小学校編 114時間目
※つばさ視点
「聞いたよ。あの、向井ももに教えてもらってるんだってね。それは上手くなるわ。」
大石先輩に、そう言われてから向井ももというとてつもない天才のことを知った。
音楽を少しでも嗜んでいる人なら誰でも知っているほどの天才で、ピアノやバイオリンのコンクールで賞を総なめしている。特にピアノの才能は恐ろしいほどであり、全盛期の香々美れいを彷彿とさせる。……らしい。以上、ネットの検索結果。
本当に申し訳ないんだけど、香々美れいって人すら知らなかった……。こちらも調べてみた結果、女性の天才ピアニストだが、顔出しをしていなく、その音色だけで、幾億もの人々の心を掴んできた。全盛期に突然姿を消し、それ以来誰も彼女の行方を知らない……そうだ。
突然姿を消しって、天才のすることは分からないな。
まあ俺は、凡人らしく毎日ホルンの練習に励んでいる。
ももは天才なのに練習も欠かさないからとんでもないよな。絶対に追いつくことの出来ないものって感じがする。
「はーい、みんなおはようございます!運動会終わったあとの練習でも言った通り、次はバザーの前に演奏します!夏休み中も毎日みんなで練習したから大丈夫だと思うけど、いよいよあと1ヶ月を切りました!改めて気を引き締めて頑張ろうね!」
『はい!』
「前も言ったけど、バザー前の演奏の時、ブラスバンド同窓会のみなさんも参加するから、張り切って練習してね!」
『はい!』
ブラスバンド同窓会というのは、ブラスバンド同好会のOGやOB、青葉春風小学校の保護者の皆さんがやっているものだ。
ブラスバンド同窓会の皆さんと一緒に演奏する機会は、バザー前と、定期演奏会しかない。
今回、俺にとっては初めての機会。頑張ろう。
「くおん、ホルンで合わせるぞ。」
「はい!分かりました!」
うちのブラスバンド同好会のホルンパートは全員で4人。
6から3年生まで1人ずついる。
そもそも5年生は俺らだけで、最初はたいようしか入らなくてみんなヒヤヒヤしたらしい。
それがいきなり5年になってこんなに入るんだから、驚いたとのことだ。
フルートパートは6年生が1人と5年生が2人。
フルートパートは今の中1に元々2人いたらしい。
クラリネットパートは6年生が1人、5年生が1人、4年生が3人、サックスパートは6年生が2人と4年生が3人、トランペットパートは6年生が2人と5年生が1人、4年生が2人で2年生が2人だ。
そしてトロンボーンパートは6年生が1人、4年生が2人、ユーフォニアムは6年生が1人、5年生が2人、3年生が1人、チューバはたいようだけだ。そしてパーカッションパートは6年生、まあ部長が1人、5年生が1人、4年生が1人だ。人手不足で大変といつも言っている。
なぜいきなり人数を紹介し始めたかと言うと、ここにブラスバンド同窓会の人達が加わるからだ。木管楽器はより豪華に、金管はより重厚に、パーカッションは人手不足が解消される。
全員で揃って演奏するのが今から楽しみだ。
「くおん、すごい上達したね。これなら今年のコンクールも出ればよかったね。」
「ええ!?それはまだ早いですよ。」
「そんなことないよ。結構まじで。2年から居ましたって言われても違和感ないもん。」
「なっ、褒めすぎですよ。」
大石先輩はよく俺の事を褒めてくれるけど……毎回褒めすぎなんだよな。恥ずかしいっていうか照れるっていうか……。
「くおん、この調子でバザー前も頑張ろうね。」
「はい!」
もっと、もっと上手くなりたい……!