無題
夜。開発で見放された建物の群れ。
空は雲で覆われ、星明かりすら届かない。街灯など人工的な光も存在しない。
闇――。
その中で、一人の少女の荒い呼吸音が響く。
「はぁ……はぁ……」
弾切れらしく、黒光りする銃が少女の手の中で力なく横たわっている。
「中々いい動きだったぞ。小娘」
「チッ……」
闇の中から男の声が発せられる。闇に溶け込むような黒いボディスーツに身を包んだ男は、1m弱ほどの銃を2丁所持していた。どうやら、少女と戦っていたらしい。
「うるさい……。さっさと殺しなさい……!」
「フッ…そう早まるな。今死ぬには惜しい。その歳でここまで出来るとはな……」
「……なにが言いたいの?」
少女は男を精一杯睨みつける。
「また戦いたい」
「はぁ?」
「お前はまだまだ強くなる…」
「強くなったアタシと戦いたいってこと?」
「そうだ」
「馬鹿じゃないの? アナタ……」
「暇つぶしだ。気に入らないなら、言い直そう」
「…」
「今のお前に、殺す価値はない」
「!?」
男の言葉に少女は目を見開く。
「少しはやる気になったか?」
「……ええ。アナタはアタシが、絶対殺してやるわ……!」
少女の言葉に、男は口元を歪めて笑った。
(これが、あの男との出会い……。アタシを初めて負かした男……)
過去に思いを馳せていた園神舞は、ギュッと拳を握りしめた。
(アイツはアタシが必ず殺す……!)