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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
第5章〜大罪と美徳と未知〜
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29.エピローグ2

クラウスターと俺は二人で工房にいる。



「なア、アクト。」

「どうした?」



クラウスターは笑みを浮かべ、満足そうに金床にもたれかかっていいる。



「やっぱなんか作ンのは楽しいな。」

「そうかい。」



するとまた沈黙が続く。そして再びクラウスターが口を開く。



「オレはよ、今まで最高の作品を作ったつもりだ。初代鍛冶王よりも優れたな。」

「ああ。」



確かにあの聖剣は凄かった。あんなに優れた剣に更に無数の付与をしたのだから。初代を越えたということにも納得できる。



「だけそ最高の作品じゃねえんだ。まだ神器、()()()()()()()()()()()()()()。」



その言葉はあまりにも傲慢に思えたが、遥かな高みに挑む子供心も想起させた。俺もその考え方は好きだ。



「だから、よゥ。」



どこか恥ずかしそうに、それでいてしっかりと言った。



「それまで、オレを助けてくれねえか?一人だけじゃあ、そこに行ける自信がねえんだよ。だから俺と一緒に来てくれねえか。」



クラウスターが作る武器が神器を超える。それは果て無き、あまりにも長い道のりだろう。だけど、自然と断るつもりがなかった。



「ははっ。」

「な!何がおかしいんだよ。」



俺の答えを待つクラウスターがまるで小動物のように震えていて、思わず笑ってしまった。



「受けてやるよ。」

「え、ほんとか?」

「ああ。俺も見てみたいんだ人間の限界ってやつをな。」



悪魔を倒してやることがなくなっていたところだ。ちょうどいい。新しい目標にになる。



「それで、お前が神器を超えれた日が来たら俺に槍でも作ってくれよ。」

「ッ!ああ!任せろ!」











これが『全知全能』アクト・ラスと、『創造神』クラウスター・グリルの始まりである。最高の素材を手に入れるために各地を旅し、最高の技術を手に入れるためにいくつもの武具を作った。


クラウスターはこの戦い以降に計、千の力作を生み出した。正確に言うなら気に入らない作品は全てその場で壊したからこそ、千しか残らなかった。それが現在にも残る『千魔人器』である。

神々が生み出した『神器』へと迫り、超えるために作られたその千の作品は人の武器として『人器』とも呼ばれる。


その千の作品の最後、千個目の最後の作品に槍を作った。そして当時三十歳のクラウスターはその創作人生を終え、鍛治王の座さえ他人に譲った。そして二度と作品は作らなかった。それはその千個目の作品が完成しきったと判断したからである。


そして今も、その槍を持てた人間はたった一人しかいない。それが誰かは、もう分かるのではないのだろうか?



多くは語りはしない。それは平凡な英雄記とはまた違う物語だからだ。だが、この世に美しき二人の男女がいたことを覚えてくれればいい。

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