はじめの料理
急遽、料理を教えることになったがうまく教えることができるのだろうか。
7月27日
俺はマエダさんに料理を教えるため、食材を用意しに10時に家を出た。色々考えつつ、豆腐にネギ、味噌、それだけでは寂しいかなと思い安売りしていた鮭の切り身を買った。一度家に戻り、いつも自分が使っている調味料を集めていると「今日はヨシキが料理するの?」と姉ちゃんが後ろからニヤニヤした顔で話しかけてきた。
ヨシキ「違うよ、今から友達に料理教えに行くんだよ」そう返すと少し寂しがりながら「そうなのか...行ってらっしゃい」と言って、トボトボと自分の部屋に戻って行った。うちは俺が料理するのが好きなので週に一回料理を作っている。姉ちゃんはその料理が好きなので落ち込んだのだろう。(明日は姉ちゃんの好きなハンバーグでも作るか)と思いながら準備を進めた。
準備も終わり、マエダさんの家に向かった。家のインターホンを鳴らして少しするとマエダさんが「はーい」と言ってドアを開けた。起きたばかりなのか少し寝癖がたっていた。
ヨシキ「料理教えにきました」
マエダ「おはようヨシキくんどうぞ入って入って」
そう言われ「お邪魔します」と言い家に入った。(寝癖には気づいてないらしい)うちとは違い現代風な家で平家である。いつも綺麗にしてるのが一目でわかる。マエダさんに案内され台所に行くとそこもしっかり整頓されていて作業しやすくなっていた。調味料のある場所も邪魔にならず取りやすい位置で、冷蔵庫も食材が取りやすい位置で入り口近いためすぐに冷蔵庫にいれやすくなっている。理想的な台所である。
ヨシキ「しっかり整頓されてていい感じの広さですね」
マエダ「そうなの?私からすると何がどこにあるかわからないけどな」
ヨシキ「さて、始めますか」
そう言い、カバンに入っていた食材と調味料、いつも使っている包丁を取り出し、エプロンをつけた。
マエダ「食材まで買ってきてくれたの、何から何までありがとう」と頭を下げた。
ヨシキ「台所を使わせてもらってるし気にしないで」
マエダ「もし足りないものがあったらお母さんに許可もらってるから冷蔵庫の食べ物とこのフライパンとか好きに使っていいよ」
ヨシキ「ありがとう。じゃあ、冷蔵庫の中見させてもらってもいいかな?」
マエダ「うん」
冷蔵庫を開けるとタッパーに入った昨日残り物や、納豆、乳製品、きのこなどの食材が入っていて自分の家と変わらない冷蔵庫であった。まあ、うちは一番上の段にそうめんがぎっしりだが。次に野菜庫を開けると、玉ねぎ、にんじんがあり、大量のロング缶生ビールが入っていた.....俺は玉ねぎとにんじんを取り、そっと冷蔵庫を閉め、見なかったことにした。
ヨシキ「さて、まずはお米を炊きましょう」
マエダ「はい」
ヨシキ「お米は家から持ってきたから量は2合分だね」
マエダ「質問です」
ヨシキ「どうぞ」
マエダ「2合ってどのくらい?」と少し恥ずかしそうに話した。
ヨシキ「大体360gかな」
そう返すとマエダさんは「なるほど」と言いメモをした。
ヨシキ「そしたらお米を洗いましょう」
マエダ「それはできる!小学校の時にやったから」と言い洗い始めた。たどたどしい感じではあったがやり方は間違っていなかったので見守った。
マエダ「で、これをこの中に入れて、水を入れるんだよね」
ヨシキ「そうだよ、入れる量は2って書いてあるところまでだね」
マエダ「わかった」と言いうと慎重に水を入れ始めた。マエダさんを見ていると小さい頃の自分みたいで微笑ましい。
マエダ「入れたよ」
ヨシキ「そしたら炊飯器の中に入れて、開始ってボタン押せば準備完了」
マエダ「はい」
ヨシキ「そしたら待ってる間に本題の味噌汁作りましょう」
マエダ「はーい」
自分は近くのまな板を2枚用意し、台の上に準備してあった深型フライパンを取り、IHコンロの上に置いた。
ヨシキ「まずは食材を切っていこうか、今回はネギと豆腐とジャガイモにしよう」
マエダ「大丈夫かな、ちゃんと切れるかな」
ヨシキ「大丈夫危なくない切りかた教えるから」
すると、マエダさんは「わかった」と言い、恐る恐る包丁を手にした。
俺は「まず皮をピーラーで剥くから包丁は危なくないところに置いといてね」と笑顔で言った。それに対し少し頬を赤くして「わかった」と言い包丁を置いた。マエダさんにピーラーの使い方を教えると「こんな便利なものがあるのか...」と感心しながら皮を全部剥きおえた。
ヨシキ「そしたら、半分に切るのは少し危ないから自分がやるね」そう言い皮を剥いたジャガイモを半分に切った。
マエダ「さすが、なんかすごい慣れてる手つき、怖くないの?」
ヨシキ「ちゃんとした切りかたすれば危なくないし慣れると怖くなくなるよ、じゃあ切っていきましょう、まずは包丁を握って」そう言うと、マエダさんは力強く包丁を握った。
俺は「あ、あのーそんな力強く握ると逆に切りにくくなるよ...」と言いうとマエダさんは「そうなの?大丈夫かな、包丁落ちたりしない?」と言いながらこちらを向いた。こちらからすると今にも刺されそうで怖いのだが...まあ、初めてなので仕方ないのだろう。
ヨシキ「大丈夫ですよ、包丁は生き物じゃないので」そう言うとマエダさんはクスッと笑い「そうだよね」と答えた。
かわいっ...それはそうと緊張が少しほぐれ無駄な力も抜けたので続けることにした。
ヨシキ「まずは、半分に切ってみようか。体を少し斜めにして、逆の手は丸めて猫手みたいにして」
マエダ「こう?」
ヨシキ「そう、そしたら包丁の腹の部分を左手に近づける...こんな感じで」
マエダ「こ、こうかな...きれないよね?」と少し不安そうな声で話した。
ヨシキ「大丈夫、手よりも高い位置にあげなかったらきれないから」
マエダ「うん...」
ヨシキ「そしたら、包丁を下斜めに押しながら切る」
マエダ「下斜めに押しながら...き、切れた...」
その後も、怖がりながらもしっかり自分の言う通り切れている。
マエダ「...全部切れた...少し怖くなくなったかも」
ヨシキ「それはよかった、じゃあ次はネギを切ってみようか」そう言ってネギを切り始めた。
その間に俺は教えながら別の料理のため、にんじんと玉ねぎを切り始めた。
マエダ「できた!こんな感じでいいかな?」
ヨシキ「うん、ばっちり。次は湯を沸かしましょう」
マエダ「水を入れればいいんだね」
ヨシキ「うん、大体この辺まで」
マエダ「はい」
ヨシキ「そしたら火は強火にして、蓋を閉めてください」と言いうとマエダさんは「強火は.....マックスか...」と言ってIHの電源をつけた。俺は「マックスじゃなくても大丈夫だよ、これだとここの数字が7とか6くらいでおっけいだよ」と慌て言うと。マエダ「え、そうなの。電源ポットでしかお湯沸かしたことなかったから」と照れながら答えた。それから、豆腐を手のひらで切って「大丈夫!?」と心配されつつ具材を入れ、少し経ち、味噌を入れることにした。
ヨシキ「今回はこの出汁入り味噌を使います」
マエダ「出汁入り味噌?」
ヨシキ「本来ならカツオ節で出汁を取ったり、市販で売ってるだしの素入れるんだけど、その過程を飛ばせる便利なものなんだよ」そう言うとマエダさんは驚いた顔で「水に味噌溶かしただけじゃダメなのか...だからお母さんいつも変な粉入れてたんだ...」と言った。驚くとこそこなのか、と思いつつ料理を続けた。
ヨシキ「そしたらおたまで味噌をとって」
マエダ「うん」
ヨシキ「中で味噌を溶いてあげれば...」
マエダ「できたー!」
味噌汁が完成した。
マエダ「ありがとうヨシキくん」
ヨシキ「どういたしまして」
するとマエダさんは俺の切っていた玉ねぎとにんじんを見て首を傾げ「あれ?玉ねぎとにんじんはつかわないの?」と質問してきた。
ヨシキ「実はもう一品作ろうと思ってね。難しいそうに見えて簡単なやつ」
マエダ「私でも作れる?」
ヨシキ「うん、色々アレンジできるし、そういえばきのこは食べられるっけ?」
マエダ「うん、食べられるけど?」
ヨシキ「では今から鮭のホイル焼きを作ります」と言うとマエダさんは「鮭のホイル焼き....?!」と雷に打たれたかのように驚いた。
マエダ「そんなおしゃれそうなのできちゃうの?!」
ヨシキ「できるよ、じゃあやってこうか」
そう言いフライパンをIHの上に置いた。
ヨシキ「まず、このフライパンの上にアルミホイルをしきましょう」
マエダ「アルミホイル場所はわかるよ、よく1人の時に冷凍ピザ焼くから.....えーっと、これでいい?」
ヨシキ「そう、そしたら切った玉ねぎと、にんじんをしきます」
マエダ「うんうん」
ヨシキ「その上に鮭ときのこをのせ、バター入れます。バターの量は好きな量で。そしたら、この調理酒ってやつと醤油を少し垂らして、包んでください」
マエダ「こんな感じ?」
ヨシキ「そう、そしたらフライパンの周りに水を50ml入れます」
マエダ「アルミホイルの周りに入れるの?」
ヨシキ「そう、そしたら蓋を閉めて、弱火だから2か3くらいの火力で15分くらい温めるだけ」
マエダ「それだけ?」
ヨシキ「それだけ」
すると、マエダさんは少し心配な顔でフライパンを眺めた。
それから15分ほど経ち、お皿や茶椀を出して、食べる準備をした。
料理が食卓に並び2人で「いただきます」と言い食べ始めた。
ヨシキ「アルミホイルは暑いから気をつけてあけてね」マエダさんは「うん」と言い、アルミホイルを開けた。
マエダ「うわぁ、バターのいい香り、じゃあ一口いただきます」
すると、マエダさんの頬が緩み笑顔で「美味し〜」と言った。それを見て俺も笑顔で「それは良かった」と話した。マエダさんは次に味噌汁を手に取った。マエダさんは「味噌汁も美味しいし、自分で初めて作ったとは思えないよ。今日は本当にありがとうヨシキくん」と嬉しいそうに食べながら話した。その嬉しそうな顔を見て俺は「どう、1人でも作れそう?」と聞くと「うん!できそうかも、ありがとう!」と満面な笑顔で答えてくれた。その顔を見て幸せな気持ちになり、マエダさんのそうゆう純粋で周りを明るくさせる部分に心を許したのだろうと感じた。それから30分ほどお互いの親の話などをしながら2人とも食べ終えた。
マエダ「今日は本当にありがとう。これでお母さんに料理作ってあげれそう」
ヨシキ「もしわからなかったら連絡してね」
マエダ「うん、ありがとう.....また違う料理教えてもらってもいいかな。今日楽しかったから」
(その答えにイエス以外の選択肢はあるのか。いやないだろ)
ヨシキ「もちろん、喜んで」
マエダ「今度はユリちゃんとかも呼ぼうね」
ヨシキ「だね」
それから残ったご飯の保存の仕方を教えてマエダさんの家を後にした。
家に帰ると姉ちゃんがこちらをじーっと見つめてきた。俺が「明日ハンバーグ作るから買い物行かない」と言うと「今から準備するね!」と嬉しそうに答えた。
読んでいただきありがとうございます。これからも頑張って続けていきます。見ていて楽しいと思っていただけると嬉しいです。