8.お、終わったぁ
「お、終わったぁ」
熱いため息がでる。
そしてやっとの思いで立ちあがったの。
席から立ちあがるだけでも、体重が何倍にもなったみたい。
体重が倍に感じるなんて、ウイークエンダーの加速でいくらでもあるけど、この重さは何だろう。
でもえらいぞ、佐竹 うさぎ!
VTRの後にも、いろんな人からいろんな意見をもとめられた。
途中トチることはあったけど、なんとかやり遂げた。
私が子どもだから、みんな優しくしてくれたのかなぁ?
……子どもでよかった。
舞台うらで資料を片づける。
サマージャケットだけど、ビシッと決めるために着ていたブレザーを脱ぐ。
すべては白ウサギリュックに放り込む。
表へでれば、あとは楽しい時間の始まり!
意気揚々と、ふかふかカーペットの廊下にでた。
「「「佐竹さん、お疲れさまです!」」」
ガチッ! と一瞬だけ、歩く姿勢のまま止まる。
そうだ。まだこれがあるんだ。
リアルに人数分カッコを並べると、300以上並ぶのでこれで許してください。
廊下で待っていたのは、そう言って頭を下げる、灰色制服の列。
ハテノ中の生徒たちの、実にキッチリした礼だったよ。
安菜もその中の1人だね。
……だけど私は、その瞳にアヤシイ光を見た。
私を笑いたい、緊張する私がおかしくてたまらない目だ。
……まあ、いつもの事だね。
安菜の思い通りになるのはシャクだから。
私はふたたび背筋をのばして、みんなに礼を返す。
「ありがとうございます」
そうだ。私には、りそうがあるんだ!
ちびりそうだ。
{臨時 暗号世界&MCO国際会議}
その看板をくぐって、会場のラポルト・ハテノをでる。
暑い!
夏の空気は、夕方に向けて少し黄色くなっていたよ。
今度こそ、楽しい時間のはじまり!
隣の駐車場に向かおう。
白い巨大なテントにおおわれた、楽しいイベント会場へ。
このビル解体の場にありそうなテントは、クレーンや人の手なら立てるのに数か月かかる。
ウイークエンダーのようなロボットなら、傘をさすように一日で立つけどね。
特務機関プロウォカトル。
それが経営する割烹居酒屋いのせんす。
そのでっかいロゴが入ったテントは、怪獣の体液でも謎のガスでも変な超物質でも飛び散らないようにする物なの。
怪獣を解体する時、本当に、どんなものが出てくるかわからないからね。
今日は生徒たちは現地解散。
生徒たちは、まずブレザーを脱ぐ。
家へ帰ったり、私を追い抜いてテントへ行ったり。
「よかったよ。うさぎ」
安菜もテントへ向かう1人だね。
「早く行こう!」
私の手を引いて、テントへ向かう。
まあ、この明るさには救われるね。
人によっては、隣の{ハテノキャバレー}……と書いてある、市が持ってる建物にも行くね。
壁にイルカの絵が描いてある、年季の入った建物。
キャバレーと言っても、大人向けのお店じゃないの。
元はフェリー乗り場の待ち合いだったらしいの。
でも、フェリーはなくなっちゃった。
次はレストランになった。
私が生まれるかどうかの時にはもう潰れていたの。
その後は市が買い取って、時々イベントに使っている。
今日は特設オシャレなカフェとして使われているの。
後で必ず行こう。