14.ダンジョンの奥深くへと
投稿忘れてた……
大体迷宮の前あたりで足を止める。朝の頃に比べれば人は少ないが、そこそこはいる。
「それじゃあシルフェードさん。」
「別にさん付けはいりませんよ。好きに呼んでください。」
「ならシルフェ。」
本当に今更な事だ。今初めて気づいた。
「普通は11歳が近付く場所じゃあねえよな。なんでいるんだよお前。」
「その言葉そのままあなたにお返ししますよ。ていうか同い年だったんですね。」
え?歳近いとは思っていたが、同い年だったのか。シルフェは身長はともかく、顔は大人びていると言えるだろう。その口調や佇まいは更に大人っぽく感じるのだ。俺が子供の頃ってこんなにしっかりしてたっけ。
「じゃあ行くか。」
「そうですね。」
ここに来る前に話しておいたのだが、シルフェは支援系の魔法と剣術が得意らしい。俺と同じソロを前提としたような戦い方だ。普通、魔法と武術は一緒にやらない。片方鍛えた方が効率が良い。魔法は武術に応用できるし、武術は魔法の隙を助けられる。少しは習得した方がいいのは確かだろう。
「突っ走る!」
俺とシルフェが闘気をまとい、その上でシルフェが強化魔法をかける。
「行きましょう!」
第二層までは突っ走る。これも事前に考えていた事だ。スライムは危険度0と呼ばれる無害な魔物だ。そんな魔物に一々気にしている必要はない。というわけで二層へと走り抜けたのだった。
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二層にはゴブリンが多数存在する。フォレストウルフより身体能力が低いが、頭が良く戦略的に戦う。しかし身体能力が低い故に容易に片付けられる。
「はあっ!」
11歳の子供が化け物を一方的にボコボコにする図。普通に怖いと思う。しかしこの世界、レベル10の赤ちゃんにでさえレベル5の冒険者は敵わない。だから強ければ年齢など些細な問題なのだ。まあ年寄りの方が強い奴多いけど。
「問題なく行けますね。」
「そりゃあ、行けないなら第五層まで向かおうとは思わねえよ。」
魔石を拾いつつそう返す。この調子なら直ぐに三層に行けそうだな。一層を通ったあの移動方は魔力も闘気を大幅に消費する。というわけでこうやって歩いて行っているわけだ。
「お、また来たな。」
「さっさと終わらせましょう。」
俺は木刀、シルフェは真剣を構える。羨ましい。ああ、いや駄目だ。武器がすべてではないはずだ。
「ふっ!」
シルフェが地面を蹴り、そのままの勢いでゴブリンの脳天を貫く。それに対し、俺は首を狙い首の半分ぐらいまで食い込ませ抜く。そして倒れたゴブリンの顔を足で踏み抜く。同じ剣士でも俺とシルフェは少し系統が違う。シルフェは回避型剣士、俺はタンク型剣士だ。
「よし。終わりっと。」
流石にゴブリンぐらいなら危なげなく倒せる。伊達に父さんから剣術は習っちゃいない。
「鮮やかな剣技ですね。」
「まあ、得意分野だしな。」
俺は魔導より剣の方が得意だ。剣の方が先に始めたからだが、何より一つずつ無駄を省いていく洗練の動作が俺に合っているのだ。
「魔力操作お前の方が綺麗だよな。」
「そりゃあジンさんはあくまで剣主体の魔法剣士ですからね。光魔法とか覚えた方がいいんじゃないですか?」
光属性は身体能力強化が多い魔導だ。自分の能力を上げることができるが故に、近接戦闘で魔法を覚えるなら覚えるべき魔法である。
「身体能力を単純に上げるだけじゃ限界があるからな。」
俺たちは三層への階段の前で立ち止まる。四層までは基本的に危険度1のモンスターしか登場しない。だからこそ、まあ危なげなくいけるわけだ。問題なのは五層ごとに階層主と呼ばれる少し強力なモンスターが現れることだ。そこだけが不安だ。
「三層からはゴブリンの村があるんですよね?」
「確か、そうだな。」
そもそもこの迷宮はゴブリンが異様に出てくるためゴブリン迷宮とも呼ばれている。その中でも三層からはゴブリンの村が現れる。上位種こそいないが、数は増えてコンビネーション能力は上がる。まあ多分大丈夫だろう。俺らはレベル1の中では強い方だ。こんな幼いのに、というがレベル1でガチでやってる奴はすぐレベル2に上がるからな。こんなに鍛えてから迷宮入る奴の方が珍しい。
「それじゃあもうひと頑張りと行きますか。」
そう言いながら三層へと降りていった。




