鏡の中
掲載日:2026/06/18
本作は、2010./2/26にヤフーブログで書いていた短編を当時のまま投稿した物です。
あらすじは新規に書き下ろしました。
さる
針だ。まず、それが床に落ちていた。
何かの液体が付着したのか、先端の欠けたそれの周りは小さく染みになっていた。その先には――
私、そう私だ。
床の上に大きく横たわっている私の姿がそこにあった。
ん、何か違和感がある。
そうだ、なぜ私の目の前で私が倒れている?
なぜ、仰向けで目を開けたまま天井を見つめている!
これではまるで……
私は悲嘆する余り、床に膝を付いて両手で顔を覆った。掌のぬくもりが、瞼に直接伝わる。
いや待て。
私は眼前で倒れている筈だ。
なら、これは誰の手だ?
先っぽの欠けた針。
倒れている私の体。
それを見ている私。
私はその手で首から下を隈無く触り、今度こそ自分の身に何が起きたのかを悟った。
硬く引き締まっていた太い腕は細く、厚い胸板は柔らかく膨らんでいた。
「そうだ、鏡!」
聞きなれた声で叫びながら、洗面所へ駆け出す私。
そして、予感が確信へと変わった瞬間、私は言葉を失った。
見つめる先には、ひきつった笑顔で私を見ている「彼女」がいた。
続きはありません。これで終わりです。
最後までご精読頂き、ありがとうございました。
さる




