才能開花編2
目を開けるとそこは白い部屋の中だった。狭くもなければ広くもない。ちょうどよい感じだった。そして奥にもう一人いることに気がつく。あの後姿、背丈、体格。何をとっても思い当たる人は一人しかいない。
「俊?俊じゃないの?」
すると男が振り向いた。やはり俊だ。間違えない。薫が声をかける。
「俊?俊ってば、無視しないでよ。ねえ。」
肩に手を置いた瞬間、薫はドキッとした。俊は無視をしていたわけではない。無視をしざるをえなかったのだ。
なぜなら俊の体はすごく冷たかったのだ。びっくりするぐらいに冷たかった。
「よ。」
後ろで声がした。薫は急いで振り向く。そこには俊がいた。
え?なにこれ?ドッキリ?俊が二人?冷静ではない薫は状況が理解できていない。そして俊が薫に話しかける。
「悪いな、いきなりこんな登場で。でも、驚かないで聞いてほしい。まずは、話しているほう。こっちはリアルタイムとつながっている俺。で、あそこの死体、あれが明日の俺。そう、明日俺死んでしまうんだ。」
「え?え?何いってるの?さっき分かれたはずだよね?転校したじゃん。それに何?死ぬ?死ぬってどういうことよ?」
薫は俊の言葉が信じられず思わず聞き返した。
「そうだね、まず順を追って説明しよう。まず一個目、今この状況だが俺と薫だけが見ている世界。いわば『特別な二人の世界』だよ。ほんとはこの世界を作った人間だけが干渉可能なのだけど今は席をはずしてくれている。だから遠慮せずにきいてよ。まぁ、時間はあまりないけどね。」
もちろん聞きたいことは山ほどあった。でも、何から聞いたらいいのかわからなかった。そして少し悩んで一個、質問をぶつけてみた。
「じゃあ、まず一つ目。死ぬってどういうこと?」
「言葉通りさ。僕は明日死ぬ。これは未来予知みたいなものさ。」
「そんな馬鹿げたことが信じられるわけないじゃん!」
「今この状況を見てもそれが言える?」
薫は思わずぞっくっとした。そうだ、今俊の死体が転がっているんだ。そう思うと俄然信憑性が増してくる。
「もう時間がない。質問はそれだけ?なかったら僕の話を」
「まって!」
薫は叫ぶ。最後に半分祈りこめた質問をした。
「その未来は変えることはできないの?」
「ああ。その答えはnoだ。」
薫はその場で崩れ落ちた。ああ、なんで?
「では、こちらから伝えるべきことを言うよ。聞いてくれ。君は学校でいじめにあう。でもめげずに頑張ってほしい。耐えてほしい。そして、二週間後、世界は大きく変わる。だからそれまでにいってほしい場所がある。アドレスは君の右ポケットに入れておいたから。そこにいってくれ。話はつけてある。それから・・・」
俊が何かを言おうとしたとき、俊の体にテレビの砂嵐みたいなのが走った。
「おっと、時間だ。いいかい、無茶はしちゃだめだ。き・・・かな・・・ちょう・・・さに・・・」
最後はノイズと混じって聞き取れなかった。そして最初同様青白い閃光につつまれた。