9.旅立ち
10歳になった。成人が15歳だから大人まであと5歳。5歳から記憶が始まったから実質二分の一が過ぎたわけだ。なんか感慨深いものがあるな。まああの後色々と頑張ってきて、父さんにたまに攻撃が当たるようになった。といっても俺は魔法込みだが父さんは魔法を使っていないし、なによりスキルで身体能力を下げてるから上回ったとは言い難い。
魔法は最高で第3階位まで使えるようにはなったが、第3階位までは初歩の初歩。こっから更に磨けあげなければならない。闘気は自分で言うのもなんだがかなり良いとこまで行ったと思う。操作能力も結構上がったしな。ま、結局全体的にまだ足りないしもっと改善していかなくちゃいけない。
「確かグレゼリオンだっけ?」
俺は今とある国に船で向かっている。名をグレゼリオン王国。俺が以前住んでいたオルゼイ帝国とは違う、地球でいう全盛期のアメリカのような国。経済であうろが、武力であろうが全てにおいて名実ともに世界一なのだ。世界で唯一、五大大陸の内の一つの大陸を丸々支配したした国。更に本来魔石の入手のために根絶できない魔物を、ダンジョンが豊富であるために地上の魔物を一掃。故に商人も護衛をつける必要がなく集まりやすい。そして人員が集まり、国力が高まるという完璧なサイクルが完成しているのだ。
父さんはそこで我流で剣を学び、冒険者として大成したらしい。訪ねに行っているのはその友人の一人であり、元パーティメンバー。父さんが剣士であるのに対してその人は魔導師だ。この人に師事してこいって言われたのだが。
「有名人だったらいいんだけど。」
父さんがあんなに強いんだから、その友人も強いはずだし有名人の確率は高い。グレゼリオンにいるという事だけは分かるのだが、それ以上の情報が何もない。まあ取り敢えず向かうのは王都だ。王都は情報が集まりやすい。まあ最悪戸籍から探してもらうしかない。
「と、着いたな。」
俺は船から降りて街を見る。ここは最北の街ヴェルザード。世界で人口が一番多いルスト教の総本山であり、オルゼイ帝国から最寄りの港のために人が集まる。グレゼリオンにおける五大都市の一つだ。まず王都に直ぐに行ける転移装置場に行きたいのだが、少しばかり金がかかる。というわけでお金を稼ぐ必要があるわけだ。短期間で高額の報酬を得るのに一番楽なのは、まあ一択だな。
「冒険者ギルド、か。」
冒険者ギルドは人が行き来する場所に大体ある。それは港も例外ではない。この街は広いが故に、港に一つ、転移装置場に一つ、飛行船の空港に一つ、街の中にあるダンジョンの近くに一つと計4つある。街の面積は国と勘違いするぐらいの広さ。これを領主が纏め上げているのだから、相当なものだ。
「地下道を使うか。」
地下道というのは走って通る専用の地下の道だ。この超人達がたくさんいる世界で、通行人がいる中自動車以上の速度で走れば死人が出るのは必須だ。それに異常に広い街を行き来するなら、それ相応の大掛かりな移動手段が必要だ。だからダンジョンの地下一階層と地上の間に地下道というものがグレゼリオンには存在する。ここには一定の速度が決められており、身体強化の魔道具と合わせることで自動車のような交通網がそれ以上のスピードと効率で存在している。
「下調べしといて良かったな。」
俺は地下道に入る。少し薄暗いが十分見える明るさだ。受付の人の方に歩いて行く。
「地下道を使いたいんですけど。」
「はい。100ルドとなりますがよろしいですか?」
「どうぞ。」
「それでは強化腕輪をどうぞ。出口で返却をお願いします。」
俺は貰った腕輪を腕につける。価格への厳密な解釈は俺にはあまりわからない。適当に自己解釈しておいてくれ。そこまで重要視もしない。迷宮行きの道は……これか。
「よし。それじゃあ行きますか。」
俺はそう言って走り出した。
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さて、冒険者ギルドに到着した。近くに迷宮がある分結構賑やかだ。迷宮の解説は……後でさせてもらおう。
「酒臭えな。」
冒険者ギルドの中に酒場があるからな。誰でも冒険者になれるくせに、そこら辺はしっかりしていない。
「登録ってできるか?」
テーブルが高いのでよじ登り、ぶら下がりながらそう言う。背の高い人は圧迫感が強い。いや俺が小さいだけか。
「えーと。冒険者登録のことでしょうか?」
「はい。」
「はい。ちょ、ちょっと待ってください。」
そう言った後に後ろに下がっていった。流石にこんな子供が登録しにくることなんて滅多にないだろう。そう思っていると違う人が代わって出てくる。
「すいません。受付を変更させて頂きます。えーと、すいませんがおいくつでしょうか?」
「多分10歳だ。」
自分の年齢なんてしっかりと数えてないから知らんが、多分10歳だ。
「ええ、では冒険者になる際にいくつか条件があるのですがよろしいでしょうか?」
「おう。」
「まず戦闘系のスキルを一つ以上持っている必要があります。持っていますか?」
「持ってる。」
「え?あ、ええ。わかりました。」
そんなに持ってるのが意外だろうか。
「それではこの書類に記入をして下さい。代筆も可能ですが、どうしますか?」
「いや、自分で書ける。」
俺は所持スキルと名前と生年月日をパパッと書く。所持スキルの欄は一つ書けば十分と書いているが、一つしか持ってないから書きようがない。
「綺麗な字ですね。それではこちらをどうぞ。」
厚さ5ミリぐらいのカードが渡された。そこには俺の名前だけが書かれている。俺が触ると同時に光を発しレベル1と書かれる。
「それは冒険者カードと言い、所持者のレベルを表示してくれます。身分証明にもなりますので、大切にお持ちください。」
「はい。」
レベルが上がると色々な能力を上昇するらしい。だから早いとこレベルは上げておきたいのだが、技術も高めたい。武術、闘術、魔法。この三要素を極めたいが、早くレベルも上げたい。二つ体が欲しい。
「それでは、御武運をお祈り致します。」
「ありがとう。」
俺はテーブルから降り、直ぐに冒険者ギルドを出た。俺は大きく溜息を吐く。
「金がねえから武器が買えねえんだよな。」
父さんから渡されたお金は銀貨10枚。しかし船で5枚、地下道で1枚使ったから残り4枚。どれだけ安い武器でも大銀貨1枚から、つまり銀貨10枚以上。まあ免許皆伝も貰ってないのに剣を握る気にはあんまりなれない。
「ダンジョン、行くしかないか。」
最終的に俺は木刀を持ってダンジョンに挑むことになったのだった。
色々と設定が出ましたが、覚える必要はありません。特に硬貨の設定は結構あやふやなので、筆者もよく分かりません。
一応現時点で即興で決めたものを……
銅貨1枚→1ルド
大銅貨1枚→10ルド
銀貨1枚→100ルド
大銀貨1枚→1000ルド
金貨1枚→10000ルド
大金貨1枚→100000ルド
余程な事がない限りお金を作中に出さないので、私も明日には忘れているでしょう。




