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シダルセア   作者: rea
11/26

第十話 桔梗10

ヤバい、これ詰んだ‥。

桔梗はとっさに叫んでしまった言葉に後悔する。

玉座の間はしんと静まりかえっている。


兵が意識を取り戻して押さえつける力を強めようとしたその時、

「あははははははは!!」

可愛らしい女性の声で大爆笑が聞こえてきた。


ついに空耳まで聞こえてきたのかと思ったが、皆が皆その笑い声の方を向いていたので、幻聴じゃなかったのだとわかった。


「すごいな!まさかこの状況でそんな事言えるなんて、さすが世界に害を成すもの‥だったかな??素晴らしいじゃないか!」


女性は顔が隠れるローブを被っていて、顔が見えない。

ただ大きな声で拍手をしながらこちらに近づいてくる。


「何者です?」


撫子が首を傾げて問いかける。

撫子の知り合いではないということか‥?


「ふふふ。」


女性は、桔梗に近づいてきて、桔梗を押さえつけていた兵のひとりを蹴り飛ばした。

小柄な肉体の人物が大の大人の兵士を二メートル位蹴り飛ばしたのだ。

玉座にいる皆が絶句した瞬間二人目の兵士を殴り倒した。


桔梗は解放され、その人物に手を引かれ、立ち上がる。

そして次に蘇芳の顔面を殴り飛ばした。


「嘘か真か、考えもせず、信じようともせず、大切な幼なじみに手をかけようとするなんて、大したナイトだな。」


その一連の行動は一瞬の出来事だった。

蘇芳は自分が殴られたのに気づくのが遅れるくらい一瞬だった。


そしてその人物は撫子に近づく。


「撫子先生!!」


蘇芳が叫ぶとその人物は呆れたようにため息をつく。


「まだ撫子先生か、」

「‥何者です?」


目前に近づく人物に臆せず撫子はもう一度問いかける。


「あなたがこんな風に葬ってきた人は沢山いるらしいから、覚えてはいないかもしれませんが」


ローブのフードを外したその先にはとても美しい白髪の少女がいた。


撫子は目を見開いて驚いた。

桔梗は初めてこの人物の人間らしい顔を見た。


「‥月草‥!?」


撫子の呟いた名に広間がざわついた。


「ふふ、光栄だな、憶えていてくれたなんて。」

「生きて‥?!」

「‥死ねないでしょう?‥私は約束を守らなくちゃいけないのだから。」


そういって月草と呼ばれた少女は笑った。


「でも、今はその時じゃない。

今回はあなたからこの子を助けにきたんだ。

だから、今日はこれで。

また会いましょう?撫子先生?」


そう言ったが早いか、月草は桔梗の手を引いて走り出した。


桔梗はなにがなんだかわからなかったが、月草に連れられ無我夢中で走った。


何度か追っ手に捕まりそうになったが、そのたびに月草が兵を倒してくれた。



城から出て、しばらくすると、近くに馬の蹄の音がして、誰かが馬で近づいてくるのがわかった。

敵かと身構えたが、見覚えのあるその姿に思わず涙が溢れてきた。


「忍くん‥!」

二人の前に現れたのは少しボロボロになった忍だった。

よほど慌ててきたのだろう。美少年が台無しなくらいうす汚れている。

忍が馬から下りて桔梗を抱きしめる。


「桔梗、よく頑張ったな‥!早くここから離れよう。

月草も、助かった。ありがとう」


「かまわないよ。ただ私ももう限界のようだ。

すまないが、葵のところまで連れて行ってくれ。

合流する手筈だろう?」


「あぁ。任せろ。行こう。」


忍は馬に桔梗と月草を乗せ、走り出す。


桔梗の長い長い時間が終わった。


桔梗は安堵し、宿についたとたん意識を失うように眠りについた。



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