるが、喰い込み、血が出る。



「二つ目には能力発動時は動けねえってこと。テメエが破壊の力を使う時はその場でほとんど静止していた。」



やはり武器のリーチはそれだけで武器となる。特にグラドの長い剣は、破壊神へ一方的な攻撃をするのを可能とした。



「三つ目に破壊にはテメエの何かを削る。テメエの存在を滅ぼすような何か、だ!」



首元へ剣を突き刺し、地面へ差し込む。そして即座に引き抜き、二撃目を放つ。しかしそれは空を高速で飛ぶことによって離脱し、回避する。



「だが!それならテメエは俺に斬られながら俺を殺せばいい!攻撃を避ける必要なんざねえんだからよ!」



攻撃を避ける。それは不都合があるからだ。破壊の代償があるとはいえ、それはあまりにもおかしい。



「だから四つ目。テメエは攻撃を受けてる最中は破壊ができねえ。そういうことだろっ!」



剣から飛ぶ斬撃が放たれ、破壊神を襲う。それを手で払うも、その時には既に破壊神の眼前にグラドが迫っていた。



「何か反論があるなら言ってみやがれ!」

「ぬう……!」



グラドの剣撃を手で受け流すが、破壊神自身のダメージは免れない。そして破壊神の反応から見て、それは事実であることが想像できる。



「調子に、乗るなよ!」

「そりゃ、こっちの台詞だっての!」



破壊神の周りに黒い球体が現れる。それは破壊の因子。破壊のエネルギーそのもの。しかしそれがグラドを襲うより速く、グラドが破壊神の顔へ踵を叩き込む。黒い球体は霧散し、形にならない。



「おのれぇ!」



破壊神は地上へ落ちる寸前に止まり、周りにさっきの黒い球体をいくつも作り出す。それは破壊の概念として滲み出る破壊の力そのもの。触れたものを問答無用で破壊し尽くす。滅びの球体。



「『終幕の剣(エピローグ)』」



そして破壊神自身が手に剣を握る。黒い剣。それは実態を持たない破壊の剣。



「この破壊の因子を使っている時、私は直接的な破壊の力を使うことはできない。しかし、お前相手にはこっちの方が良さそうだな!」

「まだ武器を選り好みしてる時間があんのかよ!」



グラドが距離を詰めるが、様々な黒い剣や球体がグラドを遠ざける。グラドはそれに当たることはないが、破壊神へダメージを与えることもできない。

しかしこれは実に効果的であった。生命を犠牲にする以上、活動条件があるグラドと破壊神では余裕が違う。長期戦になればなるほどグラドが不利。



「どうした!その程度か人間!」



黒い球体と伸縮自在の黒い剣。それが少しずつ少しずつグラドを追い詰めていく。相手の攻撃を避ける度に体勢が悪くなり、追い詰められていく。



「この世に修羅があるならば、それは我が人生であった。」



しかし、このような状況になることぐらいグラドは知っていた。



「幾度も研鑽を重ね、血反吐を吐き、一つの場所を目指した。」



しかし、それでもここに来た。つまりそれを織り込んだ上で、勝算があったのだ。



「即ち、頂へと。」



そう、忘れていないだろうか。グラドが出したのはまだ伝説技能レジェンドスキルのみ。夢想技能オリジナルがまだなのだ。



「たった一瞬、この戦いだけ。その時だけの幻想を。」



夢想技能オリジナルは想いの発露。即ち、グラドの想いそのもの。



「『儚き幻想(アルティメット)』」



その時、確かにその場に、何かが割れる音が響いた。グラドの体には火がつき、グラドの体を蝕むように燃えていた。その炎はどこか儚く、そして命を感じさせる炎。そしてそれをジンが、ジンだけが食い入るように見ていた。



「行くぞ、破壊神。全力で来ねえと、死ぬぞ。」



グラドは、加速した。破壊神すらも目で追えないスピード。その瞬間に破壊神の右腕が斬られる。



「反応速度が高えな、オイ!」

「ッ!?」



今、破壊の因子を使っている。それによって破壊神は見えないグラドの動きさえも牽制できる。しかしそのせいで破壊神は破壊による再生ができない。さっきも、後ろに下がっていなければ身体中が切り刻まれていた。もし体を治そうとしたら最後、身体中をバラバラにされる。

更に概念そのものが神である。しかし概念の力を行使するというのは自分の存在を削るも同義、破壊の力を使う度に自分の存在を削る。通常時であれば再生が上回るが、身体中を常に斬り刻まれ続けたら。



「ぁ」



そして破壊神は初めて、恐怖した。創造神でさえ自分を殺せなかった。しかし自分を殺せる存在が、自分を殺す力を持つ存在が、目の前にいるのだ。恐怖せずにはいられない。



「『修羅』」



全魔力、全闘気を注ぎ込んだ一撃。これを放てば一日は立ち上がれない。その一撃を躊躇いなく破壊神を斬るために、叩き込む。



「ぁ、ぁあ!」



しかしそれは無造作に破壊神が振った剣で消される。本来なら絶望であろう。戦闘において闘気、魔力が尽きるというのは敗北を意味する。しかしグラドは止まらない。いや、もう止まれない。



「二撃目行くぞ。」



再び魔力と闘気が補充され、二度目の修羅を放とうとしていた。これから穿つ一撃は全てが修羅。自分の生命を犠牲にして能力を急上昇させ、魔力と闘気も生命を薪に回復し続ける。これこそがグラドの夢想。たった一瞬だけ、全生物の頂点へ至る力。



「そんな、馬鹿な。それでは、まるで。」



神より強い力。神のように湧き出る究極の力。



『決定。個体名グラド・ヴィオーガーを戦神として認証します。』

「まるでお前が神のようではないか!」



その修羅の世界を生き抜き、それどころか支配した鬼人。それは修羅の果てに鬼神へとなるのだ。

明日は孔明を手に入れる日です。分かる人にはわかります。

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