7.伝説技能
「……オセ、か。」
ロウ生徒会長はそう呟く。悪魔と戦う上での注意点を聞きに来たのだ。
「一応もう一回聞くけど、本当に私の助けはいらないのかい?」
「ああ。俺一人でやる。」
それにアクトは答える。
「これは、俺が倒さなくちゃならねえ。親父が果たせなかった悪魔殺しを、俺が代わりにやらなくちゃあ顔向けできねえんだよ。それに安全に七十二柱の悪魔を倒せるほどの人物を集めるのに何人必要か分かってんだろ?」
「ああ。私一人なら恐らく厳しいし、レベル10の人間が四人は必要だろう。しかしレベル10の人間はどれも仕事が忙しい。正直言ってたった数人の命を助けるために、そんなに人は動かない。」
まあ、当たり前だ。人には人の生活がある。その生活をわざわざ壊して集まれるほど余裕はない。
「だけど、だからと言って一人で倒せるものではないはずだがね。命をわざわざ散らすつもりか?」
「勝算はある。まあ上手くいくかはわからんが、当たったらアクト一人でも勝つ可能性は十分ある。」
「ジン、お前もか。悪魔を、七十二柱を舐めているんじゃないかい?」
「正直言って上に見積もり過ぎるぐらい上に見てるよ。」
すると生徒会長は諦めたようにため息を吐き、机に頬杖をついた。
「……自己責任だぞ。誰も助けに来ない。」
「承知の上で。」
アクトが即座に答える。アクト自身もこの決断をするのにかなりの覚悟が必要だった。死ぬかもしれない。それでも自分の手で倒す事を選んだのだ。
「決意は固いみたいだね。このまま好きにやればいいと突き放すのは簡単だけど・・・幸いなことに君たちは優秀だ。これから国を担う存在になるかもしれない。少しヒントを与えよう。」
そう言った後、生徒会長の指先に火が集まり一羽の鳥が形成される。その動きは本物と見間違えるほどの精巧さがあり、魔法の練度の高さが目に見えて分かる。
「スキルってなんだか知ってるかい?」
「それぐらい子供でも知ってるに決まってんだろ。神様が定めた人間に超常の力を与えるもの、だろ?」
「まあ、おおむねそれで合っている。だけどもっと正確に言うなら『一定の条件を満たした時に得られる力』というのが学説的には正しい。」
スキル、ねえ。俺にとってスキルというのは武器に近い。自分を守る盾にもなり、相手を倒す剣にもなる。
「そして一般的なスキルは三つ。その物事に対し一定の能力が存在することを証明し、更にそれを後押しする力を微量に与える『基本技能』。」
『剣術』や『火属性魔法』なのがこれに属する。基本技能には特殊能力が存在しない。強いて言うなら筋力が上がったり、魔力の総量が少し増える程度の効果以外はそもそもない。
「次に基本技能の上位互換、又はそれ以上の強力なスキル。それに低位の特殊能力を『上位技能』という。」
これには『剣王』という『剣術』の上位互換や、『賢者』という新規スキル。後は『鑑定の魔眼』とかの弱めの特殊能力が属する。基本、このレベルのスキルを得て一人前とみなす場合が多い。だがこのグレゼリオン学園においてそれは珍しくともなんともないんだが。
「最後に神位技能。上位技能、基本技能を神の位まで高めた場合に手に入る技能。神の力の一部を行使する技能だ。基本的にここら辺を持っていれば上位の活躍ができるだろう。」
『剣神』、『勤勉』、『加速』。俺が持ってたスキルだとこの辺か。どれも戦闘をひっくり返すほど重要なスキルである場合が多い。
「しかし、人類の可能性はそこじゃ終わらない。神位技能を超える。つまり神の位を、人類の限界を超えたものに与えられる『伝説技能』。これは他とわけが違う。」
生徒会長の指先に止まっていた火の鳥は大きく翼を広げ、成長し、大型の鳥へと変貌する。
「これを使いこなさなくちゃまず勝てない。」
「使いこなすもなにも、俺はもう伝説技能を持ってるんだぜ。」
「しかし、その両目はまだ真の力を発揮できていない。伝説技能には二つの段階が存在するんだ。」
生徒会長は二本指を突き出す。
「未覚醒期と覚醒期。未覚醒期というのは未だに能力が開放できていない状態。つまり、真の能力が使えていない証拠なんだよ。その神帝の白眼も愚王の黒眼も、今じゃただの副次効果に過ぎない。その程度なら神位技能と大差ないからね。」
「これが、副次効果?」
「ああ。本来なら二つも伝説技能を持っているお前が、ファルクラムに負けるはずもなかった。それは未だ真の力を解放できていないからだ。」
ということは、俺の英雄剣術もまだ真の力が隠されているのか?
「挑むなら、君はこれを使いこさなくちゃいけない。」
アクトは息を呑み、言葉を発せずにいる。
「その方法を、今から教えよう。」
俺たちは生徒会長の言葉を無言で待った。




