12.悪魔対峙
新年が始まりましたね。
新年も心の赴くままに小説を書いていきたいものです。
それと、少しお知らせなのですが一月から三月の間仕事の方が忙しくなります。そのため小説の投稿頻度は2019年よりかは下がると思います。しかし3月ごろには戻りますので、それまで気長に見てくれると幸いです。
10月も終わりに近付き、そろそろ寒さを感じる頃。俺たちはとある洞窟の中にいた。薄暗く、小動物の気配も僅かに感じる。辺りに人気がないことから、かなり王都から離れていることも分かるだろう。アクトは白い槍を持ち、既にその両目は白と黒に染まっている。俺も既に聖剣をその手に持ち、いわゆる臨戦態勢へと移っている。
「最終確認だ。今、ここでお前がやるんだな?」
「おうよ。ここで俺がやらなくちゃあ、俺は永遠に人に顔向けできねえ。」
「お前らしいよ。」
王都から離れているのは周辺への被害が相当なものだと予想されるからだ。
「そういや、ファルクラムは?」
「お前のお母さんに回復魔法かけてるよ。慈悲のスキルを持ってる上に支援属性持ちだ。あいつ以上の適任はいねえ。」
「……そうか。本当に迷惑かけてばっかだな。」
「友人にそういうこと言うもんじゃねえぜ。それに、お前が一番頑張ってんだろうが。お前が何もしようとしてなかったら、俺らも何もしちゃあいねえ。」
人っていうのは他人が頑張る姿に心打たれるものだ。特に仲の良い友人ならな。
『契約者よ。準備が完了したぞ。』
「よし。じゃあ準備はいいか?と言ってももう止められねえけど。」
「ああ。問題ない。」
アクスドラの権能『強制召喚』の効果は一つ。ありとあらゆる悪魔を呼び出すことができる。ただそれだけだ。従わせることなんてできるはずもない。戦闘向きの権能じゃねえが、この状況にはピッタリだ。
『行くぞ。』
「3」
俺とアクトは構える。今にも飛びかからんばかりに。
「2」
アクトから迸る魔力を感じる。以前より強力な魔力だ。
「1」
先ず俺が先にやる。そういう手筈だ。
「0」
魔力が溢れる。あの時、アクスドラを呼んだ時のような強大で抗い難い魔力を感じる。その姿は黒い豹であるが、その体躯はもちろん普通の豹ではない。俺たちの二倍はあるであろう背丈に、強靭な肉体。そして目が三つある事が余計にその存在が悪魔である事を強調していた。
悪魔、オセは俺たちを睨む。そして俺と目が合った瞬間、驚いたような顔をして人の姿になった。180ほどの背丈に、黒い髪の毛。三つの目に紫色に染まった体。そして、俺を指差す。
「貴様ッ!ミシャンドラだな!何故貴様が人間と契約しておるのだ!あまつさえこの私を呼び出すなど!」
そして、こっちへと歩いてくる。
「丁度良い。この肉体ごと貴様を始末してくれよう!」
そしてその腕を振り上げ、俺へと向かって振り下ろそうとした瞬間。オセを真っ二つに切り裂く。即座に再生しくっつくが、それでいい。オセへと聖剣を向ける。
「残念ながら、俺もアクスドラもお前に用はなくてね。やる事だけ済まさせてもらおうか。」
「何を言っている。人間の分際で。」
聖剣を握る手に力を込め、4代目勇者の声が響く。
『随分と久しい悪魔だ。これ以上に僕の能力と相性の良い悪魔も、そうそういないがね。』
「さっさとやるぞ。」
『ああ、分かっている。僕の名を、忘れていないな?』
当たり前だ。
『なら叫べ!知る人も少ない、僕の憎悪に満ち溢れた名を!』
「『粛清之英雄』」
「ッ!?まさか、その名は!」
正義のための戦いである事。これが、バルザードの能力を行使する条件。
「己の罪に溺れろ。『究極の罪状』」
粛清の英雄たるバルザードが行使する力は、相手の罪を裁く力。故に相手の罪が重ければ重いほど、その能力を奪う。
「どうだ?随分と弱くなったんじゃないか?」
「4代目勇者の力かっ!くそっ!忌々しい勇者め!」
弱くなったと言ってもその魔力は俺たちにとっては化物クラス。並大抵のやつなら倒すことも叶わないだろう。
「だか、しかし、貴様を殺すことになんの支障もありはしない。貴様を倒せばこの忌々しい力も消える。」
「ああそうだな。確かにまだ俺はお前に勝てない。だが、戦うのは俺じゃない。」
そこで初めてオセはアクトの存在を認識したのか、少し唖然としたような顔をする。
「クッ、クハハハハハハハハッ!」
そして笑う。その隙に俺はオセから離れ、洞窟の出口の方へと進む。
「そいつが!私を倒すと!そんな雑魚が!」
「ああ。お前は負けるんだよ。」
俺は出口の方で壁にもたれかかる。悪魔を外に出さないために。
「お前は、アクトの強さを知らない。」
しかし俺は知っている。確かにアクトは俺たちに勝ったこともないし、いざという時はツメが甘い。それにお調子者で地雷を踏むこともある。しかし、こと人のためならどこまでもとことんやれる人間だ。どこまでも強くなれる人間だ。俺はアクトの努力を、強さを、その信念を知っている。
「お前の勝機なんざ万が一にもねえよ。」
だから、ここに二人だけで来たんだ。




