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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
第5章〜大罪と美徳と未知〜
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30.エピローグ3

私を含め、三人で学園の自室に集まっていた。一人は獅子の獣人、クライ獣王国王女エル・フォン・クライ。もう一人は皇女でありながら救護服に身を包んだ女性。オルゼイ帝国皇女ティナラート・オルゼイ。



「こうして三人で集まるのはあの日以来ですね。」

「そうなるわね。確か8歳とかそこら辺じゃなかったかしら。」

「僕はもう集まれるなんて思ってなかったから少し感動してるぐらいだよ。」



この三人は面識がある。今から数年前、国の交流を深めるための大規模な交流会があった。その時にこの三人で会ったことがあるのだ。その時から二人は私のことをシルと呼んでいたし、私とエルはティナラートさんをティナと呼んでいる。



「このまま三人で楽しくお喋りするのもいいけど、何か用があるんでしょう、シル。」

「ええ。各国でそれぞれ調べて欲しいことがあるんです。」



偶然か否か、ここの三人は各国の重鎮の娘達である。私はグレゼリオン王国、エルさんはクライ獣王国、ティナさんはオルゼイ帝国。だからこそ情報網も強く、調べ事をするには相談するのが一番効率がいい。



「今年、ミゴ・ティスメインがアグレイシア教を名乗る団体に唆され二回事件を起こしました。一つは悪魔を王都内に召喚して、被害を与えようとした事件。こちらに関しては未遂で終わりましたが、ミゴが体に悪魔を宿らせた挙げ句乗っ取られ、脅威とみなし、止むを得ず私とジンさんが殺しました。」

「ちょっと待って。一度そこでミゴが死んでるなら二回目の事件なんて起こせないでしょ。おかしくない?」

「ええそうです。だからこそ、そこからが問題なのです。ミゴ・ティスメインが再び姿を現した時、彼はアンデッドになっていました。」

「それは、つまり。」

「ええ。人体の魔物化です。」



人を魔物に改造する手術は研究されていた時期があったが、もう既に世界規模で禁止されている。何しろ利益がない。別に魔物にしたところで強力になるわけじゃないし、魔物になったら本能的に人類を襲うようになっている。テロリストなら喜ぶ研究だが、国側としてはこれほど邪魔なものはないだろう。



「そしてそれもアグレイシア教によるものでした。」

「つまり、アグレイシア教は魔物化の研究を行っているというわけ?」

「そう推測ができます。これだけでも違法団体として取り締まれるのですが、いかんせん全く本体が掴めません。その他にもアグレイシア教と思われる事件はあります。私の友人にアクト・ラスという人がいるのですが、その人の母が悪魔に呪いをかけられ、父が殺されたそうです。しかも七十二柱の悪魔の一柱でした。」

「なるほど、七十二柱ほどの力がある悪魔が自発的に魔界から簡単に出てこれるはずがないわね。」

「そうです。これは証拠がないのですが、これもアグレイシア教が原因ならアグレイシア教は魔界と人の世界を通りやすくしているのでしょう。どうやっているかは見当がつきませんがね。」



魔界と人の世界を簡単に行き来できるようになったらそれこそ世界の終わりだ。悪魔が飛び出してきて、いくつもの国や村が滅び、七十二柱の悪魔によって人の世界が統治されてしまう。



「今でも教団の一員に拷問が続けられていますが、一向に口を割りません。相当強固な体制を敷かれていると見ます。」



それに油断したら直ぐ自殺してしまう。そういう魔法をかけているのか、それ以上に崇拝してやまない何かがあるのか。



「そして極めつけは精霊界への襲撃です。こちらは人に被害は出ていませんが、精霊王が消滅したという点で大きな被害が出ています。『勇者』ジン・アルカッセルによるとローブを羽織った男が現れ、急に精霊王が全て消えたそうです。」

「しかもそれも魔法だったわけでしょ?正体が掴めなさすぎる。」

「ええ。どこに拠点を置いているのか、どれだけの人数がいるのか、目的が何か、どれほどの力を持っているか。想像が全くできません、」



ですが、だからといって何もしないというのは駄目だ。



「民に不安を与えるわけにはいけませんので、公にはできませんが、各国で調べあげるようにお願いします。これはグレゼリオン王国国王陛下からの正式な要請とみなしてください。確実に報告をし、行動するようにお願いします。それがこの書状です。」



エルさんとティナさんにそれぞれ書簡を渡した。



「グレゼリオン王国も現在、精霊界のことについて調査しています。分かり次第伝えますので、その際は宜しくお願いします。」



そうして頭を軽く下げる。



「これで一通り伝えたいことは伝え終えましたね。何か質問はありますか?」

「それなら一つ。」

「どうぞ。」



ティナさんが手を上げたのでそれに返す。



「勇者様とはどのような仲なの?」

「は?」



それが全く予想していなかった質問なので、つい反射的にそう返した。



「10歳ぐらいの頃からずっといるのよね?ならそういう仲になっててもおかしくはないでしょ。」

「ありませんよ。ジンさんは欲望が死んでいるので、そういうのは興味がないんです。」

「いやいや、そんなこと言ってもしかして……」

「エルさん。貴方までですか……」



私は頭を抱える。たまにこういう茶々をいれる人がいるのだ。一応確かに書類上では婚約しているが、アレも形だけのものだし、だからなんだという話だ。



「折角だししっかり聞かせてちょうだい。おもしろ、いえ興味があるわ。」

「ちょっと本音出てますよ。」

「いいじゃん。付き合ってないなら付き合いなよ。シルなら大事にするよあいつ。」

「エルさんは少し黙っていてください。」



そうやって結局長い間話すことになってしまった。

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