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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
第5章〜大罪と美徳と未知〜
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19.嫉妬

十四技能を集めている奴がいる。ならそいつも間違いなく十四技能を持っている。しかし何かしら関与しているなら、恐らく美徳系じゃない。美徳系の奴らならもう既に行動を起こしている。何かしらをして放置なんて有り得ない。なら残るのは暴食と嫉妬。行動パターンから嫉妬であると予想できる。


そしてこんな大事を起こす人物であるなら、それほどの力を持っているはずだ。この時点で騎士、戦闘学部の生徒、冒険者の三択になる。騎士は数多もの試練を乗り越えて立つもの。その努力に全員が自信を持っているはずだし、人を嫉妬するなんて騎士失格だ。有り得ないとまでは言えないが、殆どないと思っていい。


なら生徒か冒険者だが、恐らく何かしら嫉妬が目覚める切っ掛けがあるはずなんだ。そして少なくとも生徒で、身近に俺たちに嫉妬を覚えたであろう人物を俺は知っている。というか思い出した。そして恐らく奴まそこにいる。俺があいつを負かした場所。


広い、広い闘技場の真ん中。そこに予想通りの人物が、立っていた。



「やっぱりてめえか。フィーノ。」



俺とシルフェは目の前の男を前に、剣を抜く。聖剣はないから木刀ではあるが、問題はない。



「以外だな。名前を覚えていたのか。」

「さすがにな。」



フィーノ・ヴァグノ。俺と大会の準決勝で戦い、破れた男。エルよりは強いだろうが、俺らよりかは弱い。前はそれぐらいの強さだったはずだ。恐らくこいつが、今回の元凶。



「お前が十四技能を集めたのか?」

「そうだ。」

「どうやって?」

「教える義理はない、と言いたいところだが教えてやるよ。」



その言葉に俺は拭いきれない違和感を抱いた。こいつが十四技能を集めたというなら明らかに国家反逆罪だ。だがしかし躊躇いなくその事実を明かした。つまりは逃げ切れる自信があると。王国の剣である、『人類最強』ディザストからでさえも。更に計画を教えるなんて何の意味もないことを。



「俺が持つ固有属性ユニークエレメント。その名は方向属性。ありとあらゆるベクトルを操作できる。あの時、俺たち十四技能が全員集まった時に思考誘導をかけていた。全員の思考をこの王都バースへ寄せたのさ。」

「そうですか。なら後は牢屋の中で聞きましょう。国家反逆罪と国家転覆未遂の容疑で拘束します。」

「できると思うのか。俺は勝機があるからここにいるんだぜ?」

「関係ありませんね。どちらにせよ誰かが貴方を捕まえなくてはなりませんから。」



そう言ってシルフェが先に飛び出す。走るその横に蒼き光が集まり、形を成していく。それはまるで東洋の竜のように。



「『幻影青竜(ファントム)』」



即ち青竜。四大公爵が誇る決戦兵器の一つ。シルフェが剣を振るうより速く、青竜がフィーノへと突っ込んでいく。



「『絶剣』」



俺は即座に剣を振るう。相手が何かする前に問答無用に叩き斬る。それが一番早い。しかし木刀は俺の思うように進まず、反射されたように吹き飛ぶ。そして肩が一回転して、勢いよく同時に肩が抜ける。



「別にそれは、振らさなければ怖くない。」



フィーノの目が俺を射抜く。目の前に来るシルフェを見ながら俺を見る余裕もある。これはかなり厄介だな。なら、今ここで回復ができるシルフェを失うのが最もヤバイ。



「魔力腕ッ!」



魔力でできた腕が俺から木刀を奪い、木刀を振るう。恐らく本体を狙っても方向性を曲げられる。さっき自分で自信満々に言ってたしな。絶剣の対象をシルフェに変えられでもしたら厄介だ。だからこそ狙うのはそこじゃない。距離だ。



「よう。」

「ッ!」



距離の概念を切り裂けばこの距離をノータイムで移動できる。シルフェではなく俺へと攻撃の対象を移させるため。そのための移動。



「吹き飛べ!」



俺は後ろへ吹き飛び、シルフェをそのまま吹き飛ばしながら闘技場の壁にぶつかる。青竜はそれと同時に霧散し、消え失せる。



「すまんな、シルフェ。」

「いえ、大丈夫ですよ。」



あいつの能力に弱点があるというのなら、方向を変えれるだけで強弱は効かないという点。できても重力の方向を変える程度。レベル7の俺に効く代物じゃない。



「シルフェは回復を頼む。俺が前に出る。」

「ですが……」

「お前じゃあフィーノにダメージを負わせることも難しい。俺の絶剣じゃなきゃ駄目だ。」

「……分かりました。」



渋々という感じで俺の外れた腕を治し、強化魔法をかけてくれる。まあ、遠回しとはいえ戦力外通告を喰らって嬉しいわけがないな。だが、事実でもある。必要なのは戦力を冷静に分析することだ。これは試合ではなく、殺し合いなのだから。



「能力の効果範囲はそんなに広くない感じだな。精々百メートルぐらいか?」



重力を操れるのなら、全員の重力を上向きに向けるだけで宇宙空間に飛び出て死ぬ。つまり有効範囲があるはずだ。



「ああ、妬ましいなあ。そんなに冷静で。俺なんか今もずっと緊張しているんだぜ?ああやっぱり天才ってのは格が違う。」

「……ほう。」

「こんな特別な力を持ってしてさえ、全く歯が立たなかったんだからな。」



『なかった』。つまり。もう勝てると思っているのか。



「努力の天才さんよ。まさかそれは才能に入らないなんてふざけた事を言ってんじゃないんだろうなあ。」



俺は何も言わない。フィーノはひどく泣きそうな表情でこっちを見ている。



「努力も才能さ。人間ってのは頑張れば頑張るほど辞めたくなるもの。やりたくもない事をそこまで続けるのには才能が必要だ。」



何も言わない。ここで口を出したら中途半端な意見になる。相手の言葉を全部聞かなければ反論は成り立たない。



「なあ、お前にできない奴の気持ちが分かるのかい?『冒険王』の孫として、期待されて、それでも叶えられなかった俺の気持ちが。」



『冒険王』の、孫?

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