18.堕落の王
ちょっと話は短いけど、この次の話からこの章の本編みたいな感じだから許して。
救恤はベルゴの首の部分を見た。そして直ぐに恐怖した。その首のつながりの部分は石だったのだ。そして更に体を触って気付く。体全体が石でできていることに。
「馬鹿、な。人間じゃなかった?人形?なら誰がこいつを操って――
『中々、やるじゃねえか。』
救恤の頭の中に声が響く。それは先程まで戦っていたベルゴのもの。
「直接脳内に……!」
『お前は『怠惰』ってものを何にも分かっちゃいない。怠惰が仕事を自分自身の体で戦うわけねえだろ。』
空間が歪み、その中から車椅子に乗った一人の男が現れる。馬の頭ではなく、人間の頭をした。
『それに、馬の頭した人間なんて、いるわけないだろ。』
「き、貴様ァ!」
『お前が俺様だと思っていたのは自動操作してた俺様の人形に過ぎない。動きたくはねえが、本は外に行かねえと買えねえしな。』
怠惰とは、決して動かないだけではない。この世の俗世的な部分に溺れた人間を指す。現代日本で言うなら仕事をせずに日夜ゲームだけをしているのも、怠惰と言えるはずなのだ。
「なら今度こそ貴様を倒してやる!『神化』」
救恤が能力を発動させ、殺そうとするが発動しない。いやそれどころかどんどん力を失っていく。
「なに、を。」
『お前は救恤だろ?だけどもうその活動を一切していない。救恤の力は弱まっているに決まっている。それに対し、何十年も自分の体を動かしていない俺様の怠惰は相当な力がある。』
救恤は地面に倒れ込む。そしてベルゴが乗る車椅子が自動的に動き、救恤の前で止まる。
『いや、もう怠惰之罪と呼ぶべきか。』
伝説技能『怠惰之罪』。自分より格下の全てを堕落させる。文字通りの堕落の王。
『……そろそろ疲れたから帰るわ。後数分後には生きるのも怠惰になってんじゃねえの?』
時間が経てばたつほど効果は増し、立つのが怠惰になり、考えるのが怠惰になり、息をするのが怠惰になり、生きることすらも怠惰にさせる。それが堕落の力。
『それじゃあな。えーと、きゅ、きゅう……なんだっけ?まあいいや。』
悔しくても、喋る事が怠惰になっていた彼女は何も喋る事はできず、そのままそこを墓場とした。




