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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
序章〜英雄の第一歩〜
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13.ダンジョン再び

ここはダンジョン。冒険者を始めてから一年ぐらいたったが、ここに来たのは2回目だ。相変わらず人は行き交っており、騒々しい。師匠が実戦経験を積めと言うから来たのだが、本当ならあまり来たくなかった。師匠の家に住まわせてもらっている今、お金を使う場面がなくて別に行く必要がないのだ。魔法言語の習得がまだだからな。それも進めたかった。



「5階層まで行かないと家に入れさせてくれねえらしいからな……」



入り口には人だかりができていた。それと同時になにか争う声も。どうせあそこしか入り口はないし、意図せずその人混みに近付いていく。



「だから!12かそこらのガキが行くには早いんだよ!とっとと帰りやがれ!」

「私は大丈夫だって言ってるじゃないですか!どうせ自己責任なのですから貴方達には関係ありません!」



俺と同い年ぐらいの女の子とスキンヘッドのおっさんが言い争っている。まあこれなら俺も関係ないか。別にどっちが悪いってわけじゃなさそうだし。そう思いながら人混みを掻い潜って第一層へ向かおうとした。



「それを言ったらそこの人だって私と同じぐらいじゃないですか!あの人は良いんですか!?」

「ダメに決まってんだろ!おいそこの坊主ちょっとこっち来い!」



よし。逃げよう。俺はこんなところで止められる訳にはいかんのだ。俺は足に闘気を集中させ、地を蹴ろうとした瞬間。首元を掴まれる。スキンヘッドだ。



「俺は関係ないだろ?」

「関係しかねえよ。こっちに来い。」



今からお前のあだ名ハゲな。



「で、ガキがなんでダンジョンに来てんだよ。遊びで来るところじゃねえんだぞ。」

「失敬ですね。私は幼少の頃から剣を習っています。防具もしっかりしてますし、問題ありません。」

「多少人よか優れてるぐらいじゃ、ダンジョンじゃ意味ねえんだよ。とっと帰れ。」



俺は師匠の命令で帰れないんだよ。入るか野宿かの二択だ。入るしかないはず。取り敢えず落ち着いてもらうしかないか。



「まあまあ落ち着いて。」

「坊主はお前なんだよ。私服で、木刀だけ持って。お前それで何しに来たんだ?」

「木刀の何が悪い。」



木刀だろうが相手を倒すという最終目的さえ達成できれば問題ない。



「叩けば殺せる。」

「それは武器の最低条件だっての!鉄より脆いし、そんなの直ぐ壊れるわ!」

「知らん!俺の木刀は壊れん!」



俺は木刀を相手の顔に向かって突きつける。ハゲも斧を抜き吠える。



「ああ!ならいいよ!力づくで分からせてやらあ!俺が勝ったら大人しく帰りな!」

「やるのか?」

「え?ちょっと待ってください!」



女の子が制止の声をかけるが無視。



「俺の名はカルマセ・ヴァグノ。レベル1冒険者だ。名乗りな!」

「お前は魔物相手に名前を名乗るのかよ!」



俺は闘気と魔法を合わせた打突を放つ。



「おい!不意打ちは――



俺は相手の声を無視して次々と攻撃を仕掛ける。



「ちょっ!おま、やめろ!」



ハゲも斧を振るい攻撃しようとするが、素早く斧を持つ手の手首を叩き斧を落とさせる。



「『水の(ウォーター)――

「ストップストップストップ!これ以上はダメです!」



女の子が間に入って止める。なんだ。なぜ止める。



「なんで途中から入った貴方の方がブチ切れてるんですか!?そんな危なっかしい魔法をここで使わないでください!」



別にキレてない。ただ戦いなら容赦する理由がない。



「おーい!こっちだ!」

「迷宮の入り口でいざこざを起こすんじゃない!少し着いてきてもらおうか。」



衛兵の顔を見た瞬間俺の怒りは一瞬で吹き飛んだ。




==========




「なんでそんな事をしたんだ?」

「いや、ついカッとなって。」

「我慢はできなかったのか?」

「俺の唯一の武器をバカにされたんで。」



俺は取調室で取り調べを受けている。カツ丼はない。ただただ静かで虚しいだけだ。



「今回は相手側にも責任はあるし、お前も一概に悪いとは言い切れんから良いだろう。が、次は牢獄の中だからな。」

「はい。以後気をつけます……」



取り敢えず豚箱エンドは回避できたが、かなりの時間を無駄にした。俺が外に出るとさっきの女の子が立っていた。



「おや、やっと終わったようですね。」

「何の用だ?」

「いえ、単純に少し用がありまして。」



俺に用?心当たりがないな。



「さっきの事か?」

「まあ、あそこであんなにブチ切れるとは思いませんでしたがそれとは別件です。」



別件か。なら俺にはもう心当たりはない。なんとなく腹が立った死ね!とかじゃないだろうし。



「私と仮でパーティを組みませんか?」

「パーティ?」



パーティ?パーティって、あれだよな。一緒に冒険する仲間的なやつだよな。



「何故だ?」

「いえ、実はよくパーティを組もうとは思っていたんです。まあ少し失礼かもしれませんが、私と同等クラスの冒険者がいなくてですね。そこで現れたのがあなたというわけです。」



おいおい。まるで俺が強いみたいな言い方をしてくれるな。そりゃあ化け物みたいな師匠から教わってきたが、未熟な部分がまだ多いと思うのだが。



「俺はレベル1だぞ?他にも強い奴ぐらいなら沢山いると思うのだが。」

「この世界にレベル1は何人もいます。冒険者の中でも3割以上がレベル1です。もちろん私も。レベル2以上の方はちょっと私とは実力が違すぎますからね。」

「だったら同レベルで実力が近い俺と組みたいと?」

「いえいえ、提案ですよ。互いの得意分野が何かわかりませんし、そこら辺は自己紹介していきましょう。」



うむ。まあ悪い話ではない。俺は五層まで最短でいきたい。二人以上いるなら効率も良いし、安全性も上がる。唯一の難点として報酬が下がるが、今回は報酬はどうでもいいしな。



「まあ、取り敢えず俺は構わねえよ。だが、できるなら今から迷宮に行きたいんだが。」



今は大体昼頃。ダンジョンに入るには少し遅いが、俺は行っても行かなくても五層まで行けなきゃ野宿だ。なら可能性がある方に賭けるのは当然。



「良いですよ。それじゃあ行きながら自己紹介しましょうか。それでは私の名前はシルフェード・ファルクラムです。」

「俺の名前はジン・アルカッセル。よろしくな。」



そうやって俺たちは話しながら、ダンジョンへ向かっていった。

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