29.エピローグ2
クラウスターと俺は二人で工房にいる。
「なア、アクト。」
「どうした?」
クラウスターは笑みを浮かべ、満足そうに金床にもたれかかっていいる。
「やっぱなんか作ンのは楽しいな。」
「そうかい。」
するとまた沈黙が続く。そして再びクラウスターが口を開く。
「オレはよ、今まで最高の作品を作ったつもりだ。初代鍛冶王よりも優れたな。」
「ああ。」
確かにあの聖剣は凄かった。あんなに優れた剣に更に無数の付与をしたのだから。初代を越えたということにも納得できる。
「だけそ最高の作品じゃねえんだ。まだ神器、神が作った作品を越えていない。」
その言葉はあまりにも傲慢に思えたが、遥かな高みに挑む子供心も想起させた。俺もその考え方は好きだ。
「だから、よゥ。」
どこか恥ずかしそうに、それでいてしっかりと言った。
「それまで、オレを助けてくれねえか?一人だけじゃあ、そこに行ける自信がねえんだよ。だから俺と一緒に来てくれねえか。」
クラウスターが作る武器が神器を超える。それは果て無き、あまりにも長い道のりだろう。だけど、自然と断るつもりがなかった。
「ははっ。」
「な!何がおかしいんだよ。」
俺の答えを待つクラウスターがまるで小動物のように震えていて、思わず笑ってしまった。
「受けてやるよ。」
「え、ほんとか?」
「ああ。俺も見てみたいんだ人間の限界ってやつをな。」
悪魔を倒してやることがなくなっていたところだ。ちょうどいい。新しい目標にになる。
「それで、お前が神器を超えれた日が来たら俺に槍でも作ってくれよ。」
「ッ!ああ!任せろ!」
これが『全知全能』アクト・ラスと、『創造神』クラウスター・グリルの始まりである。最高の素材を手に入れるために各地を旅し、最高の技術を手に入れるためにいくつもの武具を作った。
クラウスターはこの戦い以降に計、千の力作を生み出した。正確に言うなら気に入らない作品は全てその場で壊したからこそ、千しか残らなかった。それが現在にも残る『千魔人器』である。
神々が生み出した『神器』へと迫り、超えるために作られたその千の作品は人の武器として『人器』とも呼ばれる。
その千の作品の最後、千個目の最後の作品に槍を作った。そして当時三十歳のクラウスターはその創作人生を終え、鍛治王の座さえ他人に譲った。そして二度と作品は作らなかった。それはその千個目の作品が完成しきったと判断したからである。
そして今も、その槍を持てた人間はたった一人しかいない。それが誰かは、もう分かるのではないのだろうか?
多くは語りはしない。それは平凡な英雄記とはまた違う物語だからだ。だが、この世に美しき二人の男女がいたことを覚えてくれればいい。




