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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
序章〜英雄の第一歩〜
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10.もう一人の師

ダンジョンに着くとみんなはやはり強そうな武器や防具、というかしっかりとした鉄の武器や皮の鎧を身につけている。だがしかし、俺は木刀一つで命のやり取りをせねばならんのだ。少しぐらい誰か手伝ってくれないのだろうか。さっき木刀を持ちながら近付くとそっと距離を置かれた。



「さて、じゃあ行きますか。」



俺は迷宮に向かって歩き始める。あ、説明をしていなかったな。そもそも冒険者というのは魔物から採取される魔石が主な収入源だ。地球でいう電気みたいなもので、水、火、光もなにもかも魔石を使っている。さっきも言ったと思うが、この国はダンジョンの数が異様に多い。国内で万は余裕で超えており、そのため生活資源である魔石を落とす魔物を地上からのみ絶滅させているのだ。


ダンジョンは一層一層が広大なフィールドになっており、無限に魔物が出現する。もちろん二層、三層と降りる度に魔物も強くなりトラップなどもいやらしくなる。その分魔力が溜まることにより大きく、高純度な魔石がたまに落ちているから普通に魔物を倒すよりかは効率が良い。



「よし。」



俺は第一層に降り、周りを見渡す。平原が地平線まで続いており、その広大さがよくわかる。迷宮の入り口は異世界と繋がっているんじゃないかと聞くが、確かにこの広さを見るとそう思う。たくさんの人が魔物と戦っており、魔石を採取している。しかし魔物も無尽蔵な数いるので、減ることはない。もちろん俺が倒す分がなくなることもね。



「スライム、か。」



スライムといえば雑魚中の雑魚だが、その中心にある魔核を壊さなければ永遠に戦い続ける。それを粘液で覆ってるから、木刀で倒すのはほぼ不可能だろう。普通の人ならね。



「よし。」



俺は闘気を木刀に纏わせる。木刀の強度と威力を底上げして、一気に刺す。まあ簡単に死んだ。体は魔力となって消え去り、魔石だけが残った。これを集めれば良いわけだ。しかしスライムの魔石は1ルドにしかならない。今日の飯代と宿代ぐらいは欲しい。安い宿は300ルドぐらいだから300匹ぐらいやればいいわけだが、日没までに終わるだろうか。



「全力全開でいかせてもらいますか。」



俺は闘気を体全体にまとい駆け出す。捕捉次第撃破サーチアンドデストロイ。単純にやらせてもらおうか。見つける、刺す、拾うを延々と繰り返す。日没に近付くにつれ人の数は減っていくが、俺の闘気も結構減る。大体三時間ぐらいが限界だから、それまでに集める必要があるわけだ。ほんと父さんって無慈悲だよな。




==========




終わった。死ぬ。というか塵になる。俺は体に回復魔法をかけながら冒険者ギルドに向かう。流石に疲れてくると勘が鈍り、二、三回モロにスライムの突進を食らった。



「そういやギルドの営業時間聞いてなかったが、開いてる、よな?」



これで開いてなかったら泣くしかない。闘気すっからかんだし、魔力もほとんどないし。そんな中野宿とか、無理ではないが全力で泣き喚く。そうやって考えているせいか、前から来る人影に気付かずぶつかる。



「あ、ごめん。」

「いやいや、私こそ周りへの気配りが足りなかったようだ。て、あれ?子供がこんな時間帯になんでここに?」



ぶつかったのは黒いローブに身を包んだ女性だ。日も結構沈んでるから、子供が一人でいることに驚いているのだろう。しかもここら辺は住宅街はないし、余計違和感があるだろう。



「いや、冒険者ギルドに魔石を持って行こうと。」

「おつかいかなんかかい?それでも子供が一人で出歩くのは感心しないよ。」

「魔石は自分でとったもんだよ。あと家に帰るにも少し遠すぎる。」

「自分でって、ダンジョンに潜ってたのかい?しかもこんな幼い子を一人旅で。全くこんな無茶をさせる親の気が知れないね。」



少し悩むような仕草を見せた後に、俺の手を掴んだ。



「私の家に来な。ここで会ったのも一つの縁。色々と面倒見てあげるよ。」



正直に言って怪しい。しかし俺に何かをするつもりだったらもう既にしているだろう。それと色々と尋ねたいこともある。少し罪悪感もあるが、着いていかせてもらうとしよう。



「それじゃあお言葉に甘えて。」

「よしわかった着いてきな。」



そう言い黒いローブを翻し、歩いていった。それに俺も着いていく。



「ああ、自己紹介がまだだったね。あんたの名前は?」

「ジン・アルカッセル。ただのしがない平民だよ。」

「ジン、ジンか。わかったよ。」



そう言えばまともに自己紹介をしたのはこれが初めてだな。10年、感覚的には5年生きてきてこれが初めてって人として腐ってる。



「それじゃあ私の名前はミラ・ウァルリナ。ただのしがない魔導師さ。」



ミラ・ウォルリナか。俺がこの世界で知っている二つ目の名前になったな。交友関係が狭すぎる。ん?いやちょっと待て。俺はポケットからメモを取り出す。



「あ、ああああああああああ!」

「え!?一体どうしたんだい!?」



そうか、どうりで聞き覚えがあると思った筈だ。俺がここに来た目的。とある魔導師への師事。その魔導師の名前こそが『ミラ・ウォルリナ』。つまりこの人が俺と探していたというわけだ。いや、偶然ってあるもんだな。

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