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平凡な英雄記  作者: 霊鬼
第4章〜晴らせぬ罪〜
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14.運命

細切れになったところから、即座にひっついて再生する。ここまでボロボロになっても再生するのか。長期戦になりそうだ。



「神帝の白眼、真の可能性(トゥルー・ヴィジョン)。『運命選択(セレクト・オーダー)』」



その一言と同時に俺の脳裏にいくつもの未来が走る。これはただ未来を写す予知の魔眼ではなく、これから俺の行動によって辿る可能性がある全ての未来が表示されている。そして、それは最善の未来を生み出すことを容易とする。



「当たんねえよ!」



悪魔が体を変形させありとあらゆる方法で俺の命を奪おうとするが、その全てを先に知り、逆に反撃の一撃を喰らわせる。



「未来を変えることはできても、知ることが出来ねえんじゃあ意味がねえな!」



未来を無理矢理変えられていても、即座に軌道修正ができる。何故なら全ての選択肢を俺は見ることができるから。



「おのれっ!」



悪魔が自分を中心として円形の闇の空間を作り出す。それに合わせて俺も後ろに下がった。



「いくら見えていても、この状態では攻撃もできまい!」



確かにこれだと悪魔に近付けいない。恐らくあの闇に触れただけで相当な傷を負うだろう。しかし、そのための愚王の黒眼だ。



「愚王の黒眼、真の可能性(トゥルー・ヴィジョン)。『完全支配(オーダー・ワールド)』」



その闇は即座に凝縮する。



「な、何だこれはっ!?」

「弾けろ。」



そして爆ぜる。魔力、大気、体、地面。その他の全てを俺の支配下に置く。愚王の黒眼で未来を創り出し、神帝の白眼で未来を選び取る。これこそが俺の本域。俺が持つ本来の力の一端。



「ば、馬鹿なっ!人間如きがッ!」




俺の体がブレて、何人もの俺が現れる。光を操り、俺の幻覚を見せているのだ。



「さあ、どれが本物か分かるか!」



もちろん光に実像はない。それはあくまで、俺と同じ形をした偽物に過ぎない。しかし惑わすんだったらこれで十分だ。



「舐めるなよっ!」



悪魔はその全てを同時に歪ませ、潰した。しかしその中に本物がいるわけがない。



「どこ向いてんだよッ!」



俺は真下から槍の底、つまり石突の部分で悪魔の顎を刺す。俺の体は背景と同化しており、その姿は見えることがない。



「ぐっ!」



悪魔は倒れながら俺を狙っていくつもの武具を飛ばす。俺はそれをいくつか弾きながら悠々と距離を取る。



「やべっ!」



だが、ここまで来ればもちろん相手も余裕なんかなくなる。俺のさっきまでいた場所に豹が飛び込んでくる。



「図にのるなよ。この豹の姿は私の本懐。貴様の魔力を辿るなど容易よっ!」



もう奥の手を切ってきたか!そもそも七十二柱はレベル10が徒党を組んで挑むレベル。むしろ今まで戦えていたことが異常なのだ。



「そして、何となく貴様の弱点も分かったぞ。その未来を読み取る力。避けれない攻撃、圧倒的な力量差には対応できんのだろう!」



その言葉と同時に俺を囲むようにして闇の刃が俺へと放たれる。言葉には出さないが当たっている。俺がどんな手を使っても防げない攻撃をすればこの能力も意味を為さない。



「『完全支配(オーダー・ワールド)』」



その闇の刃を全て、悪魔の方へ返す。しかしそれは当たる直前で霧散し、当たる事はなかった。



「そして、その支配の力。何かは分からんが条件があるだろう!なければ即座に我が体を支配すれば良いだけのことだからなっ!」



それも当たりだ。完全支配オーダー・ワールドは相手の抵抗度合いによって魔力を喰らう。強力なものを支配しようとすればするほど直ぐ魔力が尽きる。七十二柱なんて支配しても5秒ももたない。その5秒に賭けるにしても、あまりにもリスキー過ぎる。



「『太陽の息吹(プロミネンス)』」



俺はアランボルグの力で魔法を発動させる。しかし本来なら即座に発動する魔法を圧縮させ、俺の周りに浮かせておく。



「『地獄の氷河(コキュートス)』っと!危ねえな!」



悪魔の突進を避けながら、再び魔法を発動させ、圧縮し周りに置く。



「『神秘の世界樹(ユグドラシル)』『天空の憤怒(ゼウス)』『大地の誕生(ガイア)』」

「ッ!?どういう事だ!第九階位魔法をそこまで発動させる魔力がどこに!」

「『究極の暴風(ルドラ)』」



どうやらこいつは何でジンがわざわざ洞窟の入り口にいるか、理解してねえらしいな。そこなら、愚王の黒眼の範囲内だ。俺の周りを飛ぶ六つの魔法を合わせ、一つの魔法とする。本来なら血が滲むような努力が必要な『合成魔法』を、支配の力は容易とする。



「そうかっ!あの勇者から魔力をッ!」

「遅えよ。『宇宙の原初(ビッグバン)』」



混沌としたエネルギーが悪魔へと放たれる。大きさとしてはピンポン球程度。まさかあそこまで速く両眼の弱点を知られるとは思っていなかったが、問題ない。この一撃は俺の渾身の一撃。階位魔法を超えた越位魔法の力。ゆっくりと感じるほど呆気なく、悪魔にその球が当たり、弾けた。



世界が、揺れる。





最初は爆発。全てを飲み込むエネルギーが、悪魔の体を滅ぼす。そして更に氷が、木々が、大地が、風が、雷が、悪魔の体を飲み込む。



「あっ。」



膝から崩れ落ちる。いくらジンから魔力を借りていても俺の魔力が尽きるのは当然だったか。流石にあの規模の魔法に洞窟が耐えられるはずもなく、今にも崩れそうになっている。



「流石にこれは手助けに入んねえよなっ!」



そんな俺をジンが拾って洞窟の外へ運び出す。崩れゆく洞窟と、俺が発動した魔法の残骸を見ながら思う。



(ああ、終わったのか。)



どこか現実感がないまま、俺は洞窟から運び出された。

さて、まだ死体は見つかってないっすね

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