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子は親に似る

8月6日

 蒸し暑い中、9時に目を覚まし、一度シャワーを浴びた。昨日のうちに準備は済ましてあるので家を出る時間までリビングでぼーっとしながらテレビを見ていた。するとマエダさんから電話がかかってきた。

 ヨシキ「もしもし」

 マエダ「もしもしヨシキくん?もしかして起こしちゃったかなごめんね急に」

ほうけていたので寝起きっぽい声になっていたらしい。

 ヨシキ「大丈夫、30分前に起きてるから。それでどうしたの?」

 マエダ「あのね、実は今日お母さんが仕事のはずだったんだけど休みになったらしくて、一緒に料理したいって言ってるんだけど、大丈夫かな」

そう申し訳なさそうに話した。俺は「うん、全然平気だよ」そう返すと「ありがとう、じゃあまた後で」と言い電話を切った。親御さんもいるなら手ぶらで行くのも失礼かなと思い、早めに家を出ていつものスーパーに行くことにした。

 11時にスーパーに入るとタナカさんが品出しをしていた。

 タナカ「いらっしゃいませ、っておお、ヨシキくんか」

 ヨシキ「こんにちは」

 タナカ「今日はなに買いに来たんだ?」

 ヨシキ「友達の家に行くので手みあげを買いに」

そう言うとタナカさんは「律儀だねー、俺なんて買ったこともないよ」と笑いながら話した。なんともタナカさんらしい。

 タケシ「まあ、ゆっくり見てってくれ」

 ヨシキ「はい、そうします」

そう言っておつまみコーナーに向かった。マエダさんのお母さんはお酒好きらしく、ほぼ毎日飲んでいるらしい。なので、おつまみを手みあげにすることにした。缶缶入りのクッキーなども考えたが、変に気を使わせてしまうかもしれないので少し馴染みのあるものを選んだ。

 ヨシキ「えーっと、確か台所にはミックスナッツとするめいかがあったっけ...」

独り言を漏らながら大入り袋に入ったミックスナッツとするめいかの干物を買い物カゴに入れた。タナカさんに「渋いチョイスだね」と言われながら会計を済ませてマエダさんの家に向かった。

 マエダさんの家前に到着し、チャイムを鳴らすと、高身長で髪は茶髪ポニーテールをしており、目がマエダさんに似ている人が家から出てきた。俺は「マエダさんに料理を教えにきたヨシキと言います」と挨拶をした。すると「君が娘に料理教えてくれてるヨシキくんか、母親のクルスだ、今日はよろしくね」と元気よく答えた。

 ヨシキ「こちらこそ今日はお邪魔させていただきます。あとこれ、咄嗟に買ったのであまり良いものではありませんがよかったらどうぞ」

 クルス「ありがといただくね。さ、どうぞ上がって」

 ヨシキ「はい失礼します」

そう言い家に上がった。台所に向かうとマエダさんが待っており、すでにいつものイルカがプリントされているエプロンを身につけて待っていた。

 マエダ「ヨシキ先生、今日もよろしくお願いします」

 ヨシキ「うん、じゃあ早速始めようか。今回はクルスさんも一緒ですよね」

 クルス「うん、娘と一緒で私も料理得意じゃないからねっ!ついでに教わろうと思って」と笑顔で答えた...がなんか含みのある言い方をしている。

 ヨシキ「そしたらまずは食材を洗って切っていきましょう」

と言いながら荷物を置いて手を洗い始めた。すると、マエダさんは「はーい、見ててねお母さん成長した私の姿」と言って包丁を持った。それに対し「お手並み拝見」と腕組みをしながら言った。

 ヨシキ「じゃあまずはきゅうりから切っていきましょう。きゅうりはまず薄く斜めに切っていきます。こんな感じで」そう言って2人に手本を見せた。マエダさんは俺の切り方を見てゆっくり切り始めた。

 マエダ「斜めに..斜めに..こんな感じで?」

 ヨシキ「うん、その調子で。そしたら、その切ったやつを大体でいいんで固めて細く切っていきましょう。その間にクルスさんはハムの方を切っていただいてもよろしいですか」

 クルス「うんわかった」

そう言って冷蔵庫からハムを取り出し、1枚1枚剥がしてから切ろうとしていたので「くっついたまま切って大丈夫ですよ。乗っける時に手で崩しながら乗っければいいので」と伝えると「わかったよ」と言ってハムを切り始めた。きゅうりは数を多めにしているので俺もマエダを手伝った。

 マエダ「出来たー!どうよお母さん」

 クルス「うん!包丁すら持つの怖がってたのにすごいね」と感心していた。

 マエダ「でしょー...っていうかきゅうり多いね」

 ヨシキ「うん、そこが今日のポイントだからね」

 マエダ「そうなの?」

 ヨシキ「今回作るのは冷やし中華風そうめんです」

そう言うと2人とも雷が落ちたかのように「冷やし中華風だと...!」と言った。そんな衝撃を受けることだっただろうか。

 クルス「確かにうちでは普通に麺を食べる時中華麺にしてるし、そうめんの方がいいね」そう言ったそばからクルスさんは首を傾げた。

 クルス「しかし、そうめんも粉物だし、糖質とか高いのでは?」

マエダさんも「確かに」と言って首を傾げた。やはり家族で似ているようだ。

 ヨシキ「そのための大量のきゅうりです。もちろんきゅうり以外にもオクラとかの他の野菜でかさましするのでもOKです。今回はトマトも加えます」

そう言うとマエダさんとクルスさんは「なるほど」と頷いた。それからトマトも切り、錦糸卵(きんしたまご)を作ることにした。

 ヨシキ「まずはフライパンを少し弱めの中火で温めます。その間に卵をといて、塩を一掴みくらい入れます。温まったら油を全体に塗って、といた卵を少しいれます。」

 マエダ・クルス「ふんふん」

 ヨシキ「そしたら、軽く箸で混ぜてあげましょう。やりすぎると破れたりするので気をつけながら、まあ多少破れても最後に切ってしまうので大丈夫です.....うん、これくらいに固まったら、火を止めます。もし焦がしたくなかったら少し水っけが残ってる状態で火を切って、蓋をして余熱で火を通すのがおすすめですね。その方が熱も冷めて後で切りやすいので」

 マエダ・クルス「う、うん...」

そう長々と説明をしていると、2人ともどんどん難し顔をし始めた。やはり少し難しいのだろう。そう思い「これより簡単な方法ありますけど」と言うと2人とも目を光らせて「ぜひその方法で!」と言った。

 ヨシキ「わかりました、そしたら少し大きめの耐熱皿とラップはありますか?」

 マエダ「これでいいかな?」

 ヨシキ「うん、そしたらまず、卵をといて...」

そう言おうとした時にクルスさんが「先生!卵をしっかり混ぜるコツが知りたい」と元気よく手を上げた。それに対し「わかりましたお教えします」と言って説明を始めた。

 ヨシキ「コツは混ぜるのではなくて卵を切るイメージです」

 マエダ「卵を切る?」

 ヨシキ「箸を回すんじゃなく、左右に線を描くように...こんな感じで」とゆっくりと実演した。俺は続けて「その時に少しだけ箸を浮かせて空気を入れてあげるといいです。こんな感じで」と言うとクルスさんは「なるほど」と言いながら頷いていた。それから2人とも俺の真似をしながら卵をといた。

 マエダ「出来たー!それで次は?」

 ヨシキ「ラップをお皿に敷いてそこに卵を入れます。あとはレンジのここの数字が600で1分半くらい温めるだけ」

そう言うと2人とも少し恐怖を感じながら驚いた。

 マエダ「ダメだよヨシキくん!爆破しちゃう!」

 クルス「そうよ!それだけはダメよヨシキくん、経験者は語るって奴だから!」

多分仲がいいんだろうなこの2人は...と言うか一度卵を爆発させた事あるのか...俺はそんな2人に丁寧に説明を始めた。

 ヨシキ「大丈夫です、卵が爆発するのは黄身の部分が膨張して破裂しちゃうだけだから混ぜてしまえば大丈夫だよ」

 マエダ「そ、そうなんだ...」

 クルス「た、確かによく考えてみれば...」

そう言いながら恐る恐るレンジにとき卵を入れた。卵が温まり、出来上がりを見るとしっかり火が通っている。その様子を見て2人とも感動していた。それから卵の切り方を教え、そうめんは水ですぐ解せるものを買っていたので後は盛り付けるのみである。

 ヨシキ「そしたら最後に盛り付けましょう。まず、氷を5つほど入れて、その上にそうめんを入れる。後はきゅうりやハムをたくさん乗っけて上から麺つゆをかけて...完成です」

 マエダ「できたー!」

クルス「美味しそう!」

そう言いながらマエダさんとクルスさんはハイタッチをしていた。何というか2人を見ていると微笑ましい。

 クルス「何から何までありがとうヨシキくん」

 ヨシキ「どういたしまして、さあ麺が伸びないうちに食べましょう」

 マエダ「うん」

そう言って3人で食べ始めた。

 クルス「うん、美味しいし簡単だしこれいいかも」

 マエダ「だね、今度はオクラ入れてみようよ」

 クルス「そうね」

 ヨシキ「アレンジは色々出来ますし、夏の健康管理に結構いいですよ。後は適度な運動ですね」と俺が言うとマエダさんは食べる手が止まった。俺が「どうしたの?」と聞くと、少し顔を赤くして「何でもない、ちょっとお手洗いいくね」と言いリビングを出た。もしかして心当たりでもあったのか。そんなことを考えているとクルスさんが話しかけてきた。

 クルス「今日は急にごめんね」

 ヨシキ「いえ、自分も楽しくやれたので大丈夫です」

そう笑顔で答えるとクルスさんは少し真面目な顔で話し始めた。それを見て俺は箸を置き、姿勢を正した。

クルス「ちょっと心配だったの。だって男の子に料理教わってるなんて知らなかったし」

そう言われて、確かにそこの配慮が足りていなかったと思った。親からしたら娘が知らない男と2人っきりなのだから心配だっただろう。だから今回参加したのかも知れない。

 ヨシキ「すみません...」

 クルス「謝らないで、多分あの子が急に言い出したことだろうし。そうゆうところ私に似て鈍感なの。でも安心した、ヨシキくんみたいにしっかりした人だから」

マエダさんに似て明るく少し抜けているところがあるけど娘の話になると立派な母親に見えた。

 クルス「これからも娘と仲良くしてあげてね」

 ヨシキ「はい」

そう返事をするとクルスさんは先ほどの笑顔にもどり「なんか堅苦しい話は私には合わないな」と言った。

そんな話をしているとマエダさんがリビングに入ってきた。

 マエダ「何話してたの」

 クルス「料理の話だよ」

 マエダ「なるほど、あ!そういえば手土産までもらっちゃってありがとうね」

 ヨシキ「うん」

その後も食べながらクルスさんの料理失敗エピソードなどを聞き、楽しい時間を過ごした。

 明るい気分で帰り道を歩きながら明日の料理を何するか考えていた。その時、明日が8月7日であることに気づきふと、少し昔のことを思い出した。


.....そうだ明日はおにぎりにしよう。


最後まで読んでいただきありがとうございます。書き溜めていた物に少し追いつきそうで更新のペースが落ちてしまうかもしれませんが、楽しみに待っていただいたら幸いです。

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