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【短編集】気ままに新たな自分を探して

霧と消えてしまわぬうちに

作者: 春風 優華

「霧と消えてしまわぬうちに」


 私にとって、雨は憧れの象徴だった。


 けれど、闇の中私に降りつける激しく冷たいもこれ、またまごうことなき‘雨’である。



 雨は、人の心をうつす。



 だから雨は、見る人によって、どんな色にも、なってみせるんだ。


 喜んでいる人が見れば、雨はどんな時だって華やかな桃色。悲しんでいる人が見れば、さらに心を沈ませる青色。

 心に何もない私が見れば、いつだってそれは無色透明。透き通っていて、そこに存在があるかすら分からない。背景を映すだけの、ただの雫。

 私は空っぽな、仮の入れ物。

 すぐに消えてしまうんだ。私という、存在は。



 不意に、私を包む雨が止んだ。

 斜め後ろに感じた影に振り向くと、そこには笑顔の女性。

「どうしたの。傘、忘れちゃったの?」

 親切に声をかけてくれた女性に見覚えはなく、虚ろな瞳で首をかしげると、女性は苦笑した。

「とにかく、そんな格好してたら風邪ひくよ。良かったら、家がこの近くなんだけど、寄ってかない? 私は美月彩(みつきさえ)、大学が一緒でね、一方的にだけどあなたを知ってるの。ほっとけなかったから声かけちゃった。一駅向こうの、国立大に通ってるよね」

 美月彩と名乗った女性は私に傘を押し付けると、財布から学生証を取り出した。確かに私と同じ大学だ。それに、彼女は四年生らしい。なぜ私のことを知っているのかは謎だが、怪しい人ではなさそうだ。

「私一人暮らしだから、家族に気とか使わなくていいし、何なら帰りは車であなたの家まで送って行くから、とりあえず来て。こんな夜遅くに女の子一人置いてけないでしょ」

 美月さんは傘を受け取ると、私が返事をするよりも先に、背中を押して歩き出した。美月さんの家、というかアパートは本当にすぐそこで、私は半ば無理やり美月さんの家に連れて行かれる。



「はい、コーヒー。熱いから気をつけて飲んでね。砂糖とか牛乳欲しかったら教えて」

 美月さんは私を部屋の中央に設置された可愛らしい座卓の近くに座らせると、マグカップを差し出した。

「あの……」

 それを受け取りはしたものの、カップに口をつけることをためらっていると、美月さんは気まづそうな顔をする。

「コーヒー苦手だった?」

「あ、いえ……平気です」

「そ、良かった」

 すぐに明るい表情に戻り、手際よく洗濯物を片付け始めた。

「服、乾くかなぁ」

 美月さんの洗濯物がなくなり、代わりに私が先ほどまで着ていた安物のスカートとブラウスだけが干されている状態になる。美月さんは服のしわを丁寧に伸ばしながら、首をひねった。

「あの、乾いてなくても、大丈夫ですから」

「駄目よ、ただでさえ体冷えてるんだから。あ、今着てる服で良ければあなたが嫌じゃなきゃそのまま帰ってもいいよ」

 私は自分が着ているものを見るため、視線を下に移した。そう、これは美月さんの私服である。確実に私のものより質の良いお洒落な服。嫌というより、一時的とはいえ貸してもらっていること自体、申し訳なさでいっぱいだ。

 しかし、部屋に入った途端服を渡され、着ていたものを脱ぐよう急かされたのだから、私に拒否権なんてなかったのだから仕方あるまい。

「泊まってっても私は構わないけれどね」

 振り向いて微笑む美月さんの澄んだ瞳を見ていられず、私は視線を上げかけたものの、再び目を伏せた。感じ悪いことをしているのは分かっている。しかし、今の私は光の中で平然としていられるような精神ではない。そう、雨の中の方が、よっぽどまし。

 だって雨は、私の存在を背景の中に溶かし込み消してくれるから。

「今、雨に濡れてた方が良かったって、思ってる?」

 突然近くで聞こえた声にはっと顔を上げると、いつのまに移動していたのか、正面には美月さんの笑顔が。

「私も雨は嫌いじゃないよ。後輩にも、雨が大好きな子がいるくらいだしね。けど雨が好きなのと雨に濡れたままでいていいのとはちょっと違うな」

「……ごめんなさい」

「やだな、別に謝って欲しかったわけじゃないの。けど、あなたは少し自分の体を大事にしないきらいがあるから心配で」

 なぜ美月さんは、私のことをこんなにも知っているのだろうか。表情を読み取る力でも持っているのかもしれない。

「何か、辛いことがあったんでしょう」

 それは、先程までとは違う、胸の内の痛いところにすっと入ってくる声。私は、唇を噛み締めた。

「聞き出そうなんて考えてないから、安心して。そういえば、あなたのことを知ってる、なんて言いながら、実は見かけたことがある程度なの。良かったら名前とか学年とか、教えてくれる?」

 一瞬で変化する声音に、私の思考は混乱寸前だった。しかし、言葉は思ったよりも楽に発せた。

「霧野……美影。一年です」

「そっか、じゃあまだ大学入って半年も経ってないんだ。私ね、一度美影ちゃんと学部内ですれ違って、その時のことがすごく印象的でね、だから覚えてたんだ」

「あ….…もしかして、階段で男の人にぶつかられて、足を踏み外しそうになった時助けてくださった」

 美月さんは正解とばかりに指で丸を作ってみせる。

「私がぶつかった男子を注意しようとして、美影ちゃん止めたよね。いいんです、別にって言って」

「はい、私も前方不注意でしたから。それに、揉め事は苦手で」

「そっか」

 どこか悲しげな表情で見つめられ、本当はそれだけではないという私の心を見透かされている気分になる。お願いだから、それ以上踏み込まないで。

「ごめんね、嫌な気持ちにさせて。でも、くだらないお節介な先輩の戯言として聞いて欲しい。美影ちゃん、自分のことちゃんと大事にしてる?」

 心臓が大きく跳ねるのを感じた。落ち着かせようと呼吸が大きくなる。そんな私の様子に気づいてか無意識にか、美月さんはゆったりとした動作で自分のカップに口をつけている。

「自分なんてどうでもいい。そう思ってない?」

 更に追い討ちをかけられ、私は思わず座卓を蹴り上げて立ち上がった。肩で呼吸をしているのが分かる。揺れた拍子にマグカップから溢れたコーヒーが、座卓にじんわりと広がっていく。

 美月さんは、一瞬驚いて目を丸くするも、何も言わず台拭きを取りに行ってしまった。

 私、何してるんだろ。こんなほとんど赤の他人のような先輩の家に上がり込んで服借りてコーヒー飲んで。果てには痛いところを突かれたからって取り乱して迷惑かけて。

 やはり私はここに来るべきではなかった。雨に濡れながらさっさと自分の家に帰るべきだったんだ。

「落ち着いた?」

 台拭きを手に戻ってきた美月さんは、やはり笑顔だった。けれどこの笑顔の下にどんな感情が隠れているのかと思うと、ぞっとする。

 手際よく溢れたコーヒーを拭い、立ったままの状態でいる私に再び座るよう促すも、私はここですみませんなんて笑って言いながら腰を落ち着ける精神力なんて持っておらず、左右を見渡して玄関を見つけると、気づいたらそちらに向かって駆け出していた。

 早くここから離れたい、その一心で。

「あ、待って美影ちゃん!」

「ごめんなさい、服は必ずクリーニングして返しますから」

 靴を履き、扉を開け階段まで更に走る。美月さんが追ってくる気配はしなかった。この勢いのまま駆け下りようと、踊り場に足がかかるあたりで手摺に掴まって身を反転させる。するとそこには階段を上ってくる人がおり、慌てて体を避けると、その誰かに腕を掴まれた。

「ごめんね、驚かせちゃって」

 そう言って苦く笑う男性。しかし腕を離す気はなさそうだ。さっきから私の人生に今まで体験したことのない出来事ばかり起きるので、脳は爆発寸前である。

(りゅう)君ナイス!」

 声が上から降ってきて、見るといつの間にか美月さんも階段上からこちらを覗いていた。

「ナイスじゃないよ、ちゃんと説明してくれ。この子、混乱してるじゃないか」

 ため息まじりに答えたのは、私の腕を掴んでいる男性。美月さんの知り合いらしい。彼氏、だろうか。

「だって、そろそろ来る頃かなと思ったからついでに捕獲してもらおうかと」

「彩、まさかこの子脅してるんじゃないだろうな」

「ち、違うよ。違う、よね。美影ちゃん」

 そんなの私に振られても困る。もう何が何だかは分からなくなって、足の先から力が抜けていくのを感じた。

「わ、ちょっと」

 慌てて階段を降りてきた美月さんが私の体を支えてくれた。腕を握っていた手は、既に離されている。

「大丈夫か?」

 男性が不安そうに問いかけてくるが、私はなんと返して良いのかもわからず俯くことしかできない。

「ね、ほっとけないでしょ。だから部屋に呼んだんだけど、逃げられちゃった」

「それは彩が怖いからだろ。お前の笑顔は見る人によっては裏がありそうなんだよ」

 毒を含まないその言葉に、美月さんはおどけて答えた。

「うわ、それ彼女に言うセリフ? ま、いいや。とりあえず、部屋戻ろう。家に帰りたいならちゃんと送ってくから。隆君の車で」

「おい」

「いやだって、そのために呼んだんだし」

 二人の間には、長く連れ添ってきた者だからこそ醸し出せる独特の空気が流れていた。冗談めかした強い言葉に、何事もなかったかのように返事する。それは、互いを信頼しているからこそなせる技。二人のやり取りを聞いていると、何故だから不思議と笑みがこぼれた。

 きっとこれが、正しい付き合い方なんだ。どちらかが異常に気を使ったりしない、自然な恋愛の形なんだ。

「私、美月さんが羨ましいです。幸せな恋をしてきたんだなって」

「えー、よく言われるけどそんなことないよ。私これでも一度酷い目にあってるから。ま、この歳になってみれば些細なことだけどさ、当時ねまだ純粋だった私には結構きつかったんだよ」

 それはあまりに予想外な言葉だった。しかし、何があったのかは分からないけれど、あっさりと語られたそれが美月さんにとって心の傷になっていたのだということが伝わってくる。この人に感じた底知れなさは、もしかしたらその経験から生まれているのかもしれない。

 こんなにも幸せそうなのに、こんなにもさらりと言ってしまえるのに、その傷が深かったことを思わせる。なぜか、些細なことだったのではと怪しむ隙を感じさせない。

「美影ちゃん、部屋戻ろうか」

「はい。お邪魔します」

 素直にそう言えるほど、心は落ち着いていた。きっと美月さんは、私が抱えている者を感じとっており、その上で私に声をかけたのだ。

 ならば、今更怯える必要も隠す必要もないだろう。何か試練を乗り越えた美月さんが、私を気にかけてくれている。

 ならば……たまには甘えてしまっても、いいだろう?



 三人で座卓を囲み、改めて淹れたコーヒーに口をつける。静かな時が流れ、少し緊張していた空気もコーヒーから立ち上る湯気によりゆるりと解ける。

「美影ちゃん、ご家族に連絡とかしなくても」

「平気です。私も一人暮らしなので」

「そう、じゃあよかったら夕飯食べてって。昨日作ったシチューが残ってるの。隆君も食べてくでしょう」

 返事も聞かぬまま美月さんは台所へ向かい、冷蔵庫から鍋を取り出して火にかけた。

「彩の後輩?」

「あ、はい。学部が同じみたいで、でもちゃんと話したのは今日が初めてです」

 隆さんはそれを聞くと、苦笑して頷いた。

「そんなとこだろうと思ったよ。ごめんね、彩が振り回してるみたいで。けど、誰にでもってわけじゃないから許してあげて。こんなに彩が気にかけるってことはやっぱり、それなりに君の事が心配なんだと思う。あれで彩も難しかった時期があってさ、さっき言ってた話も、彩は相当傷ついて、やっと冗談みたいに言えるようになったとこなんだ」

「分かります」

 話を合わせるためではない、本心からの言葉だった。それを理解してくれてか、隆さんは頬を緩めた。いつでも明るく笑っているような人だと勝手に思い込んでいたが、実は静かに微笑んで見守るような人なのだと気づく。

 その笑みで、美月さんを支えてきたのだろうか。美月さんには辛い時、傍にいてくれる人がいたのか。

 それはやっぱり、羨ましい。

「えっと、美影ちゃんだったよね。彩のこと嫌いじゃなければ、ちょっとだけでいいからあいつに付き合ってくれないかな。まぁ確かにあいつの事よく知らないと怖い面とかあると思うけどさ、悪気があってってそうしてるわけではないから。それで美影ちゃんも楽になれれば、なおいいんだけどね」

「あの、すみません、私なんか美月さんのこと避けてるみたいになってしまって。そういうわけではないんです。ただ、自分の弱いところを今まで人に見せたことなかったから、その、驚いたというか」

「いいよ隠さなくても。正直怖かっただろう」

 あっけらかんと言ってカップに残ったコーヒーを煽る。私は図星であるとともに申し訳無さで下を向くしかなかった。

「あいつ時々鋭いんだよ。俺は慣れてるし、あいつの周りにいる人もみんなその鋭さに何かしら影響受けた……というか、彩が周りに影響されて鋭くなったって言う方が正しいのかな。彩の親友に策士がいて、何かしら縁がある後輩には純粋少女がいて、そんなだから普段は振り回されることが多いんだけど、それで彩が変われたっていうのもあるし、彩自身もそれをよく分かってるから、美影ちゃんを構いたくて仕方ないんだよ」

 美月さんを支えた人たち、今度は私を美月さんが支えてくれる?

 そんな馬鹿な。だって、美月さんは今日まで言葉すらまともに交わしたことなかったのに。けど、もしそうなら、私も変われる?

 私は……変わりたがってる?

「人の出会いとか関わり合いって、複雑そうで案外単純だし、偶然の集まりでしかないんだよ。深く考えないで、思ったようにしてみて。彩は途中で投げ出すような奴ではないってことだけは、知っといてくれればいいから」

 思ったように、私がしたいように、自由に、私の意思で動く。自分のために?どうでもいいって思ってる、自分自身のために?

 私は、我儘になっていいの?

 膝から視線を少しだけあげたところに、いきなり並々と注がれたシチューが置かれた。

「はい、温めただけ完成! 二人がうち溶けたみたいでよかったよ。で、何の話してたの」

「彩はこう見えて悪い人ではないから許してやってほしいって話」

「え、私そんな風に思われてたの」

 私のすぐ後ろで美月さんが言葉を発す。隆さんはいたずらな笑みを浮かべていた。さっきまでの話はどうやら美月さんには内緒のようだ。試しに小さく頷いてみると、隆さんも美月さんと言葉を交わしながら一瞬こちらに視線を投げ頷いた。

「隆君に先越された気分。なんか悔しい、私も美影ちゃんと仲良くなりたい」

「あの、私も美月さんともっとお話ししたいです」

 思い切ってそう言ってみると、美月さんは私の顔を覗き込み、しばらく無言でいた。迷惑だったかなと弁解の言葉を続けようとしたところで、美月さんは良かったと呟きながら、微笑んだ。それは雲間に光が差し込んだ時のように柔らかくて温かくて、けれど太陽のように目をそらしてしまう程眩しくはなくて。

 昼間の月だ。

 と、そう感じた。

「じゃ、せっかく彩が温めてくれたんだし、冷める前に食べようぜ」

「あ、洗い物は隆君担当だから」

「知ってましたとも、分かってましたとも」

 何かを言い聞かせるように神妙な顔をする隆さんを見て、はっとする。私は何もしていない、むしろ迷惑しかかけていないじゃないか。

「あの、私やります。お邪魔してるの、私の ですから」

「何言ってるの。美影ちゃんはお客様なんだから、気にしないで。それに美影と私は隆君が片付けといてくれる間に買い物行くんだから」

 一瞬なんの話か分からず、私は聞こえた言葉をそのまま返してしまう。

「買い物、ですか?」

「そう、泊まってくなら色々必要でしょう。それにさっき見たら牛乳なくなりそうだったから買い足したくて。付き合ってくれる?」

 “彩に付き合ってくれないか”。先程の隆さんの言葉が思い浮かぶと同時に、私は返事をしていた。

「もちろんです」

 そこで改めて美月さんの言葉を脳内で復唱し、疑問が生まれる。

「ありがとう。というわけで、隆君車借りるから」

「はいはい、どうぞご自由に」

 隆さんはもう興味がないのか諦めているのかすでにシチューを食べ始めており、もはやどうでもいいと言わんばかりに適当な返事をした。私は慌てて、ひっかったことを問う。

「えっと、私が泊まっていくのは迷惑じゃないですか」

 彩さんの表情を伺いつつそっと隆さんの方に視線を投げると、先に察した隆さんが答えた。そっけない振りしつつも、しっかり話は聞いてるんだな。

「あぁ、俺のことなら気にしなくていいよ。明日朝早いから元々今日は帰る予定だったし」

「そういうことだから、気を使わなくても大丈夫よ。私たちもう若い恋人みたいに常にひっついてるような時期は終わったから」

「それ語弊ある。ベタベタしないだけで恋人関係が冷めきったわけじゃないからね」

 若い恋人、その言葉が胸に引っかかる。一緒にいるだけで十分だなんて、そんな幸せを掴める人が世の中に何人いるのか。

 私なんて、その逆なのに。

「美影ちゃん、どうかした?何か気に障ったかな」

 いつの間にかまた暗い顔をしていたのだろう。美月さんは私の方にそっと手を置いて不安げに私の瞳を覗き込む。

「いえ、あの、お二人みたいになれたら素敵だろうなって、思って」

「勘違いしないよう言っておくけど、全く恋人らしいことしないわけじゃないよ。人前で必要以上にくっついたりしないだけで。まぁ大人になったって言えばそれまでだけどね。手とか普通に繋いじゃうし」

 街中で手を繋いで肩を寄せ、仲良く並んで歩き姿が容易に思い浮かぶ。時折互いの顔を見合わせ微笑み、少し照れながら歩を進める。そんな普通の恋人関係ですら、私は羨ましい。

 外で手なんて、繋げないから。その手は別の誰かの手を握っているから。

「とりあえず食べよっか」

「はい、いただきます」

 私が今にも泣いてしまいそうだったことに気づいたのだろうか、美月さんは話を逸らし、シチューとともに持ってきたコップを三人分机に並べそう言った。綺麗なガラスに注がれるお茶と共に沈んでしまいそうな気持ちを振り払うため、スプーンを手に取り、目の前のシチューを口に運んだ。



「じゃあ行ってくるね。鍵と洗い物よろしく」

「はい、行ってらっしゃい。気をつけて」

「うん」

 玄関先で隆さんに見送られ、私と美月さんは買い物に出かけた。私が先に玄関を出て振り返ろうとした時、視線の端に隆さんが美月さんを引き寄せているのが見え、私は慌てて外を向き直す。美月さんはなにやら異議申し立てをしていたが、隆さんはごめん癖としか言わず、悪いことをしたという気は一切ないようだ。

 だけど美月さんの声も、少し嬉しそう。いわゆる照れ隠しと言うものだろうか。

 雨は止むところを知らず、まだ激しく降り続けていた。しかしどことなく今は、明るい気がする。きっと美月さんの色を映しているからだ。

「ごめんね、待たせちゃって」

「いえ、美月さん照れてて可愛かったです」

思ったことを素直に言ってみると、美月さんは少し照れたように私から視線を外した。

「うっ……そんなこと言うのは美影ちゃんとあの子だけよ。というか、あまりこういう姿は人に見せないんだけどな。あぁでも確かに、二人はちょっと似てるかも」

「美月さんのご友人ですか?」

 もしかして、さっき隆さんが言ってた策士の親友?けど、話を聞く限り私となんて似ても似つかない印象だけどな。

「うぅん、友達じゃなくて後輩。ほら、来てすぐの時、雨が好きな後輩の話したでしょう。その子も同じようなこと言ってたなって」

 雨が好きな後輩、か。私からしたら先輩かな。雨は好きというより憧れだけど、雨を好きと言ってくれる人がいるのは、なんだか嬉しいな。

「今度会ってみる? その子も同じ大学なの。学部は違うんだけど、お昼とかたまに一緒に食べるんだ」

「でも私、初対面の人とあまり話せないです」

「大丈夫、無理に会話させようなんて思ってないから。それにあの子も、あまり話すタイプではないからね。どちらかと言うと周りがうるさい」

 なるほど、それをまとめるのが美月さんと言うわけだ。なんだか、楽しそうだな。

「興味あったら一度でいいからおいで。年上ばっかで最初は居ずらいだろうけど、すぐ馴染めるよ。現に私とも、話せてるしね」

「あ……」

 言われて初めて気がついた。私って、年上の人とこんな自然に話せたんだ。

 これも美月さん、そして隆さんの人間性なのだろうか。

「みんないい人だから。むしろ美影ちゃんをいじめる人がいたら私たちが懲らしめてあげる」

 冗談か本気か分からない言葉、だけどすっと心が軽くなる。

 そのまま美月さんは友達のこと、大学のこと、お勧めの授業なんかを話しながら車に乗り込み、慣れた手つきでシートとミラーを調節し車を走らせた。

「嫌なことがあると、隆君がドライブに連れ出してくれるんだ」

 美月さんはぽつりと呟いた。恐らく、二人で出かけた時の記憶を蘇らせながら。

「隆君も私も車好きなんだけど、私は実家暮らしじゃないから車買ってもらえなくてさ。乗るのはもっぱら隆君の車。買う時、わざわざどんな車がいいか私に聞いてきたんだよ。だからね、ファミリーカーがいいって言ったら、ずるいって返された」

「じゃあこの車、隆さんのなんですね。ご家族の車だと思ってました」

 私は助手席から広い後部座席を覗く。最大で七人は乗れそうだ。

「お陰様で、遠出する時とかは大活躍よ。私たち、親友、その彼氏に可愛い後輩カップル。六人乗るとうるさいのなんの」

「後輩って、さっきの」

「そう、雨が好きな子。残念なのはその子の彼だけ違う大学ってことね。実は、その彼から彼女を宜しくお願いしますって任されてるの。そんなに心配しなくてもしっかりした子だけど、何せ可愛いから不安になるのも分からなくないわ。正真正銘美男美女カップルて、中学の頃から有名だったわ」

 美男美女カップルか、私の学校にも一つ上でそう言われてる人たちがいたな。私が憧れている雨がまさにそうなんだけど。神秘的で透き通るように綺麗で美しい人だったな。

 けど、美月さんと隆さんも十分美男美女だと思う。気づいてないとかむしろ罪だよ。

「美影ちゃんもいつかみんなと一緒に出かけてみる?」

「楽しそうで素敵です。けど、幸せいっぱいの恋人の輪に、入るのはちょっと辛い…かな」

 言ってしまってから、気がついた。自分は一体何を言っているのか。

 何を僻んでいるのか。

 しかも親切なこの先輩の前で。本来僻むなら、もっと別の場所だろう。

「すみません、何でもないです!」

 慌てて弁明し、遠く窓の外を見る。逃げ出すことはできないけど、美月さんの顔を見ることはできない。

「はい、使って」

「え……」

 左手で差し出されたものを見て、首をかしげる。とりあえず受け取り、再び窓を見て理由が分かった。

 窓に淡く映る自分の頬に、静かに伝う雫。それは窓に降りかかる雨筋とは違う軌跡を描いていた。

 頬に触れ、その存在を知覚し、私の堰がついに崩れた。

 そのまましばらく、一言も発さず静かに泣いた。美月さんは必要以上の気を使わずに、私が落ち着くまでずっと車を走らせてくれていた。きっと、行こうとしていたスーパーはとっくに通り越している。

 涙を拭い、大きく深呼吸をしたところで、美月さんが正面を向いたまま一言呟く。

「話したかったら、話してね」

 未だ降りやまぬ窓の外から視線を外し、美月さんの整った横顔を見つめる。

 私がこの人を汚してしまわないか不安になるが、きっとこの女性は、私が思っているよりもずっと現実を理解しているし、私のことも受け止めてくれるだろう。そんな存在の大きさを感じる。

 なぜだかわからないが、この人なら、道を誤った私に手を差し伸べてくれる気がするんだ。雨の中、傘を差しかけてくれたように。

「私には、好きな人がいます」

 美月は視線はゆらさずにゆっくりと頷く。それを確認して、私も前を向いた。ワイパーが機械音を鳴らしながら、幾筋も連なる雨の軌跡を取り払った。視界が開け、夜の街並みが伺える。電灯の悲しげな光が、近づいたかと思えうと、すぐに後方へ消えていった。

 エンジン、雨、ワイパー、そして二つの呼吸音。妙によく感じ取れる。

 私は、胸一杯に空気を吸い込み、言葉を続けた。

「けれど私の好きな人は、私を好きではありません。他の女性が、大切なんです。なのに彼は、私を抱いて言います。また来てくれるよなって。その後すぐ、本命の女性を抱く予定なのに」

 段々と語気が荒くなるのを感じ、一度言葉を切った。言いたいことは決まってる。だからどうにか落ち着いて、言葉を紡ぐんだ。

「私は、穢れていますか?」

「どうかな。美影ちゃんはその彼に彼女がいることを知った上で、彼の元へ行ってるんでしょう。抱ける友達くらいにしか思われていないのに。それでも美影ちゃんは、抱かれるために彼の元へ行く。そこに好き以上の理由があるのか、愛が少しでも欲しいからなのか私には分からないけど、でも美影ちゃんは今までずっとそれを選んできた。幸せだった?」

「そんなわけ、ないじゃないですか」

 当然のとこを聞かれた気分だ。何を今更、そんなことを。あまりにも期待した返答とはかけ離れおり、私はため息まじりに吐き捨てる。

 しかしそうではなかったのだとすぐに思い知らされた。

「だったら、このままじゃいけないよね。穢すも何も、美影ちゃんはあえて自分を貶めようとしているだけだけよ。そこで私がどんなにあなたは素敵だって言っても、結局のところ何も変わらない。あなた自身が変わらないと」

 私が、自分を?でも、こんな状況でどうやって自分を愛せと。やっていることは、こんなにも汚いのに。

 けれどこの関係をすぐに止めることはできない。だって、それができていたのなら、私は最初から彼に抱かれていなかったから。

「彼は私が行くと喜ぶんです。彼の彼女はお嬢様で純粋らしくて、だから真っ当なお付き合いしかできなくて。いろいろ遊んで試せるのは、私しかいないんです。私を抱いている時の彼は、本当に楽しそうで」

 彼が喜ぶなら、私は抱かれてもいい。好きな人の笑顔を、一瞬でも独り占めできるのなら。

「じゃあ美影ちゃんは、彼のために抱かれに行くんだ。自分を犠牲にしてまで」

「犠牲にしてなんて、そんなことは」

「じゃあなんでそんな辛そうなの。嫌じゃなかったら、今のままでもいいじゃない」

 言われて思わず、確かにと思ってしまった。でも、そうじゃないだろうと慌てて自分を制す。

「それは倫理的に問題だから」

「本当にそれだけ? あなたが辛いのは、道徳に反したことをしているから?」

 辛い。そうだ、私は苦しんでいたはずじゃないか。なのにさっき、彼の笑顔が見られるならそれでいいって思った?独り占めできるなら、むしろ幸せとすら……そこには倫理観も何も存在していないじゃないか。

 じゃあ私は今、自分に言い訳をしたの? 私は、誤魔化している?

 分からない、振りををしているだけ。本当は何が嫌で何を求めているのか、気づいてたんじゃないの。

「彼に告白して、彼女いるからってフラれて、けど抱いてやるよって言われて、表向きにはただの友達で。私はまだ彼が好きだから、少しでも一緒にいたくて、でも彼が好きなのは、私を抱いた後に電話する本当の彼女で。私、私は、彼にとって、発散できる便利な女でしかない。なのに私は呼ばれると、私という存在が求められている気がしてすぐに飛んで行く。用は終わったからと家を出る時、とてつもない孤独を感じてまた辛くなるのに。私は、求められないとそこにいていいのかすら分からなくなる」

 不安や恐怖、全てが私を押しつぶしてくるような気がして頭を抱えた。そこに優しく、手が添えられる。

「大丈夫、美影ちゃんの居場所はここにあるよ。今までは一人ぼっちだったかもしれないけど、もう違うでしょう。私も隆君も、あなたのことを気にかけているわ。迷ったら、またここにいらっしゃい。私の友達も、あなたの味方になってくれるはずよ」

 顔は動かさず視線だけ上に向け、腕の隙間からそっと美月さんの顔を伺う。それに気づいてか、美月さんは一瞬こちらを見ると口元を緩めた。

 その笑みに、私はどれだけ救われただろう。

 自分のいやらしいとこ、全部無視して自己犠牲感に浸って。これでいい、仕方ないなんて思いながら本当はこれを望んでいた。

 私は、例えそれが歪んだ形だと知っていても、彼と繋がりを持てることに喜び感じ、またそれが自分の理想とかけ離れていることを知り、絶望する。僅かな希望に縋っていた。それがとっくに途絶えていると気づいていながら、淡い幻想を抱いていた。

 彼の瞳に、私は映らない。

 私はずっと、彼にとって大切なものに、なりかっただけなんだ。

 こんな汚れた存在を、好きになってくれるはずもないのに。

 浅はかな私。穢れた私。

 世の倫理は私を許さない。

 けどこの女性は、私を受け容れてくれるの?

「美影ちゃんは、少し世の中を知らなさすぎかな。井の中の蛙大海を知らず、じゃないけど、一つのことに集中したら、そこにしか世界はないと思い込んでるのかも。その彼は、美影ちゃんにとって凄く素敵な人だったのかもしれない。けどさ、急に嫌いになれとか、他に好きな人を作れは言わないから、少しだけ、視野を広げてごらん。世間があなたをどう思うかも、それから考えてみなよ。とりあえず第一歩としては……そうだね、私と友達になろっか。年上の友人なんていうのも、乙なものでしょう」

 私は、変わってもいいんですか。

 本当は赤黒い醜の色をしていた、なのに透明で何もないと見えない振りをした私が、光の雫に触れてもいいんですか。

「難しく考えなくていいから、ね」

 胸の内にわだかまった物をすっと溶かす清らかな声。

「彩さん……」

 私は少しでも近づきたくて、小声でそう言ってみた。

「固いなぁ、彩ちゃんでもいいんだよ?」

 なのに美月さんは急接近してきて、私は戸惑うばかり。私から行かなくても、向こうから来てくれることがあるなんて。こんな近くに人を感じたことないから、距離の取り方がよく分からないよ。

「先輩にちゃん付けなんて、そんな」

「いいじゃない、先輩後輩として出なく、偶然すれ違ってそれから知り合いになったんだもの。大学生はさ、同級生がみんな同い年じゃないなんてことってよくあるんだし、多少の年の差は気にしない」

「さえ、ちゃーー……さん。やっぱり無理です!」

「はいはい、じゃあそのうちね」

 そのままわいわいとやりとりをしている内に、さっきまで悩んでいたものが少しずつ消化されていった。

 美月さんには、なに不思議な力でも持っているのかもしれない。

 今度は、美月さんのご友人にも会ってみたいな。



「美影ちゃーん! こっちだよ」

 大学の食堂、大勢の人で混雑する中、私の名が呼ばれる。けど、こういった場所に慣れていない私はその場に立ったまま一歩も動けず、右に左に顔を動かすので精一杯だった。

「はい捕獲、ちゃんとついてきてね」

 どこからか伸びてきた手に右手を掴まれ、そのまま連れて行かれる。すらりと伸びた背にセミロングの髪を一つに束ねた後ろ姿。間違いなく美月さんだ。今日はスーツを着ている。

「珍しく全員揃ってね、あー後輩の彼氏はいないんだけどさ、授業終わった後会う予定なんだ。美影ちゃんも来ない?」

「あの、えっと」

「ごめん、いきなり色々言われたら混乱するよね。まずはみんなに自己紹介から」

 美月さんは立ち止まると、一歩右にずれた。そうして開けた視界には、注目する三つの視線と苦笑する隆さんの顔。

 私は反射的に美月さんの背中に隠れた。

「小動物かな?」

 興味深げに言ったのは、ショートヘアで毛先を揺るく巻いた可愛らしい雰囲気の女性だ。

「えっと、霧野美影です。よろしくお願いします!」

 慌ててそう言うも、背中に隠れたままでは意味がない。分かってはいるけど、緊張してそこから動けなかった。すると、女性の方からわざわざ席を立ち私の側に来て話しかけてくれた。

「美影ちゃんだね、よろしく。私は相坂奈央、そこの彩と同い年ね」

 差し出された手を素直に握り返す。白くて小さくて、女の子らしい手だ。

「そんな恐る恐る触れなくても、大丈夫だよ。私以外と丈夫だから」

「可愛いでしょ、奈央。服とかは奈央に相談すれば間違いないから」

「任せて。お手軽で可愛いお店ならたくさん知ってるから。と、言う訳で少しは慣れたかな?」

 笑顔で問われ、自分が緊張していたことを思い出した。私をほぐすために、あえて近くで接してくれたのか、と初対面にもかかわらず優しい相坂さんに感謝する。

「はい、ありがとうございます」

「うん。じゃあこっち来て」

 腕を引かれて相坂さんの右隣に座らせられる。向かいには、美月さんが腰かけた。そのまま視線を横に動かし、隆さん、その隣に座る女性、と順に顔を見ていたところで、私は固まった。

「えっ、うそ……雨美先輩?」

 隆さんの隣で、静かにこちらを見つめていたのは、まさに私がずっと憧れていたその人、水無月雨美先輩だった。

 突然の出会いに驚いていると、雨美先輩から声をかけてくれる。

「久しぶり、霧野さん」

「わわ、私のこと覚えて」

「もちろん、印象的だったから」

 相変わらずの無表情。だけど美しくて、吸い込まれそうになる。まさに雨、冷たくてだけど地上に恵みをもたらす神聖な雫。まさかこんなところで再びお目にかかれるなんて思ってなかった。しかも、覚えてくれてたなんて。

 頭が真っ白になる。危うく意識が飛びそうになったところで、美月さんが笑いをこらえているのに気づき、なんとか自分を取り戻した。美月さん、もしかして私の憧れが雨美先輩だってこと勘づいてました? その上で今まで皆さんの名前を言わなかったとか。

「二人は知り合い?」

「中三の時、少し話したことがあります」

「ふーん。じゃあ自己紹介は必要ないね。次、青木君」

 相坂さんは周りの様子を全く気にせず隆さんに話を振った。

「はいはい」

 隆さんは、まだ笑いが収まらないらしい美月さんを注意しがら、申し訳なさそうに私を見る。美月さんも、そんなに笑わなくてもいいじゃないですか。

「俺はまぁ、もう会ったことあるけど、青木隆です。なんか彩が振り回してるみたいでごめんな」

「いえ、全然……」

 平気じゃないです。美月さんには後でしっかり異議申し立てしよう。

「はい、最後!」

 相坂さんは勢いよく上半身を捻り、自身の左側にいる男性を手で指し示した。男性は少し身を乗り出して、私に目線を向ける。

「河合悠斗、四年です。俺はいつも奈央に振り回されてます。よろしく」

「なに言ってるのかな悠斗君、私は悠斗君だけじゃなくここにいるみんなを振り回してるんだよ。因みに、朝田君も」

「私を巻き込まないでください」

 雨美先輩は力説する相坂さんに対し、表情を変えずにはっきりと言い放った。

 確か朝田君というのは、雨美先輩の彼氏さん。中学の頃から変わってないなんて、凄いな。お似合いだったから、続いててよかった。

「雨美ちゃんと中学一緒ってことは、私らとも同じだよね。ねえ、美影ちゃん。朝田君と雨美ちゃんて後輩の代にも有名だった?」

「もちろんです!」

 ということは、雨美先輩たちは先輩にも知られていたのか。私は三年生の時しか知らないからな。今度、美月さんにいろいろ聞いてみよう。

「さすが美男美女カップル」

「あまりからかわないでください」

 雨美先輩はさすがにくどいと思ったのか、少し眉をしかめて抗議した。そういえば、こうして表情が変化するのは、初めて見たかもしれない。ここにいれば、新しい雨美先輩に出会えるんだ。私、憧れ憧れってずっと思ってたけど、ずっと遠くから見てるだけだけで、本当はなにも知らなかったんだな。

「事実だよ、事実。でもさ、なんか下の代が増えるって新鮮でいいね」

 相坂さんは嬉しそうに笑いかけてくれ、つられて私も頬を緩める。

 初めて会ったばかりの人に囲まれてるのに、楽しいという思いが私の中にある。それは懐かしくて暖かい感情だ。

 本当に、美月さんの言った通りである。

 私はなにも、まだなにも知らなかった。やっと今日、ほんの少しだけ世界を知れた。


 きっと変われる。

 そう強く思うんだ。


 そうですよね、彩さん。


 次に見る雨は、何色だろう。素敵な色に、染まっていると良いな。

 ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。いろんな作品の主人公が勢揃いしてしまいましたね。そんなわけで、今回は霧でした。一応「雨の色を描写する」というお題(?)を見つけそれに乗っかったのですが、なんだかよく分からない形となってしまいました。

 今回はその他短編を読んでいないと話が分からない、なんて内容ではないと個人的には思っていますが、気になる方のためにここで一度紹介させてください。


 美月彩&青木隆「Believe in〜信じるということ〜」

 相坂奈央&河合悠斗「あの川辺で、また会おう」

 水無月雨美&朝田光輝「お天気雨予報」


 どれも数年前の作品なので見返すと恥ずかしいですね。元々は上二つだけ繋がりを持たせるつもりでしたが、ifストーリーを上げてしまったらそこから妄想が止まらず、結果こうなってしまいました。

 美影ちゃんに限らず、人って自己犠牲感も自己中心感もどちらもあると思うんです。それが混ざ単体なら分かりやすいですが、混ざり合ってしまうと本当に複雑で、難しいですよね。自分が犠牲になれば、っていう考え方、よくあると思うんですけど、まあそれで周りが幸せになるのかって言われればそうじゃないんですよね。なんて書いてたら昨日見た映画を思い出して、泣きそうです。面白かった……。

 と、雑談はここまでにして、正直うまくまとまった作品とは思いませんが、ここで投稿させていただきます。よければご意見ご感想をお聞かせください。


 それでは、また。


2016年 6月11日 春風 優華


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[良い点]  短い言葉では言い尽くせない重苦しい気持ちを上手く表してると思います。人って、複雑だから。そんな気持ちに向き合わうという姿勢って、強いからだと思います。心の中の葛藤ですね。人としてこうであ…
[良い点]  内気な女性の恋愛は面白いです。 [一言] 利用したことが将来に大きなツケを残すことに、気づかない人は少なくないと思います。
2016/06/11 10:29 退会済み
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