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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
第5章〜大罪と美徳と未知〜
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20.フィーノ・ヴァグノ

この世界には八人の英雄が存在する。




初代勇者であり、グレゼリオン王国が初代国王である原初の英雄。『人王』ピースフル・フォン・グレゼリオン。


二代目勇者にして、聖剣を以てして魔王を代々殺す制度を作りあげた英雄。『勇王』ヴァザグレイ・フォン・ファルクラム。


聖剣を作り上げ、ドワーフの頂点に立つ初代鍛治王となった英雄。『鍛治王』アラヴィーナ・アルファ。


獣王国クライを創設し、獣人に安永の地をもたらした英雄。『獣王』グラレリオン・フォン・クライ。


魔法の真理を解き明かし、現代の方式の魔法の祖を作り上げた英雄。『魔術王』シンス・ヴィヴァーナ。


数多もの神獣を従え、神獣と人類種に永久的な平和を約束させた英雄。『自然王』キャラ。


人類最強と呼ばれたほどの力で何人もの人を救い、グレゼリオン王国の危機でさえ跳ね除けた英雄。『騎士王』ディザスト・フォン・テンペスト。




そして最後の一人こそが、最新の英雄であり、ありとあらゆるダンジョンを攻略し、いくつもの迷宮的暴走スタンピートをたった一人で押さえ込んだ英雄。『冒険王』ギャンレイグ・ヴァグノ。


一番身近であり、最も自由に生きた英雄。そんな英雄の孫、それこそがフィーノ・ヴァグノであった。




方向属性という自分だけの属性を持っていたフィーノは、いずれ二代目の冒険王になると期待された。彼自身も、そうなるために努力した。


しかしそう上手くはいかなかった。まず、武器の才能がなかった。どんな武器を使っても、人並み程度にしかできなかった。だから最初に武器を使うのをやめた。

次に彼は致命的なまでに根性がなかった。魔力は使った分だけ増える。だが、魔力欠乏の辛さに耐えかねて何回もサボった。


これは恐らく、方向属性が万能過ぎた故であろう。彼は驕っていた。事実、彼は同世代の中でトップクラスに優れていた。しかし確実にトップではなかった。ジン・アルカッセル、エース・フォン・グレゼリオンには勝てなかった。しかしそこで満ち足りてしまったトップクラスだという事実によって安心してしまった。




――だから、取り残された。




武闘祭の前までならフィーノ・ヴァグノはエース・フォン・グレゼリオンに次ぐ強さがあったであろう。つまり抜かされてしまったのだ。最初は直ぐに追い付くと考えていた。少し頑張れば追い付くと。だが追い付く事はなかった。レベルは上がりはするものの、どんどん差がついていった。


そして彼は嫉妬した。シルフェード・フォン・ファルクラムしか持たぬ『青竜』の力を、アクト・ラスしか持たぬ『両眼』を、ジン・アルカッセルしか持たぬ『努力』を。嫉妬せずにはいられなかった。



頑張れば頑張るほど逃げてしまう自分が嫌いで、才能があっても並べない自分が嫌で、自己嫌悪を拒んだ結果、他者を妬んだ。これは自然な事とも言えるはずだ。実力がない人間は、古代から自分ではなく他者に負の感情を向ける。他者ではなく自分を嫌える人間は、必ず何かが強いのだ。




冒険王の孫であるという事実。他の人にはない固有属性があるという事実。自分が他者より劣っているという事実。その責任を重圧に耐えきれず、その感情を余す事なく放出させてしまった。



冒険王の孫でなければ、冒険王を目指すこともなかっただろう。



固有属性を持っていなければ、希望を抱かなかっただろう。



他者より努力ができれば、人を嫉妬しなかっただろう。






その全てが、彼に嫉妬之罪レヴィアタンを目覚めさせた。

やっべ。なんか本格的にややこしくなってきた

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