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94.こぼれる勇気

 体の奥底から、嫌なモノがこみ上げてくる。

 ああ、まただ。

 戦いの時の恐怖がよみがえったんだ。

 しかも、スラッグヴォンズやショックダイルの時より怖いよ。

 リッチーさんの宣言のせいだよ!

「うっうっ。うぇああ」

 こみ上げたモノ、意味が通じない泣き声がもれちゃう。

「あんた、泣くほどイヤなの? 」

 安菜、当たり前だよ。

 ・・・・・・返事ができない。

 漏れるのは泣き声だけ。

 リッチーさんの言う通りなら、これからの戦いには、暗号世界の貴族たちが介入するってことだよ。

 あの人たちは自分で自分の運命を決める人たちだ。

 ランニュウ。

 そう、乱入。

 自分たちの力を示すためなら、いくらでも乱入するだろう。

 そんな人たちを、よけながら戦う。

 できるわけがない。

 命の保証なんてできない。

 そう考えるだけで、また嫌な叫びがこぼれてしまう。

「ちょっと! うさぎ! 」

 返事なんか、まだできない。


 そしたら安菜が。

「ちょっと!

 リッチーとやら! 

私は安菜 デ トラムクール トロワグロ!

 このウイークエンダー・ラビットのパイロット、佐竹 うさぎの主君です! 」

 外部スピーカーで、がなりたてた。

「あなたが"この世界のために戦う"と、それと"他の生産者"も同じようなことを考えているだろう"とおっしゃってから、うちのうさぎが泣き止まないんですけど!? 」

 私の主君は、こんな時でも察してくれた。

 でもやめて!

 はずかしい!

 一緒に、私の泣き声もスピーカーで広がってる!

 でもその言葉さえ、泣き声にさえぎられて言えない。


『お初にお目にかかります。

 トロワグロさん』

 それに対するリッチーさんは、前とは違う。

『あなた方の心配は、理解しています。

 指揮系統が違う戦力がひとつの戦場に集まっても、混乱するだけ、と言うわけですね』

 すごく堂々としてる。

『しかしながら、それは過剰な心配なのです。

 怪獣を少数や単体で狩ることのできる者は存在します。

 彼らを狩りの中心にすえることで、全体の犠牲を減らすことができるのです』


 安菜が言い返す。

「私に言わせれば、この世界にいる人全てが弱者です。

 地球のハンターキラーだって、それなりの力があります。

 その戦いに巻き込まれれば、命の保証はできません!

 そんなジャマになることをすると断言したのが問題なのです!

 この事は覚えておいてくださいよ」

 

 言いたいことだけ言って、安菜はスピーカーを切った。

 ・・・・・・これも交渉術と言うのだろうか。


「安菜さん。

 リッチーさんたちが介入したとして、本当に妨害となるのでしょうか? 」

 はーちゃんが話しかけた。

「むしろ、協調するのではないでしょうか?

 暗号世界のハンターとプロゥォカトルがであった場合、暗号世界のハンターは士気を上げます」

「それは当然でしょ! 」


 え?

 はーちゃんと安菜が"当然"と思うこと?

「・・・・・・本当かなぁ」 

 ようやく言葉をだせた。

 泣き叫ぶのにエネルギーを使ったからかな。

「「本当です」」

「なんだっけ」

 安菜は考えて。

「ほら、狩り場で会ったらキャリアが上の魔法使いでも、お偉い女王さまでも、最近じゃイヌネコからも先に敬礼されるって言ってたじゃない」 

 それは・・・・・・そんなこともあったけど。 

 頼りにされてるってこと、だよね。

 そこから最初に思いだしたのは、朱墨ちゃんとアーリンくんだった。

 グロリオススメでの、困り果てたかわいそうな顔。


 その時、連絡が来た。

「あ、朱墨ちゃんからだ」

『こちら、ファントム・ショットゲーマー。

 あの、九尾 九尾から意見具申? があるそうです。

 いいですか? 』

 

 なんとなく元気がでてきたかも。

「いいですよ」

『お電話、変わりました。  

 九尾 九尾です』

 あの、パーフェクト朱墨の肩に乗っていた朱墨ちゃんのおばさんだ。

『私はさっきの安菜さんの話に大体賛成です。

 ですが、異能力者がワガママだと思われるのは嫌です。

 そこで、やってみたいことがあるんです』

 それは、何をするんですか?

『あのポルタからでてきた人たちには、堤防の上にならんでもらいます。

 まずは、破壊された私たちの街を見てもらいます。

 そしたら、新しい力を見てもらいます』   

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