幼なじみとドール
「結構遠いわね 蝙蝠君達がいなければ3日はかかったんじゃない?」
アヤ達は蝙蝠で移動している
まるでどこかの幽霊の少年のように
「もっとかかりますよ!蝙蝠さん達速すぎて気分が……」
少年はあまりの速さに吐き気に襲われる
馬車以上の速度なので無理もない
「蝙蝠の中で吐かないでよ この子達私の一部なんだから 吐かれたらわたしの中に吐かれる事になるし……美少女ならありだけどね……」
「気持ち悪い なんか言いました?」
「なんでもないない 所でもうすぐなの?」
「はい 後数分で!?」
少年はまわりをみて驚愕する
「どうしたの?」
「火が!!」
村の周辺は大きな山火事に襲われていた
アヤは炎を大きさをみて何かを悟ったようだったが告げず蝙蝠を急がせる
「!! 急ぐわよ! 舌噛まないように黙ってなさい!」
「村が……僕たちの村が……」
村の大半は炎に覆われもう見る陰もない状態だが村民はそれをただ見つめているだけ
絶望しているのだろうか
「この広がりよう事故とかじゃなさそうね」
「ネーナ!何があったんだ!?」
少年は幼なじみのネーナに話しかける
だがネーナの様子はどこか変であった。
村のひどい状態を見ているのに笑顔で目が赤くなっていた
「? なんでそんなに驚くのアレックス? これは儀式よ?」
「儀式? 何を言って」
「あぁ貴方まだ知らないの」
アヤは突然ネーナを蹴りとばす
その威力はネーナを吹き飛ばすほど常人なら死んでしまうだろう
突然起きた現象にアレックスは呆気にとられたがすぐにネーナの所に駆け寄ろうとするがアヤはそれを止める
「何するんです!?ネーナは僕の友達!?」
「いたい いたい いたいよぉ!!」
アレックスはネーナの方を向くと首が逆になっているのに痛みを告げる
常人なら死んでいる
そんな心配をしているアレックスを横目にネーナは首を元の方向へと戻す
「ネ、ネーナ??」
「残念だけどこの子はもう人間じゃない 吸血鬼の奴隷 ドールよ」
「人形?」
「えぇ、こうなったらもうただの吸血鬼の人形のようなもの……それも喜んで全てをささげる最高で最悪のね」
「そんななんで……」
「どうやらここには私以外の吸血鬼がいるみたいね それも最悪のゲスが 」
「なんでゲスだ」
アヤが見ている方向を見たアレックスは吐き気が襲う。
そこには乱雑に捨てられ虫がたかっている死体があった
「なんですかこれ!!うっ」
「吐いときなさい これから先はもっとひどいわよ こいつは女の奴隷が欲しいだけ
男は食事としてでもなくゴミとして捨てられる
吸血鬼の誇りも捕食者としてのルールもない最悪なやつ」
アヤは嫌悪感を露にする
自分がこの世界で受けてきた吸血鬼としての教育とは真逆
まさに悪魔のような所業
嫌悪感を覚えるのも無理はない
「ひどい言い方だね フロイライン 嫌同志よ」
「誰だ!?」
どこからともなく声が聞こえてきたアレックスは驚きながらもその声の主をさがす
「探しても無駄 蝙蝠通して喋ってるんでしょ?生身の女とも会話できないロリコン野郎」
その台詞に怒ったのか周りの少女達はアヤ達に攻撃しようとするがアヤはそれを蝙蝠達を飛ばし牽制する
「おやおやずいぶん嫌われたようだ すまないね同志 本来ならエスコートしてワインの一杯でも酌み交わしたい所なのだが今は忙しいのだよ だからとっとと帰ってくれたまえ 私も同志を殺したくはない」
「さっきから同志同志って あんたみたいなやつの仲間にされるとか心外ね 私は誇りを持ち合わせてるのよ。」
「誇り! これはこれはまだそんな骨董品を持ち合わせているロートルが居たとは ますます君と直接会えないのが残念だ」
「あら?もうお別れ?冷たいのね それとも心臓バクバクでお話出来ないのかしら童貞君?」
「私は忙しいのだよ それとそんな安い挑発に乗るぐらい私は若くないよ同志」
そうすると蝙蝠はどこかに飛んでいく アレックスは石を投げたが当たるわけもなく
「待て!」
アレックスの空虚な叫び声だけが響き渡る
「無視かよ……僕の村をこんな風にしておいて僕には一切の興味無し……許せねぇ!」
「怒りは抑えなさい それは行動を鈍らせる
一旦引くわよ」
アヤはアレックスの怒りを抑え込むように告げる。
怒りだけの行動がどういう結果を生むか知っているから
「え!?何で!?」
「逃がすと思う?」
そういってネーナは周りの少女達を呼び、アヤ達を囲む。
彼女たちの手には鎌や鍬といった農業道具が握られていた。
普通の人間なら驚異はないが彼女たちはもう普通の人間ではない十分な驚異と言えるだろう
「えぇ逃げるわ」
アヤは蝙蝠達で自分を覆い混む
ネーナ達は急いで攻撃をしかけるが思っていたより蝙蝠達の防壁は硬く強固であった。
それならとネーナ達は力を一点集中にしようと仲間を集めたがそれは過ちであった
アヤはそれを待っていた 周りにいた蝙蝠達をネーナ達がいる前方に飛ばし少しの間視界を奪うことに成功する。
その間に飛び残った蝙蝠で飛翔する
「まって!!」
ネーナは手に持った鎌を投げようとするが蝙蝠がそれを妨害するために射線上に蝙蝠が飛翔する
「チッ!邪魔な蝙蝠!!」
そういってネーナは怒りで捕まえた蝙蝠を握りつぶす。
手から血がしたたる。
「逃げられたか……」
「申し訳ありませんご主人様 」
「嫌君達に吸血鬼を捕獲できるとは元々思っていないよ 君達の任務は時間稼ぎ こいつが完成するまでのね 逃げてくれたのなら尚更良い 君達を失わずにすんだ」
そう言いながらネーナの頭を撫でる
「ご主人様♡」
(まったく使えん連中だ やはりベースが村民では限界があるか 速く完成してくれ私のフランケン)
そういって私は私の最高傑作を見つめる
もう少しだ。
もう少しで私は……
「なんで逃げたんですか!? 僕はやれたのに!」
アレックスは怒りをアヤにぶつける
「冷静になりなさい 確かにあの場はなんとかなったでしょう でもその後は?」
「それ……は」
「奴らに有効の武器も持っていないのに攻撃をしかける?ナンセンス 持久戦になって負けるのはこっちよ」
「だから逃げることは」
「逃げるのは弱さではないわ 最終的に勝てば良いの だから私達は武器を用意する」
そういってアヤは蝙蝠で銃の形を作る
「武器!! 吸血鬼にきく武器なんてあるんですか!?」
「本当は喜んじゃいけないんだろうけど今ばかりは喜べるわ さーてヤツは生きてるかしら……」
「頼みますよ!!」