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99.私と安菜だけの誓い

 うさぎの主君として、副パイロットとしてずっと支えてくれた安菜が、今回で離脱します

 そしていよいよ!

 全ての元凶である閻魔 文華がやって来ました!

 はーちゃんの光は、激しすぎた。

 とっさに目を両腕でかばうしかなかった。

 不思議と、熱も、音も、衝撃さえない。

 ただ、光が消えるまでの間に、たしかに聞いたんだ。

『これにて、おさらばです』

 はーちゃんの最後の声が。

 

 声と光が消えると、また夜につつまれた。

 焦りながら、やっと目がなれてきた。

 ボルケーナ女神像は、消えていた。

 ウイークエンダーは、コントロールが戻ってる。

 私が最後にだした操作にしたがって、膝をついていく。


 私はかけ戻る。

 安菜も一緒についてきた。

 だけど。

「安菜、これ持って避難して! 」

 炊き出しの袋を、押し付けた。

 それを安菜は押し返して。

「はーちゃん関連の指示をだすのは私だよ。

 避難してほしいなら、まずコクピットの様子を見て! 」

 そうなのかな?

 まあ、反論するのもめんどくさかったから、それにしたがう。

 スマホは、今度はちゃんと使えた。

 これで、監視カメラの映像が見れる。

 コクピットは、真っ白だった。

「はーちゃんが燃えてる! 」

 熱源探知に切り替えると、いちばん熱い所が見えた。

 白いのは、煙なんだ!

「他の部分は、自動検査がすむまで、まだ・・・・・・」

 また焦ってしまう。

 検査はまだかかる。

 これまでの戦いで壊れた部分が、律儀に表示されていく。

 画面に目を走らせるけど、もどかしい。

 表示が端から、下に流れてく。


「一番重要な操作は、はーちゃんがやったはず」

 おびえる声で言われた。

 安菜から。

「その煙は、操作の負荷に耐えられなかったからだと思う」 

 そっ、それは、考えられる事だけど。

「うさぎ、はーちゃんを緊急脱出させて」

 お願いと一緒に、銀の鎖につながれた黒い宝石。

 メガ・エニシング・キュア・キャプチャーのネックレスをわたされた。


「いきなり何言うの!? 」

 でも、安菜は止まらない。

「放棄、と言って良い」

 私は、その言葉の冷たさに逆らった。

「放棄だなんてそんな! 」

 初めて合った、地下の研究室。

 あそこで聞いた笑い声が忘れられない。

 あれが、私たちと同じ心を持つ証拠だと思ってた。

 でも。

「はーちゃんは、破滅の鎧として、AIとして、ゲコンツ星のために働く使命に全てを使ったの。

 私たちに都合の良い事をする義理なんか無いの」

 ・・・・・・私より良く見てるじゃない。

 何て事。

 でも。

「でも、まだ助かるかもしれないのに! 」

「早く乗りなさい! 

 次の相手は閻魔 文華なんだよ! 」

 怒鳴られた。

「私が逃げるのを援護して! 」

 その言葉は、たしかに冷静だった。

 だけど、その表情は、本当につらくて、泣き顔で。


 ああ、まただ。

 なんで私は、安菜みたいな冷静な判断ができないんだろう。 

「百万山神社までは、なんとしてでも逃げてよ」

 それしか言う事は、ないじゃない。

 安菜はうなづいて、ポケットから懐中電灯を取りだした。

 私は反対を、ウイークエンダーを目指して走りだす。

 足音が離れていく。


 辺りのハンターキラーたちも、動きだした。

 危ないかもしれないから、道の端に立ち止まる。


 ・・・・・・早く、連絡をいれないと。

「こちらウイークエンダー・ラビットの、佐竹 うさぎ。

 これより、ウイークエンダーから不要な機材を放棄します。

 回収は必要ありません」

 もう一回、復唱。


 次はスマホで遠隔操作。

 はーちゃんを席ごと、ロケットではじきだすんだ。

 本当なら緊急脱出に使われるレールに乗って、ウイークエンダーの背中から煙と、はーちゃんの席が飛びだした。

 戻ってきた街の灯で、パラシュートが開くのがうっすら見えた。


 それが終わったら、走るだけ。

 乗り込んだら、あの閻魔 文華と向き合わなくてはならない。

 パーフェクト朱墨が、ブロッサム・ニンジャが、ディメイション・フルムーンが動いてる。

 家の影で見えないけど、七星も同じだろう。


 なのに、私に浮かぶのは後悔だけだよ。

 幼い頃、私たち二人だけで誓った。

 世界中の誰も得も損もしない主君と騎士になった。


 だからこれは、今の私だけの後悔。

 また、安菜に重要な判断をさせて、泣かせてる。

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