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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
第6章~人という無限の可能性へ~
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14.悪魔王

七十二柱の悪魔が三柱。グラシャラボラス、バティン、フェネクス。全員がエース、たった一人の前に跪いていた。しかも他の雑魚の悪魔を倒すついでにと、片手間に。今でも武器は生成され、悪魔達は死んでいっている。



「さて、よく聞くがいい醜悪な獣風情が。」



鎖によって結びつけられた三柱を睨みながらエースは言う。



「貴様らの目的はなんだ?」

「けっ!教えるはずが――

「なるほど。もう分かった。」

「ッ!?」



エースの眼、王眼は心を読み取る。だからこそ必要なのは心に思い浮かべさせること。それは問いかけるだけで十分なのだ。



「さて、次に行くか。」



エースは翼を広げ、悪魔達を置いて進む。その瞬間に無数の武具が悪魔の体を貫いた。その全てが悪魔特攻の武器。もう二度と彼らが喋ることはないだろう。

エースは知っている。自分の強さを。だからこそ知っている。もっと強い敵がいると。それと自分は戦わなくてはならないと。



「悪魔が、引いて。」



悪魔と戦っていた教師がそう言う。そう。悪魔が一目散に逃げていく。恐ろしいものから逃げるように、ここにいては危険だと言うように。



「そこの教師。下がっていろ。」

「え、あ、はい!」



教師は素早く走る。エースはここにいる全員より強い。故にそれに従わなくてはならない。それは教師全員がそれに承知している。



「来る、か。」



エースは闘志を高める。この大陸に入ってから一番。エースは翼を広げ、海岸沿いに向かう。さっきまでの騒動が嘘かのような静けさ。しかし、さっきより遥かに危険。



「あの三柱がやられた、か。久しぶりだ。七十二柱に欠員が出るのは。まあ、しかし、もう関係ないね。」



エースの眼前には一人の子供。それが水の上を立っていた。その姿は悪戯好きの少年のようで、頭には王冠を被り、マントをたなびかせていた。それはまるで人間のようにも見えた。



「やあ初めまして。人の王、エースよ。よくたった一人であそこまで同胞を殺したもんだよ。敵ながら関心してしまうぐらいにはね。」

「ああ、あまりにも弱過ぎて腰を抜かすかと思ったぞ。拍子抜けにも程がある。」

「ハハ。そうかい。ただの七十二柱なら君を満足させることすらできないか。君が仲間だったらどれだけ嬉しかったことか。」

「ふん。くだらんな。この我が誰かの下につくなど有り得ん。貴様らが我の軍門に下ると言うのなら聞いてやらんでもない。」

「ハーハッハッハッ!言うねえ。」



少年は残虐な笑みを浮かべ、その背中から悪魔の翼を出した。



「さーて、やろうか。」



戦いは唐突にされども激しく火蓋を切る。



「一応名乗っておこう。七十二柱序列第一位『悪魔王』バアル。覚えていきな。」



その一言と同時にバアルの姿が掻き消え、エースの目の前に現れる。そしてエースの腹へと掌底を叩き込む。エースの障壁はいともたやすく貫通し、エースへと叩き込まれる。



「な、ら。貴様も覚えておけ。」



しかしエースは飛ばずに、その場で留まる。そしてバアルの手を掴み、睨む。



「グレゼリオン王国次期国王。エース・フォン・グレゼリオンである。」



エースはバアルを上に投げ飛ばし、口に魔力をためる。そして魔法陣が形成され、昂る魔力の咆哮がそこから放たれる。



「『黄金吐息(ゴールドブレス)』」



それは即ち、竜の砲撃である。黄金に輝くその一撃はバアルの体を飲み込んだ。しかしその一撃を喰らってもなお、悠然とバアルは空に立つ。エースも真上へ飛翔する。



「手加減は一切抜きとしようか。」

「貴様はそうしておけ。我は手を抜く。」

「そう?なら遠慮なく。」



バアルは再び空を翔ける。見える速度ではあれど、かなりのスピード。そして少なくともその一撃は先程の悪魔など比べものにならないほどの。



「権能『悪魔王』」



人類が夢想技能オリジナルを持つのなら、悪魔は権能を持つ。神から直々に与えられし、強靱たる神の力が。



「滅びろ。」



その拳が、エースへと叩き込まれる。それはエースの黄金鱗ゴールドスケイルを容易く壊した。まるで脆いクッキーのように。



「思ったより呆気なかったね。」



エースの腹をバアルの拳が貫く。バアルが貫いた腹の部分からエースの体はヒビが入り、ボロボロと崩れながら壊れていく。バアルは拳を引き抜き、背中を見せる。



「期待してたんだけどね。ま、仕方ないか。」

「たわけ、が。」

「ッ!?」



バアルは勢いよく振り返る。そこには崩れながらも全く変わりない、恐怖さえ感じさせる瞳があった。



「貴様は何も分かっておらん。人という可能性を。そして貴様が相手にしているのは、この世界で最も優れた存在であることを。」



エースの体に光が集まり、黄金の鎧が形成される。それは美しく、それでいて直視できないほど輝いていた。



「『全能たる王(キング・デウス)』これが我が夢想。我が夢想技能オリジナル。」



確かに今もエースの体は崩れていっている。しかし、それよりも速く再生しているのだ。



「貴様に耐えがたい敗北を教えてやろうではないか。」



エースは傲慢に、それでいてその笑みを深めた。

エースが少し本気で戦います。バアルさんもかなり強いですけど。

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