17.家族
教会の中。俺と母さんは向き合って話している。既に体にあった呪いは消え、至って健康体であるといえよう。懸念材料としては長年動いて無かったことによる体力の減少だが、それは時間と共に解決するだろう。
「アクト。」
母さんは厳しい目を俺に向けている。
「確かに、私のことを思ってやってくれた事は嬉しい。間違ってるとも言わない。だけど、お願いだから、もっと自分の体を大切にしてちょうだい。私はアクトが健康なのが、最も嬉しいことなの。」
「俺は健康だぜ?現に今無事に、強くなって帰ってきたんだから。」
「それは結果論でしょう!もしかしたら、死んでいたかもしれない。アクトまで失ったら、私は耐えられない。」
これは、仕方ないことだ。もっと安全な方法があったのに、あえて茨の道を歩み、そして俺が一番恐れていた家族を失うことを母親に味あわせかねなかった。しかし、それでも。
「ここでやらなくちゃ、親父に顔向けできねえ。家族も守れない男に、何が守れるっていうんだよ。」
「だけど……」
「母さんの言いたい事は分かる。それは本当に、ごめんなさい。だけど、それでも、やりたかったんだ。反抗期だと思ってくれ。もう俺は子供じゃないんだから。」
母さんは幾度か悩む仕草を見せ、諦めたように息を吐いた。
「結果良ければ全て良し、と言うつもりはないけど、今回はアッくんを許します。だから、これからは自由に生きて。私の体もそろそろ動くようになるし、そしたら仕送りもいらなくなる。自分のために、お金は使いなさい。私のために命を賭けた人がいるんだから、それに恥じない生き方をしなくちゃね。」
「はい。」
「それと、体調には気をつけなさいよ。健康が一番なんだから。」
「ゔん。」
「どうして泣いてるのよ。」
嬉しくて、嬉しくてたまらないんだ。だから、涙が止まらない。
「もうお母さんまで泣けてきちゃったじゃない。」
そうやって数十分、俺たちは泣いた。
家族というのは愛し合うものだ。愛し合えないとしたら、それは家族じゃない。逆に言えば、互いに愛しあえるなら、それはどんな奴だって家族になるのだろう。親を愛せとは言わない。家族を愛せとは言わない。友を愛せとは言わない。愛しき人を愛せとは言わない。
しかし、その人を大切に思う自分があるなら、しっかりと愛しておくといい。いつ自分が死ぬか分からないのに、愛情を少しでも止めてしまえば後悔してしまうのだから。献身とまではいかないが、助けになってやればいい。その人の道を支えてやればいい。
恋とは盲目的で、独善的だ。しかし愛は俯瞰的で、人を慈しむことができる。だからこそ、愛を育むという事は何よりも美しい。恋は経験になる。しかし、最後に求めるのは愛であれ。恋は覚めるものだから。
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「終わったな。」
「ええ。」
俺とシルフェは教会の近くでそうやって言葉を交わす。
「シルフェ。夢想技能って知ってるか?」
「……お父様から少しは。」
「なら、教えてくれよ。」
友が、俺を越えた。アクトは一番下から、一番上へと跳ね上がって来たのだ。ならその覚悟に敬意を評し、俺も越えてやらなくちゃならない。
「友とは切磋琢磨し、共に成長するものだ!頑張ろうぜシルフェ!」
「ジンさん。あなた少年みたいな目をしていますよ。凄く無邪気な目です。」
「そうか?まあ、仕方ないだろ。」
こんな楽しいことがあるか?こんな興奮することがあるか?
「少年は大志を抱く。なら、大志を抱くの奴っていうのはいつまでも少年なのさ。」
「かなり暴論な気がしますが。」
「いいんだよ。俺が納得できてりゃな!」
俺たちの戦いはこれからだッ!
ちょっとアクトの最後のところで私の考えが混ざりました。というわけで、四章は終わり。次は五章です。今まで結構雑にしてたところの補足説明を出しながら物語を展開していく予定です。




