魔物使い
たぶん300回目ぐらいのループでようやく隠されてる島に入るための特殊アイテムを入手した。黄金の仮面だ。世界中を飛び回り伝承の手がかりを手に入れてジャングルの奥地に眠るピラミッドの隠し部屋で発見した。伝承を知る獣人の女戦士を仲間にするためにクマ型のモンスターとの素手での決闘も命がけだった。オレじゃなかったら永遠に見つけられなかっただろう。あまりにもヒントが少なすぎるし初見殺しのトラップにまみれたダンジョンは意地悪過ぎだ。
魔王軍を放っておけば1年で世界は暗黒に包まれて滅ぶから半年を目安に魔王を討伐しつつ探索を繰り返してようやく結界を解く鍵を入手できた。獣人の女戦士カノンは戦闘も激しいが獣欲も激しい。一緒にいるだけで体力を削られるのでいったん魔王を倒してループしてもう一度1人で黄金の仮面を入手した。
オレは黄金仮面を装備して泳いで結界の張られた島に向かった。仮面は重くて息苦しい。オレじゃなきゃ泳いで島に向かうなんてムリだろう。黄金の仮面は呪われていて乗り物に乗れなくされていた。どこまでも底意地が悪い仕掛けだ。黄金の仮面を装備しているので島は見えるし上陸もできた。オレはすぐに仮面をはずした。プハーッ。死ぬところだったぜ。
島は無人島のように静まり返ってる。浜辺を周囲を警戒しながら歩いていると、森林からスライムが飛び出してきた。オレの姿を見て慌てて引っ込む。モンスターがいるのか。武器を持ってきておいて正解だった。オレは腰に軽量のダガーナイフを装備していた。羽のように軽いが切れ味は抜群だ。森林を奥に進むと広場に出た。人間の手が加えられている。中央に簡素なログハウスも見えた。家屋に近づくとどこからともなく大量のモンスターどもが飛び出してきた。みかけねえつらだが、いっちょやるかい?
ナイフを構えて対峙する。
「待って!この子たちに手を出さないで!」
褐色の肌にアメジストの瞳の少女が家屋から現れた。髪は長い銀髪で知的な瞳をしている。水着のような軽装だ。暑いからな。来客などまったく予期していなかったに違いない。
「きみはだれだい?」
「私はサラ。このこたちの面倒を見て暮らしているの」
「まさか魔物使い?」
「そうよ」
「魔物使いの血筋は滅びたはずだけど」
「生き残りがいたのよ。私たちはひっそり隠れて生きてきたわ。私はその最後の1人」
サラは虎型のモンスターの頭をなでる。タイガー魔獣は喉をならして喜ぶ。よく懐いている。オレは額の汗を腕でぬぐう。魔物使いは昔はけっこういたらしい。けれど魔物を操って悪さをするってことで世界中で差別されジェノサイドされた。300年前にはもう絶滅したと歴史の授業で聞いている。魔物使いの一族じゃなくて魔物使いの才能を持って生まれたものも差別や虐殺を恐れてその才能は閉じたまま一生を過ごすのが定番になっている。
「魔王の影響下にあるモンスターも仲間にできるのか?」
「まあね。魔王の恐怖を上回る愛情をぶつければ支配が解けて仲間になってくれる子もいる。生まれつき凶暴な子はむりだけどね。魔王と波長があって簡単に支配されてしまうの。魔王の人間を襲えという命令に逆らえないわ」
「おったまげたぜ。オレの仲間になんねーか。オレは勇者タケルだ。オレが魔王討伐したら魔物使いの保護を約束する」
「それだけじゃなく人間とモンスターが仲良く共存する世界を一緒に実現してくれるならいいわ」
「いいぜ」
サラはニコリと笑った。
「装備を持ってくる。待ってて!」
でかい約束をしちまったが、どうせオレはループする。サラをモノにしたらこっちのもんよ。約束など知ったこっちゃねえ。
しばらくして魔物使いの正装に着替えたサラが出てくる。髪をリボンで結んで獣の牙のアクセサリーをつけている。あとは水着の上に超ミニのジーンズを履いただけの超ラフな格好だ。手には年老いた魔法使いがよく持っているような長い木の杖を持っていた。
「行きましょう。タケル」
「おう」
オレは歩き出す。
「あなたとあなたはついてきて。あとはお留守番ね」
サラはモンスターを2匹お供にした。虎型と蝙蝠型だ。
「きみはどういう戦闘スタイルなんだ?」
「回復と補助魔法専門。直接は戦わないわ。逃げたり避けたりするだけ」
「戦いはモンスターにお任せってわけね」
「そうよ」
「ところで船ある?オレが港から運んでくるべきか?」
「船ぐらいあるわ。大きくないけど。たまに街に行くから」
島を出てからすぐ魔王城に向かった。モンスターと一緒に連携して戦うのはけっこう面白い。サラは魔王城にいる強敵も仲間にしたりしてかなりのやり手だった。今回も魔王をあっさり倒して討伐は終了した。心残りはサラと恋人になれなかったことだ。魔王城に向かう途中、野営の時に焚き火を囲みながら告白するとこんな返事だった。
「約束を果たしてくれたら恋人になってあげてもいいわ」
「魔物使いが保護されて人間とモンスターが仲良く共存する世界が実現したら?」
「そうだよ。みんなにモンスターを不必要に狩ったり食べたりしないで欲しいんだ。虐待もダメ。今のモンスターには人権がなさすぎる」
「それには激しく同意する」
オレもモンスターと一緒に戦ってこいつらに情が芽生えた。オレはけっこう動物好きなんだ。畜産農家の手伝いもしていたから家畜とよく戯れてた。モンスターの命も動物の命と同じぐらい大切に扱いたい。
「きみとは気が合いそうだね」
サラはご機嫌だ。両脇にいるおとものモンスターたちもうれしそうにしてる。
魔王討伐後、またいつものように城で祝賀会が行われた。宴会の席でオレは国王に魔物使いへの差別はやめて保護するように訴えた。さらにモンスターの命を動物の命と同じように大切に扱うよう強く進言した。オレの熱意に押された国王は世界を救った勇者の頼みならってことで心よく了解してくれた。世界全土にも勇者の意を伝えてくれるそうだ。うまくいって良かった。達成感に満たされつつオレは花火を見上げる。肩をトントンって叩かれた。




