愛子の日誌
三月
私は敦からホワイトデーのお返しをもらった。敦は手作りクッキーを焼いてくれた。
少し焼きすぎていたのでほろ苦かった。だけど私はそれが嬉しかった。
四月
春をむかえた。新入生は入ってきたが新入部員は入ってこなかった。桜は咲いたと思ったらいつのまにか散っていた。木の色が緑になった。まだ少し肌寒い。
敦は風邪をひいた。三日で治した。差し入れをもっていくと嬉しそうにした。
五月一日
とうとう五月がきてしまった。私は殺し屋なんだ。それでご飯を食べているんだ。敦だけを特別視することは許されない。仕事に私情は持ち込んではいけない。そんなことではプロ失格だ。
五月十日
私はちゃくちゃくと殺しの計画を練っていた。失敗は許されない。誰にも気づかれない場所で敦を殺さないといけない。敦は誰にも気づかれない場所で、死んでいくのだ。
五月二十日
敦は私の横で寝ている。窓からの風が心地よかった。幸せそうに安心した顔で寝ていた。
「愛子……」
「ん?どうした?」
「……」
なんだ寝言か、バカな奴……。
「……ありがとう」
寝言なのか起きているのか分からない声で、敦はそう言った。
「ほんとにバカねぇ……」
そう返事をすると、私は少しだけ泣いたと思う。
五月二十三日
私は五月三十一日にデートをする約束をした。敦はそれを了承した。
五月二十五日
敦と一緒にラーメンを食べて帰った。
五月二十八日
敦と部室でのんびりしていた。相変わらずだった。私と会うと相変わらず笑顔になった。私もいつの間にか敦と会うと微笑むようになっていた。それが自分にとって驚きだったし、自分にとって嬉しいことだった。
「じゃーそろそろ帰るわ」
帰り道敦と別れた。敦の後ろ姿が見えなくなるまで、ずっと見ていた。
「バイバイ……敦」