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83/125

83.ブチキレたら、危険な打ち上げ

 巨人が右腕を振り上げた。

 また私たちを叩くつもりだ。

 左腕はキャプチャーに突き刺したまま。

 さっきのに味を占めたんだ。

 突き刺した腕を通して、スムーズに打撃を通す!


「な、めるなあ」

 ああっ。言いなれてないから、変な声になった。

 それでも、ウイークエンダーの空挺ユニットを使って、へたり込んだ体勢から立ち上がる。

 全身のブースターも、全開にする。

 両拳を後ろに引く。

 向かうのは、巨人が自分からヒビを入れた、両足!

 しまった!

 この距離は、ショックダイルを狩った時より短い!

 スピードが乗らないかもしれない。

 かまうもんか!

「なめるなぁ!! 」

 こんどはカッコ良く言えた!

 ウイークエンダーをはねあげる!

 前にかけだす!

 スピードをのせるだけのせた2つの拳を、叩きつける!


 ヒビが、一気に広がるのが見えた。

 巨人の炎の黒い足が、輪郭を失う。

 キャプチャーに阻まれたまま。

 直後、振動と爆音がひびいた。

 押し戻される!

「敵目標の足が、爆発しました」

 はーちゃん?

「両足に過剰なエネルギーをため込んだ上、先ほどのパンチで完全に破壊されたようです」


 急激に、バランスがくずれていく。

 ふんばれないまま。

 そうだ、キャプチャーの力でスピードを落とせば・・・・・・と思ったら。

 視界から、キャプチャーごしだから見えていた黒が消えた。

 しまった!

 キャプチャーから追いだされた!

 じぶんの考えの遅さに嫌になる。

 とっさにイメージする。

 手でキャプチャーをつかみとる。

 手に痛みが走る。

 機体はスピードを落としていく。

 成功だ!

 だけどまだ足りない!

 空挺ユニットはウイークエンダーがバランスを失うと自動で姿勢制御してくれるけど、間に合うわけがない。

 このままだと、背中から落ちる!


 そう言えば、レスラーだったか、フットボール選手だったか。

 背中から倒れて、脊ずい、背骨をおって、寝たきりになった人がいたらしい。

 原因は、イスに座ろうとしたら、イスを外されたと言う、下らないイタズラだったと思う。


 私が思い浮かべたことは、安菜とはーちゃんの無事。


 不意に、空が見えた。

 相変わらずの雨空。

 なんだろう。

 黒い煙が、空に伸び上がってる。


 その、はるか下で、灰色のとがったものが飛んでいった。

 ゴー! と巨大なジェットの轟音。

 七星。

 暗号世界からやって来た戦闘機が、2機。

 2機の七星は私たちを通りすぎると、すぐもどってきた。

 信じられないほどの急カーブで!

 地面ギリギリという超低空飛行。

 そのままの速度で、形がかわっていく。

 スマートな人型が、一気に近づいてくる!

 空力的には弱点にしかならないはずなのに、地面にもぶつからず、完了させた。

 スゴい腕だよ!

 そのまま、ウイークエンダーにぶつかった。

 ウイークエンダーの落ちるのが、止まった。

『うさぎ! 安菜! それと、えーと』

 無線ごしに聞こえる、女の人の声だ。

 いつも聴いている、わたしのアイドルの、真脇 達美さん?! 

『それと、はーちゃん?! 無事か?! 』

 男の人だ。

 鷲矢 武志さんだ。

「「「はい! 」」」

『無事で良かった』

 先輩たちは、七星の人型ロボットの力で、ウイークエンダーを支えてくれたんだ!

「ありがとうございます!

 でも、何でこんなところに?! 」

『単なる出稼ぎ!

 コイツのテストパイロットでね』

 そう言えば、今日はグロリオススメは臨時休業だった。

 最強のサイボーグにはそんなことがあるんだ。

『そしたら、こっちに呼ばれてね。

 海の方で手間取ってた。

 遅くなってごめんね』

 達美さんの頭を下げる姿が目に浮かぶ。


「いえ。悪いのはアイツらです! 」

 安菜の言う通りです。

 そう言えば、アイツらはどこ?


 恐ろしいほどの振動はつづいてる。

 キャプチャーの中に、空洞ができて、黒い炎が空に吹きだしていた。

 まるで噴水のように。

 その炎の中に巨人は、いない。

 見上げたら、いた。

 夕方に向かって暗くなった空に、魔法炎が弧を書いてる。

 失った足の爆発で吹き飛んだ、黒い巨人の上半身だ。

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