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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

画家は人殺し

作者: 窯野 四方木

 人を殺した。

肩にかからない程度長さをした黒髪の女性。

身長は平均より五センチ大きいくらい。

僕のクラスメイトで僕が好きな人。


 いい絵が描きたかった。

いい絵にはリアリティが必要だ。

僕の好きな漫画の登場人物も言っていた気もする。

読んでいた当時は「また変なことを…」と呆れていたが今はわかる。

彼女のすべてがわかる。

レオナルド・ダ・ヴィンチが解剖を行ったように隅々を知らないと描けない。



 彼女は誰にでも優しい女神。

なよなよした僕にも笑顔で話しかけてくれるんだ。

いつかは彼女と仲良くなりたいと思っていた。

気が付けば僕は鉛筆を削るためのカッターをもって彼女を探していた。


 彼女は腹部からの多量出血で死んだのか。

 僕が首に手をかけ酸素が足りなかったのか。

 はたまた他人の僕に刺されたショックからなのか。

 腹から魚を捌くように刃を滑らせる。

 彼女の肌はシルク生地。赤い線が定規要らずでひける程。



 僕の持論だが人間は食べたもので形成される。

SNSで見かける腕と胴体の厚みが同じ女は中身がからっぽである。

 「モナリザ」「真珠の耳飾りの少女」と並ぶ彼女からは

肉だとおもわれるもの、果物だとおもわれるもの、ゼリーだったものが

液体と共に溢れた。ただ美味しくはなかった。

正直、彼女が着ていたカーディガンのほうが香ばしかった。


 カーディガンだけでも私物にしたかったが、

僕は桜の樹の下に彼女ごと埋めてしまった。

 絵は実物が目の前にある以上に写実的に描けることはない。

埋める行為は画家としての愚行だっただろう。

 しかし皆に彼女の美しさを僕が発信していくためには、

僕は捕まることができなかった。



 僕は信者なので殺さないといけなかった。

 彼女を知って、描いて、布教をしないといけなかった。

 幸い彼女は明日には樹の下から蘇る。

 彼女はキリストと同じ神なのだから。

 僕の神は一度で消えるような人じゃない。

 明日には僕に「おはよう」と言ってくれるんだ。

 ならば僕は人殺しなのだろうか。誠実な信者であり画家であるだけか。

僕は人殺しではない。一途な信者だったんだ。

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