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「――リーシャ、起きて」
ビルギットにそう声をかけられて、リーシャは目を覚ます。
「あ……」
リーシャは混乱していた。
ここは迷宮の中で、先程まで自分は休憩として眠っていた。ビルギットが手を繋いでくれたおかげで、悪夢を見ないで済んだ。
だが、悪夢の代わりに見た夢をどうしても思い出せない。
「大丈夫?」
心配そうに尋ねるビルギットに、リーシャはゆっくりと起き上がって笑顔を見せる。
「おかげさまで、ゆっくり眠れました」
「そう。ならよかったけど」
ビルギットが再び2個の理術光石を灯火し、支度を始める。リーシャもそれに倣い準備を始めようとする。が。
「――リーシャ」
呼びかけたのは、彼女の足元にいつの間にかいたレフターであった。
レフターの声を聞いた瞬間、リーシャは、寝ている間にもその声を聞いていたような、奇妙な感覚にとらわれる。
「レフターさん、どうかしましたか?」
「……よく眠れたようでよかった」
レフターはそれだけ言い残し、いつものように姿を消して、ビルギットの右肩へと移動した。
リーシャには、レフターの言葉の真意を汲み取ることができなかった。




