森の守り手
3回目の冒険。オレたちは気になっていた聖なる森に足を踏み入れた。聖なる森は結界にはばまれていて聖なる腕輪を装備しないと入れない隠しダンジョンだ。モンスターはいない。森の奥深くには聖獣ユニコーンがいると伝わる。
ユニコーンを探して会うのは魔王を倒すのにまったく関係のないイベントなので前回と前々回は無視していた。聖なる腕輪を入手するには伝承を知っている炭鉱に暮らすドワーフの鍛治職人を仲間にしなければいけないようだったし、聖なる腕輪は海底神殿にあるという情報だったのであきらめた。とてもじゃないがそんな回り道はできなかった。時間の大幅なロスだ。魔王を倒す勇者様御一行は道草を食っている時間はないのだ。しかし、何度でも冒険をリスタートできるなら寄り道しても大丈夫だ。オレたちはドワーフを仲間にして船に潜水ができる魔改造を施してもらい海底神殿に潜り巨大な人魚型のモンスターを倒し聖なる腕輪を入手して聖なる森に突入した。仲間たちは一様に感動している。
「すっごい空気がおいしいのだ!」
「うわぁ、小鳥の歌声に川のせせらぎ心が洗われるようですね」
「モンスターはまったくいそうにないね。残念だ」
「オレの故郷の森に少し似ているな。しかしこの森のほうがずっと輝いている」
「木を傷つけぬようにな。聖なる獣の怒りを買っちまう」
オレたちはぐんぐん森の奥に進んだ。途中で休憩してサンドイッチを食べた。まるでピクニックのようで楽しかった。こういう冒険もしてみたかった。ちなみにドワーフのキコルじいさんはメタルハンマーを武器として戦う戦士でもあり、けっこう強かった。装備のケアもしてくれるし有能だ。仲間にするために長いお使いクエストがあったので時間とお金をかけてまで仲間にする価値があるかどうかは今のところわからない。べつにいなくてもクリアできる。ライチも。楽しい団らんを終えて森の探索を再開する。かなり長く歩いた。日も暮れかけもう引き返そうかという頃合いに、それは出現した。
「みて!なにかいるのだ!」
クルミが指差した方向を見ると湖のほとりに聖獣の姿があった。聖獣だけではない。金髪のエルフがたたずんでいた。ユニコーンのたてがみにやさしくふれている。どこまでもどこまでも深いエルフの青い瞳に吸い込まれそうになる。
「あなたたちは何者ですか?即刻、この森を立ち去りなさい」
エルフの言葉に反応したのはキコルじいさんだ。
「わしらは勇者とその仲間じゃ。魔王を討つための聖剣が欲しい」
聖剣などなくても魔王を倒せたが、聖なる森に行く理由として聖剣探しを口実にしていた。その後、ユニコーンは姿を消し、エルフに案内されてエルフの隠れ里に到着した。エルフの名前はミア。長寿のエルフの中では圧倒的に幼くクルミと同じ16才だった。オレは長老から封じられた聖剣を渡された。選ばれし勇者以外は抜けないという伝説だった。オレは軽く引き抜けたのでもらうことにした。やはり間違いなくオレは勇者なのだ。ミアは魔王討伐に同行したい、と申し出た。外の世界への憧れもあったようだ。だが、ここで大きな問題が起こった。
「絶対ダメなのだ!そんなことするなら私はパーティを抜けるのだ!」
クルミがミアの加入を断固拒否した。顔を真っ赤にして腕組みをしてあぐらをかいている。すでに大賢者となっていたクルミをパーティから外すわけにはいかない。エルフは弓と回復魔法に長けているというがミアの実力がクルミに匹敵するとは到底思えなかった。モンスターのいない森で暮らしているのだからレベルも1だろう。そもそもクルミを外したら他のメンバーからの信頼を失う。オレはミアの申し出を断った。ミアはオレたちの出立を残念そうに見送っていた。
クルミは隠れ里を出てもまだちょっと怒っていた。なぞだ。森を抜ける途中、クルミが用を足しに離れているすきに他のメンバーに聞いてみた。
「なんでクルミはミアの加入を断ったんだ?」
「ふつーに嫉妬でしょ。王女様めちゃくちゃかわいかったです」
「女心が読めなさすぎ」
「ハッハッハッ。色恋沙汰にはうといオレでもピンときたぞ」
「恋人は大事になされたほうが良い。あなたはいずれ王になるおかたじゃ」
ガーン。そうだったのか。クルミがいるとミアはパーティに加入させられないことが判明した。クルミとの恋愛は一度経験しているからクルミのことは知り尽くしている。よし、今度はミアと付き合おう。とんでもなく美形だし神秘的な雰囲気だしスレンダーだ。隠れ里にいる間、彼女の青い瞳はじっとオレをみつめていた。勇者であるオレに気があるのは間違いない。ミアを絶対ものにするという断固たる決意を固めたオレは急ぎ足で残りのイベントをこなし魔王を倒した。聖剣の威力はチートで魔王さえも瞬殺できた。時間のロスを考えたら聖剣を取りに行かないほうが、今のところクリアがはやい。3回目の記録は1000時間をはるかに超えてしまい1回目より時間がかかっていた。よーし4回目はクルミを仲間に誘わずミアを加入させるぞ。




