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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
第5章〜大罪と美徳と未知〜
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15.暴食

エル・フォン・クライは獅子の獣人である。弓はただでさえ引くのに大きな力がいるのに、彼女のは特別性で更に力が要るようになっている。それも獅子の獣人であることが大きな理由の一つなのだ。


獅子の獣人は様々な獣人の中、トップクラスで近接戦闘に優れた種族である。瞬発力、筋力、視力。どれを取っても強い。元となったライオンとは違い、名実共に『百獣の王』と呼ばれているのだ。だからこそエルも相当足は速い。



「速すぎないかなあ!」



元々エルは戦闘があまり好きではない。だが獣人は最低限の自衛手段を持たなくては一人前として認められない。それと種族的な才能が合わさり、同世代の中では結構上の実力になっただけ。武器があまり適さない弓なのもそれが原因。


しかし後ろを追いかけている奴と比べると弱いと言わざるをえないだろう。黒い球体のようなものが地面を抉りながらエルを追いかけてくる。エルがそれを見つけた時はゴーレムをひたすらに襲うだけだった。しかしゴーレムがいなくなった直後、エルを襲い始めたのだ。



「こっちはわざわざ壊さないようにしてるのに、簡単に全部壊しやがって!」



黒い球体はぶつかる物体を全て抉り取る。家であろうが何だろうが削り取る。矢も射っても、飲み込まれて終わりである。



「こうなったら腹を括るしかないね。」



エルは振り返り、手に持つ弓を構える。確かに普通の矢なら効かないだろう。しかし残念ながらエルの矢は普通ではなかった。



「存分に喰らえ!『強力な一矢(パワー・アロー)』」



矢は自動的に生み出され、そしていくつもの魔法を重ね掛けされて放たれる。威力上昇、速度増加、命中補正、貫通特化、耐久上昇その他多数。エルの戦い方はいくつもの魔法を重ね掛けできる弓をその力で放つというものである。魔力はエルに依存するが、魔法発動は自動的に弓が行うようになっている。その黒い球体に矢は入り、そして即座に貫通する。



(どうやら問答無用で消し飛ぶってものじゃないらしいね。耐久力が高かったり、あまりにも速く動くものは捉えられないとかその辺りかな?)



エルは弓を構えながら移動する。そして空かさずに何度も弓を打ち抜く。黒い球体は動きを止め、その場を動かない。



「死んだ、のかな?」



エルも一度射るのをやめ、弓を下ろした瞬間。黒い球体が弾け飛ぶ。



「え!?」



そしてエルがその事態を理解するより先に黒い球体があった場所から男が飛び出てくる。残虐的な笑みを浮かべて。



「ッ!『矢の雨(レイン・アロー)』」



上空へと矢を放ち、男が通れない程の密度で矢の雨を降らせる。しかしそれすらも貫通して進んでくる。いや、食い破ってくる。



「ィヒャヒャニャ!!!!!」



気持ち悪い笑い方をしながら男は体全体で矢を食らってこっちに来る。身体中から口が出てきて、それが矢を喰っているのだ。



「何があったんだよ本当に!何で今日に限って不幸が重なるんだ!」



エルは十四技能の戦いを知らない。故に『何故かよく分からないが、王都が襲撃されて、ヤバイ奴もいる』という風に解釈しているのだ。



(迎え撃つしかない!)



エルは弓を構える。今も迫ってくる男相手に冷静に矢を向ける。



「まだ、まだ……」



男はとんでもないスピードで近付いてくるが、エルは撃たない。ゼロ距離であればあるほど威力が増すという考えだろう。その矢に自分の魔力と闘気を混ぜ込んだ戦源を込める。そしてその距離が殆どゼロになった瞬間。



「……『究極の一矢アルティメット・アロー』」



放たれる。それは男の頭に刺さり、男の体を引きずって後ろに飛んでいく。そして民家にぶつかった瞬間。



「ごめんね。」



大きく爆発した。そこら辺の家は燃えるが、かなりのダメージを与えられたはずだろう。家が次々と燃えていく。避難が完了していることに加え、緊急時とはいえ普通なら壊すのを躊躇するだろう。しかし彼女は仮にも獣王国クライの王女。つまり王族なのだ。これぐらいなら例え賠償金を請求されても払いきれる自信があるのだろう。



「さて、それじゃあ学園に行かないとね。」



アレがまだ生きていることをエルは確信している。それは自分の実力に自信がないわけではなく、相手のさっきまでの凶暴さを見てのこと。無傷、とまではいかないだろうが軽症で済んでいるはずと考えてエルは学園へと向かう。自分より強い生徒が学園は何人もいる。そこまでいけば安全なのは確実だろう。



「え?」



行ければの話だが。エルの右手がない。その手に持っていた弓もだ。自分の手首より先がなくなったのだ。一瞬思考が停止する。



「ぁ、ぇ。」



言葉も出ない。恐怖と痛みが同時にやってくる。



「ヒヒャア?」



そしてエルの視線の先にはエルの手を貪り食う男。



(む、きず?)



全く血を流していない男を見て、エルの心は折れた。

この作品が好きすぎて妥協はできない。だが文才がないからかしっかり伝わっているかも不安になる。


だからなにか気になる点があるなら感想をくれるとありがたい。質問には基本答えたいし、なにか不備があるなら描写を変えたりしたい。

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