22.圧倒的強者
前世、地球にいた時。俺はずっとあいつの背中を追い続けてきた。ありとあらゆる分野で挑み、そして敗北した。しかし今、俺はやっとこいつと肩を並べている。数十年かけて辿り着けなかった場所に、俺は今いる。
「レイ!」
「ああ、任せてよ。」
シルフェは単純に蹴られた時の衝撃で、アクトとシンヤは恐らく転移の衝撃で気を失っている。死を覚悟したところでいきなり転移させられたせいか意識が飛んでいるのだ。つまりここは二人で抑えなくてはならない。
「壊れろ。」
破壊神のその言葉と同時に俺の視界が切り替わる。そしてそれは破壊神の後ろ。完璧なタイミングでの転移。本来なら奇跡とも言える事象でさえも、天才であるレイの前では必然。だからこそレイは天才たりえるのだ。
「おらっ!」
「……面倒くさいな。」」
振り下ろした刃は腕で防がれる。堅い傷は入っても斬り裂くことはできない。
「お前らに破壊の力を使うのは意味がなさそうだな。」
そう言って目に見えないスピードで俺の腹へ拳を叩き込む。あまりにも呆気なく吹き飛ばされるが、事前にに自分から飛び退いていたのでダメージは薄く、地面に着地する。
「身体能力も異次元だぞアレ。どうすんだ。モロに喰らったら一撃で死ぬ。」
ダメージは薄い。はずなんだが、今でも腹が結構痛い。飛ぶのが一瞬でも遅ければ死んでいたであろう。
「やれるだけやるしかないさ。どうせ粘らなくちゃ死ぬんだからね。」
俺とレイは同時に駆け出し、接近する。無限加速によって俺の方が早く破壊神の目の前に立つ。肌の表面を斬るが、決定打にはならず再び吹き飛ばされる。
「僕がどれか分かるかな?」
レイの体は増える。十人ぐらいのレイが現れたのだ。それは俺から見ても本体が分からないほど精巧な偽物。しかし破壊神は地面を蹴り、迷いなく一人のレイへ拳を振り抜く。そして分身が全て消え、その攻撃をレイが結界で防ぐ。
「これを、見破るんだね。」
隙が見つからない。ダメージは与えられることができても、それは決定打にはならない。それどころか即死攻撃を持ち、万能とも言える力は健在。これがRPGなら即座にゴミ箱に打ち込む類の無理ゲー。
「ぐっ!」
「ふん。」
あまりにも容易く、結界をその拳で破りレイを殴り飛ばす。レイは飛ばされている途中で転移して、俺の隣に来る。
「一応、僕は七十二柱ぐらいなら一人で簡単に倒せるんだけどね……初戦から相手が強過ぎないか?」
「取り敢えず時間稼ぎするしかねえだろ。俺らじゃまず勝てねえ。」
「ああ、もう。僕はなんでも完璧に出来るだけで、何でも出来るわけじゃないんだからね!」
レイが久しぶりに少し苛立ちながら魔法を使う。地球じゃあまり見られなかった光景だ。まあそれほど破壊神が強いってことなんだろうがよ。
「『絶剣』」
鋭く再び剣を振るう。しかし今度は剣を掴まれ、それを防がれる。剣速には自信があったんだが。
「もう飽きた。終わりにしよう。」
「ジンッ!」
俺の左足を破壊神は踏み潰し、そして地面に叩きつける。単純にして強力な攻撃。身体能力に差があり過ぎる。今度はレイの目の前に破壊神が現れ、首を掴む。
「ぁ」
「やはり旧人類は脆いな。」
そして確実に意識を落とした後に地面へ落とす。あのレイが、あんなに呆気なく。強過ぎる。なんだってこんな理不尽な。勝つルートが一つも見当たらない。しかし、しかしだ。
「くそ、野郎が!」
まだ戦わなくちゃならない。こんな負けっぱなしで終われない。何より俺らがこいつらを止めなきゃ、王都は間違いなく簡単に壊される。俺はまだある右足と左手で立ち上がり、再び戦おうとした時。
誰かの手が俺を後ろに倒す。そして入れ替わるようにして一人の男が出る。
「寝とけ。ガキが。」
その後ろ姿は、あまりにも見覚えがあった。よく知る声、よく知る姿。それは間違いなく。
「後は俺に任せろ。」
「父、さん。」
俺の父、グラド・ヴィオーガーであった。
人類最強クラス。僅か数人しかいないうちの二人が時間稼ぎのために使われ、『最強の剣士』グラド・ヴィオーガーを呼び寄せた。




