百年目の家出
人は欲求には勝てない。
それは他の生物でも同じ
例えそれが人間を超越したものでも...…
「は?家を出たい?」
「えぇそうですお母様」
私はお茶をしながら母親にそう告げる。
100才の誕生日だしね
ちょうど良いだろうと考えた。
「何故? 貴方はこの家の当主 出る理由なんて無いでしょ?」
出たー お母様の当主発言
これを父上が聞いたらどう思うか……
いや、あの人怒らなさそう
「『次期』当主ですわお母様 お父様がお怒りになりますわ」
私は一応体裁を保つためそう告げる
お嬢様ってめんどくせー
「あの人は貴方に今すぐにでも譲りたいからいいのよ それで何で急にそんなことを言い出したの?今までそんな事言わなかったじゃない」
お母様第一夫人としての自覚を……
私ですら第一王女の体裁を保ってるのに
お母様はいつもこうだ。
自分を持っていると言えば聞こえはいいが
本当はただの毒舌家で言いたいことは言わなきゃすまないというなんとも面倒な人。
「本当はずっと言いたかったんです。
私、外を知りたい このまま何も知らず当主になっても笑われるだけ」
本当はハーレムを作りたいだけだけど
私は考えていた理由を伝える。
これもあながち間違いではない。
吸血鬼は今も変わらず年功序列や血統主義が続いている。
つまり純血で年齢が高い吸血鬼が尊敬される。
私の100歳なんてまだまだ赤子同然。
そんなやつが家を継いだらどう思われるか
そう笑い者だ。
それにプラス世間知らずなんて……考えただけで嫌になる。
「笑う?誰が?」
「皆よ」
「皆ってこの屋敷には女6人しか居ないじゃない」
ピエールぇ~
お母様またピエール忘れてる。
メイドさん入れて実家族のピエール入れないのどうかと毎回思う。
でもそれを指摘したらまためんどくさくなって長引きそうだからごめんピエール
「そうだけど 他の吸血鬼が見たらどう思う?この世間知らずが当主かーって」
「祖の我々にそんな事を言う奴が居たら……」
そう言って母上は爪を伸ばす。
ほらまた出たお家柄マウント
私の家の悪い所
一体何時代だって話
いや転生してるから一応あってるのか?
家から出たことないから分からない。
だから出たいというのもまた一つ。
この時代知らなすぎてオタク文化あるとか知らない。
あったら凄く損じゃない?
100年生きてて100年のオタク文化知らないつてもう化石よ?
それはさておきお母様
それ第一夫人がしていい顔じゃないです。
悪女というか悪姫の顔です。
「怖いってお母様 それに祖とか祖が一番上とかそんなのもう流行らない 今は実力社会なのよ 血統主義はもう時代遅れなの!」
「時代遅れ? これは絶対なのよ!」
そうやってお母様は私に爪で切りかかってくる。
テーブルが16分割に!!
まぁたお父様に怒られてもしらないよ。
私はそう呆れながらお母様の爪を蝙蝠でガードする。
あぶねー
蝙蝠君達が紙装甲なら死んでたわ。
「ほらお母様 まぁーたそうやってすぐ怒る。だから言いたくなかったのよ」
「そりゃあ怒るでしょ!!私達の吸血鬼の掟を侮辱したのよ!?」
「とにかく私出ていくから!!」
そういい私は蝙蝠でお母様の目の前を囲み目眩ましをしその場を後にする。
こんなDV母親と一緒に居られるか!
私は出ていく!!
「もう怒った!えぇ出ていきなさい!
掟を侮辱する子は必要ないわ!!
家は次女のローラに継がせるからもう帰ってこなくて良いわ!!」
また忘れられるピエール
貴方の実子ですよね?
次女ローラは第二夫人の娘ですよね?
普通逆だと毎回思うのだけど
流石今回もスルーすると可哀想だし私はお母様に反論する。
「長男のピエールじゃないの!?
泣いてるわよピエール……」
「本当に出ていくのですか?サーニャ様は立場もありあぁ言っただけで本心では分かって」
「えぇ分かってる 私を肯定したらお父様が許さないものね」
本当はお母様も分かっているのだろう。
だからピエールを当主に上げなかったのだと
そう信じたい。
「それは……」
「そういうところも時代遅れ まぁ、お父様だから仕方ないけど……それに私は本当に外を見たいの」
父は本当に時代遅れで誰とでも子供作っちゃうし自分が一番上だと思ってる。
そんな親に育てられたら時代遅れの娘達が産まれるわけでだから私は外でこの世界を勉強したい
後ハーレムを作りたい
「何か探し物でも?」
レイラは騙せないか……私はある答えを求めている。
言ってしまえばハーレムなんておまけだ。
ほんとだよ?
「分かっちゃう?流石レイラ 私と貴方の仲ですものね」
流石私の幼なじみ。
何でも分かっちゃう
「お嬢様!」
レイラは幼なじみと頑なに認めようとしない。
立場もあるのだろう
それに恥ずかしがりやだしね
「そういう所かわいくて好きよ レイラ」
「からかわないでください!!」
そういってレイラは顔を赤くする
こういった表情をコロコロ変えてくれるのはレイラだけと言うのもあってからかってしまう。
「本心なのに……後フローレの事お願いね」
私の唯一の心残り
病弱な妹のフローレを置いていってしまっていいのか……
だが答えを得る旅の邪魔となると考えてしまうのは私の悪いところか。
悪いお姉ちゃんでごめんなさい
「……意地悪ですね。私が本当はついていきたいと分かっているのに妹様をお出しして」
「そっちの方が吸血鬼らしいでしょ?」
そういって笑う。
意地悪で結構それが吸血鬼だ
「えぇ 最近教会の吸血鬼狩りの噂をよく聞きます。どうぞご無事で」
「私が教会ごときにやられると思う?」
そうやって私は虚勢を張る。
本当は怖い
吸血鬼の天敵と教え込まれてきた教会
お父様曰く脆弱な奴ららしいがお父様は信用できない。
だがここで怖いと言ってしまえば二度と外には出してもらえないだろう。
「そうですね……お嬢様は殺しても死なない方ですから」
「ひどーい それじゃあまた」
本当はレイラは私が怖がっているのを分かっているのだろう。
だが私の答えのため背中を押してくれる
なんて優しい従者で幼なじみなのか
この家に産まれてよかったと思える数少ないことの一つ
「えぇお待ちしております」
そういって彼女は扉を開けてくれる。
さぁいくか
私はこの世界に来て初めの一歩踏み出す。
「行きましたか?」
夫人がそういいながら二階の階段から降りてくる。
いつもはこの時間は日課の薔薇を愛でているのに本当にこの人も素直じゃない。
流石アヤのお母様。
「夫人!!お見送りは良かったのですか?」
「私が大手を降って送り出すわけには行かないでしょ?あの人に知られたらなんと言われるか」
「そうですね……」
ご当主様が知ったらどう思うか……火の海かな
「それにしても答えねぇ……そんなものを求めるために旅に出るとか誰に似たのかしら」
「夫人も若い頃は沢山冒険したって聞きましたよ?」
「私とあの娘は違うわ 私のはただの暇潰しあの娘のは修行に近いわね」
「どういう?」
私は夫人の言葉の意味を聞こうとしたら二階からナルラ様が降りていらっしゃる。
寝間着に羊のぬいぐるみ
ならいつもの起床後の日課のイタズラだろう。
「ママー アヤお姉様襲おうと思ったけど居なくてお姉様は?」
「あらナルラ お姉様を襲おうとしちゃ駄目じゃない
襲うならピエールにしなさい。」
ピエール様なら襲ってもいいのかと少し呆れるがいつもの事だ。
夫人はピエール様をスケープゴートにしがちだ
「はーい それでアヤお姉様は?」
「おでかけよ」
「すぐ帰ってくる?」
「お姉様が心配なの?」
「違う!!お姉様が居ないとピエール兄さんだけにしかイタズラ出来なくてつまんないから!!」
そう言いながらぬいぐるみの羊を振り回す
ぬいぐるみの羊の手が千切れそうだが何故か千切れない。
毎回不思議に思うのだが特別な素材が使われているのかナルラ様の力なのか
メイドの私には分からない。
「あらあら言い訳しちゃって、それと言葉遣い。貴方も第五令嬢としての自覚を持ちなさい。」
「自覚を持てって言われても第五じゃなぁ
それに家を継ぐのはアヤお姉様だし」
まぁそう思うのも無理はないだろう。
「そんなこと言わない お父様に言いつけちゃうわよ」
「それはやめて!!ごめん!!いやごめんなさい」
そう言って頭を下げる
やはりご当主様は誰からしても怖いのだろう。
一番の問題児のナルラ様ですらこうなのだから
「それでよし アヤお姉様がいつ帰ってくるかって話だったわよね?……長くなりそうねー」
「えぇー」
長くなると聞いたナルラ様は少し落ち込んで見えたやはりこの姉妹は皆家族好きだと再認識できる。
「やっぱり寂しいんじゃない かわいい アヤお姉様が居ない間フローレの面倒は誰が見るのかしらー 見たらアヤお姉様褒めてくれるだろうなぁ」
「しょ、しょうがないなー 姉を支えるのは妹の務めだし?私がみてやっても」
ナルラ様はぬいぐるみをギューっと抱きながらそう小さな声で呟く
かわいい
仕えているお嬢様でなければ抱きついて撫でて上げたい
「あら本当? ならレイラ お薬渡して上げて」
「はいかしこまりました夫人 こちらですナルラ様」
そう言って私はナルラ様を薬の保管場所まで案内する。
「……無事に帰りなさいよ アヤ」
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