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我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか

 上空三万メートルの成層圏。そこは大気圏内でありながら、ほとんど宇宙と言っても良かった。

 現在、日本時間午後九時。北緯三十六度、東経百四十度の島国は、太陽光が届かなくてもその輪郭がはっきりとしていた。

 彼は、景色を見るためにここに来たのではない。目の前にあるのは鎖でできた棺桶。それは今まさに炎を上げながら、中に納められた人間を焼いていた。


 天河御影との最後の別れ。彼女の魂は永遠に失われた。肉体が残っていても意味は無く、せめてこの広い世界が見渡せる場所で火葬してやりたい。彼はそう思い、二本の鎖を三万メートルも伸ばしてここに到達したのだった。


 この数時間の間に多くの死を見て、そして気付いた。人間は、肉体が滅びることによって死を迎えるのではない。魂が消滅することによってその肉体が滅びるのだ。それはもしかしたら、『人の一生は運命で決まっている』という残酷な現実を突きつけているのかもしれない。しかし、運命があろうとなかろうと、真実を知らなければ同じこと。彼はそれ以上の真実を追及しないと誓った。


「お前が呼びかけてくれていたんだな」


 燃え上がる棺桶に向かい、ポツリと呟いた。

 なぜ人の思考が読めるようになったのか。なぜそれが三年前、事故に遭ってからだったのか。彼はその答えに気付いた。


 深層界は全ての存在と繋がっている。それは人間の意識も同じ――――『意識の交差点』


「俺は……あの日以来聞こえなくなったこえを…………聞きたかっただけだったんだ」


 御影の肉体が完全に燃え尽き、彼は鎖の棺桶を解体した。底に溜まっていた灰が粉雪のように舞い、風に流されていく。


「ありがとう……御影」


 こうして、彼は本当に一人になった。


 

 彼は生命を失った末に、生きる意味すらも失った。たった一人の妹のために彼は生きてきた。彼女が彼の生きる意味であり、目的であった。しかし、それは永遠に失われた。

 肉体が滅びても生きる意味が残っていたら、それはおかしな話だ。逆に、肉体が残っているのに生きる意味を失ったら、それは悲惨な話だ。だから、


「これは最善の結末なのだ」


 と、彼はそう思うことにした。



 彼は世界を俯瞰した。

 生命を育む青い星、地球。そこに生まれた人類は、これから厳しい時代を迎えることになるだろう。絶えず憎しみを生み続ける人類は、自らの手によって地獄の門を開いてしまった。

 現象界に出現し始める深層界の怪物。そして、それを陰で操る存在。それが神なのか、愚者の意識なのかは分からない。だが、彼は己の本質を理解した。


「俺は、神も人間も、赦さない」


 読者の皆様、こんばんは。作者の一二三(2016/10/02 唖ヰ路 むネんに変更しました)です。


 まず始めに、最後まで読んでくださった方々、本当に本当にありがとうございました。付け加えまして、途中半年近い長期休載があったことを深くお詫び申し上げます。本当にすみませんでした。他にもまだまだ謝らなければならないことが沢山ありますが……どうかご勘弁をッ!

 

 せっかくのあとがきなので、作品について少しだけお話ししようと思います。この小説は原題『Ascension―アセンションα― 深層界の怪物』という長編小説に改稿を施した作品となっています。執筆した期間は2014年11月~2015年1月頃で、元々はとあるラノベ新人賞に応募するために書いたものです。正確には応募するために書いたわけではないのですが、初めて長編小説を書いたのだからどうせなら応募してみようということで、無謀な挑戦をしたわけであります。結果は一次通過さえ果たせず……今になって思えばあまりに当然の結果でしたが、当時は少しへこんだりもしました。

 先ほど述べましたように、作品自体は『なろう』に投稿する一年近く前すでに完成していました。が、新人賞の落選作品をそのまま載せても仕方がないという思いもあり、大幅な内容の改変、追加等も検討しました。しかし、最初に書き上げた長編小説という記念碑的な意味合いと、後に述べる作者自身の個人的事情もあり、実際はそれほど大きな変更のないままに完結を迎えることとなりました。

 

 『ア戦sioン』は、作品中で語られる設定などが作者自身の個人的な世界観に基づいて構成されています。ちょっとカッコつけて言えば、体系的な哲学に基づいていると言っても良いかもしれません。それはこの作品が生まれた背景に関係があるように思います。

 作者の性格には双極性鬱病的傾向と不安神経症的傾向があります。躁状態の時にはインスピレーションが湧いてウハウハと創作活動を進められますが、鬱状態になるとそれまで頑張って続けていた活動に全く興味が持てなくなります。普段はすぐに選べる資料本や小説などにも手が伸びなくなります。そのような状態が数週間から長い時には数ヶ月も続きます。それに比べて躁状態は三日も続けば長い方です。当然の如く、安定的な執筆活動には大きな支障が生じます。言い訳のようになりますが、長期休載にはこのような作者自身の根本的な性格に原因があるのです。作者自身の力ではどうにも解決出来ないのが現状です。

 さらに、これに加えて不安神経症がセットになっているものですから、作者の心中はいつも大しけ状態です。何か掴まるものがないと、とてもじゃないが、落ち着いていられません。ところが、身の回りにあるものは物質的であれ、概念的であれ、信用に足るものがなかなかありません。結果として、作者は自分自身で自分を守るための世界観を作り上げなければならなくなります。こうして『ア戦sioン』を構成するある種の哲学体系が出来上がるわけです。

 ちなみに、かの有名なニーチェによると、作者の行っているような自己防衛はニヒリズムの第二段階くらいにあるそうです。最終の第三段階では、ついに自分の作り上げた世界観すらも信じられなくなり、途方に暮れることになるそうです。お先真っ暗ですね(笑)。


 なにがともあれ、作者は現在結構楽しく創作活動を続けております。『ア戦sioン』についても、続編のプロットが(ぼんやりとですが)出来ていたりいなかったり……。他にも書きかけの作品がちらほら転がっているので、もしかしたらまた投稿できる日が来るかもしれません。しかし、先ほどお伝えしたような事情もあり、今の段階でははっきりとしたお約束をすることが出来ません。ごめんなさい(´Д`)


 最後になりますが、最後の最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。長期休載でご迷惑をお掛けした理由について、読者の皆様にお伝えできるよう言葉を尽くしたつもりですが、そのせいであとがきが無粋で野暮ったいものになったことを、どうかお許しください。


 では、いつかまたお会いしましょう。(^o^)ノシ



 ……………………



 追記(2016/10/02)


 2016年10月2日現在、ひとまずの完結を迎えた『ア戦sioン』について、最初の投稿時に統一することの出来なかった文体の統一及び更なるクオリティアップのため、諸々の改稿を施しています。改善を図る主な理由としましては、初稿時に背景設定等が固まり切っておらず、描写することの出来なかった内容があること、また続編の構成が出来つつあることから、そこへの移行をスムーズに行うための内容の補足、追加をする必要があると判断したためです。先のあとがきで示したような記念碑的な意味合いは薄れてしまいますが、正直なところ、今は自分の納得出来る形に作品を仕上げたいという気持ちの方が強いです。一度書籍として出版された本は直したいと思ったところを書き直すことが出来ませんが(版を重ねていくうちに改訂版として修正を加えることはありますが)、『なろう』に投稿する限りにおいては無限に質を高めていくことが出来るのも、ネット小説の長所であり醍醐味であろうと思います。改稿前の方が良かったと感じる読者の方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。そのような場合には真摯に意見を受け止めたいと思いますので、どうぞ感想等にご一筆ください。今後の参考にさせていただきます。


 度々ご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありません。これからも『ア戦sioン』と唖ヰ路 むネんの作品を、どうぞよろしくお願いします。

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