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短編・エッセイ

盲目の国

作者: 柴咲もも

「今年度の調査では、我が国の視覚障害者が人口の過半数を上回ったということで、国は未成年の……」


 学校から帰ると、リビングのテレビから若い女性ニュースキャスターの真面目くさった声が聞こえてきた。

 僕の国では、数年前から原因不明の視覚障害が流行している。主に未成年が感染する症状らしいけど、発症した患者が揃って口を閉ざすものだから、未だ原因が判明しないという深刻な状況だったりする。

 僕のクラスでも田村ってやつが一番に感染して、ちょこちょこ患者が増えてたりするんだけど。


 だからなんだ。


 僕は特に気にするでもなく自室へと向かい、部屋に入るとドアに鍵をかけて、この日のために用意したヘッドフォンを装着した。

 どきどきしながらパソコンの電源を入れる。ほどなくして涼しげな起動音がポロロンと耳に響いた。

 ブラウザを開いて友達に聞いたアダルトサイトのURLを打ち込むと、淡いピンクの画面の中央に警告文が表示された。


「あなたは18歳以上ですか?」


 そのくだらない文面を見て、思わず笑いが漏れた。

 目の前にエロ動画(お宝)が転がっているというのに、こんな質問に馬鹿正直に答えるヤツがどこにいる。

 ふん、と鼻を鳴らし、僕は警告文の下の「Yes」のボタンをクリックした。






「やはりあのプログラムの実装は早すぎたんじゃないですか?」


 白衣の若い男性が、コーヒーを啜りながらぼやく。


「物理的な規制にはしるよりも、子供の性教育を徹底するほうが余程効率的だと思うんですけどねぇ」


 言いながら、男性は手元のタブレットの画面を指先で軽くタップした。タブを切り替えてソースコードを表示する。数年前、政府の指示のもと秘密裏に実用化された物理的制裁プログラムだ。


「だってほら、アダルトサイトの警告文を無視したら目が見えなくなった、なんて思春期のナイーブな少年少女が正直に言えるわけないですよ。このままだと確実に……いや、もう手遅れかなぁ」


 わざとらしくそう呟いて、男性は指先に挟んだたばこの煙を燻らせる。同席する女性研究員の冷たい視線に気がつくと、彼は戯けて言った。


「え、なんですか? やめてくださいよ! 物理的制裁なんて流行らないって、今話してたところでしょう?」




ノクターンノベルズ掲載の某小説の話をしていて「18歳未満だと読めないんだけどね」って言ったら「そんな警告文を守るやつが本当にいると思うんですか?」って鼻で笑われて。


そこから生まれた「警告文を無視すると物理的に目が潰される」お話でした。


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