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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
第5章〜大罪と美徳と未知〜
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8.交戦

俺は霊槍『アランボルグ』を握りながら男を見据える。男のローブが俺の鑑定を弾き返しているせいで能力も見れない。できればこの女の子を回収してさっさと逃げたいんだが。



「随分と、気安く触れてくれるな。」



完全支配オーダー・ワールド』を切られた感覚がくる。逃してはくれないか?いや、街は近くだ。ならばどうとでもなる。



「おうおう。グレゼリオン王国の法律を知らねえのか?犯罪者には奴隷階級となり、平民より一時的にワンランク下になるんだぜ。そりゃロリコンが悪いとは言わねえけど襲うのは駄目だろ。」



完全支配オーダー・ワールド』で女の子を引き寄せ、抱き抱える。何が起こっているのか分かっていないのか困惑したような顔をしている。



「かの異界から来たとされる七代目勇者は言った。『YESロリータNOタッチ』とな。お前も変態紳士ロリコンって言うならもっと分を弁えて――

「うるさいなあ。これだから不純物は駄目なんだよ。だから俺が、作り変えなくちゃねえ。」



ケッ。時間稼ぎはこれぐらいが限界か。



「もう安心しろよ。大丈夫だからな。」

「え、あ、ぇ?」



ちょっと暇つぶしで王都の中を千里眼で眺めてたら、こんな胸糞悪いものを見せられてよ。助けに行かなきゃ男じゃねえよな。



「てめえ、随分と不思議な力があるな。弾いたわけじゃねえ、切ったな。コントローラーの接続を切るみたいによ。」

「答えるわけにはいかないなあ。」



世界の全てを視界に写し、愚王の黒眼で世界中から魔力を集める。ここに来る時にはもう既に『人知超越せし神眼(アルフォス・アイ)』を使っている。全力だ。手を抜いて負けたらお笑い草にもならない。それでもう二回負けてんだから。



「なら、黙ってぶっ倒されな!」



流石に住民区の近くで大規模破壊魔法は使えない。だからこそ手数がものをいう。男の周りに砂の槍が現れ、男を狙う。が、当たる直前にただの砂に戻ってしまった。やはり何かを切られている。ジンの『絶剣』みたいだが、それともまた違うように感じる。



「消えッ!」



そして、なんの脈絡もなく目の前から男が消える。馬鹿な、俺の眼から逃れた?いや、それは有り得ない。俺の眼から逃れる事は不可能。世界の全てを見ているんだぞ。転移じゃない。シンプルに見えなくなっているのか?



「君に用はないんだよっ!」

「んがっ!」



腹へと掌底打ちが刺さる。俺のレベルは7。能力こそ強いがまだ力が足りない。俺は女の子から手を離し、吹き飛んでしまう。



「ふふふ。こいつさえ殺せば、別に君と戦う必要もないからねえ。」



そうやって男は女の子を殺そうとする。



「て、あれ?」



殺そうとする。そう、殺せてはいない。それどころか俺と女の子はもうそこにいない。



「これは、化かされたかっ!」



そして即座に男は気付く。更に言うなればもう今日は無理だということも。






==========






俺と女の子は学園内にいた。俺は全力で走ったせいか、肩で息をしている。人知超越せし神眼(アルフォス・アイ)は体力の消耗が激しいのだ。



「ほんと、幻術って便利だな。」



相手が自分の目的を達成させる幻覚を見せれば、その成功への高揚感や安堵感からで隙ができる。その間に逃げる。流石に女の子を守りながらアレと戦えるほど俺は強くねえ。



「ここなら大丈夫だ。」



ここ以上に安全な場所などこの王都にはない。なんせ世界最強の魔法使いがこの学園にはいるのだからな。



「で、鍛治王さんは何で襲われてたわけだ?」

「……知ってたのか。」

「知らねえ奴はいねえだろ。今やドワーフの代名詞的存在だぜ?初代と並ぶ唯一の『鍛治王』ってな。」



一時期は新聞を独占してた内容だ。知らねえ奴がいるのならそりゃ世捨て人だろ。



「それ、はよ。」

「おう。」



言おうとしているのは分かるが、何か決心がつかないのかまごまごしている。俺は溜息をつき、女の子。クラウスターの目を覗き込む。



「ああ、そういう。」

「え?」

「すまんが勝手に心の中を覗かせてもらったぞ。お前、十四技能を持ってるのか。それで何故か争わせられていると。」



ふむ。確かジンが言ってたな。まあ警戒するだけでいいってだけだし、あまり気にしてはいなかったが。



「ん、ああ。余計なところは覗いてないから安心しろ。というか覗けない。」

「あ、ああ。ありが、とう。」



いつも心を覗いたとすると人は嫌な顔をするので、ちゃんとこれだけは言わなくちゃならない。表面上の思考は読めるが、それ以上となると読むのが難しい。何より頭も痛くなるしいいことがない。



「そうだなあ。」



最近はダンジョン攻略もかなり余裕がある。というか俺たちの成長スピードが他と比べて段違いなんだ。確かに俺なんかは人よりレベルが上がりやすい体質らしいが。



「よし!クラウスターって呼んでいいよな。」

「あ、ああ。いいけどよ。」

「ならクラウスター!俺がお前を守ってやるよ。この戦いの間な。」



折角の縁だ。何より、人が困っていて見捨てるなんてことをしたら母さんに怒られちまう。



「オレを、守る?」

「ああそうだ。なんか不服かよ。そんな困ってますみたいな面してる奴はほっとけねえだろうが。」

「……何が目的なんだ?」

「おいおい。それは失礼だろう?まさか見返りを求めて人助けをするような奴に見えるってのか。それならちょっと悲しいぜ。」



いや、だがまあ普通おかしいか。今まで話したこともないのに守ってやる、だなんて。まあ俺は普通じゃねえから。



「ち、ちげえよ。そうじゃねえんだ。なんというかよ、オレにそんな風に話してくる奴は、お前が初めてだったから。」

「なら、問題ないってことだな。俺の眼ならいつ如何なる時でもお前を見てやれるからよ。守ってやんよ。」



まあ、弱い女の子は守ってやれって母さん言ってたし。すると顔を急に赤くなった。



「この変態っ!」

「っ!?いや、違う!流石にトイレとか風呂の時は見ねえよ!」



酷い勘違いされてるぅ!

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