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73/125

73.できる限りの、高速

 ブロッサム・ニンジャの右肩からせりだすコンテナ。

 10メートルはあるけど、およそ50メートルのブロッサムの背中だとリュックサックに見える。

 頭のすぐ後ろから、ふたが開く。

「こんな近くでブロッサムの砲撃をみるの、ひさしぶり」

 私も今年はじめてだよ。

 ん?

「安菜、見たことあったっけ? 」

『MLRS、撃ちまーす』

 ウワッ!

 ブロッサムの青い機体が、オレンジ色のまばゆさに隠される。

 安菜の返事は、しのぶの声と爆音でかき消された。

 MLRSは訳すると多連装ロケットシステム。

 コンテナから飛びだす巨大なロケット砲が、雨を突っ切る。

 全部で4発。

 鋭く立ち上がる山の、深い谷を飛び越えて、山の向こうに落ちて・・・・・・。

『弾着! ハズレなし!』

 しのぶが、真剣な声で報告した。

 弾着の様子はハンターキラー仲間がヘリコプターで撮影してくれる。

 その視界の下からは、ロケット弾の火が次々に飛んでいく。

 この谷のつづき。

 海に向かって広がって、街としても大きくなったあたり。

 そこでも切り立ちながら見下ろす山々に、4つの閃光がまたたいた。

 それが、合図。

「行け! 行け! 行け! 」

 私は叫ぶと、同時に飛び上がった!

 背中と足の裏からジェットを噴射。

 一気に加速する。

 同時に、スカートを手で広げる。

 腰から左右にのびた赤い鉄板2枚。

 中のプロペラが風を起こして、機体を安定させる。

 後ろを見ると、ブロッサムも同じ格好で空を飛んでいた。

 ディメンション・フルムーンと並んでる。

 私のとなりには、パーフェクト朱墨がいるよ。


 ロケット砲の爆心地が見えてきた。

 土がえぐられて、周りの木もなぎ倒されてる。

 そばには、こん棒エンジェルスのポルタ。

 そして頭上には、雨に逆らって飛ぶ、ハンターキラーのヘリコプターや戦闘機たち!

 それに、雷切!

 爆心地の周りに、さらに攻撃を加えてくれる。

 私は、その爆心地を飛び越えた。

 目指すのは、この向こう!

 後ろでの爆心地で、ブロッサムが着陸する気配。

 爆心地がもう1つ見えてきた。

 こっちでもダメだしの攻撃がつづく。

 その度に、木々が歪む。

 痛そう!

 だけど、爆発に関係なく、歪む木々もあった。

 あそこが、着陸点!

 

 攻撃がやむ。

 今度は私が木々を歪ませて、着地する!

 右に下る、山の途中へ。

 足を踏ん張る。

 なんとか停止した!

 左にはポルタ。

 私は手にしてた手榴弾を、放り込んだ。

 

 ドーン


 効果を確かめる間もない!

 山の下へ目をうつす。

 急な山を下りればすぐ川があって、その向こうが百万山市。

 ここはホクシン・フォクシスの基地がある、あの山のならび。


 ポルタたちは、曲がったりぶつかったりしながら、4つは山に引っ掛かるように止まったの。

 ちなみに、1つは海に落ちたよ。


「見つけた! 」

 また、AIより早く安菜が見つけた。

 指し示された指にしたがって、かけだす!

 

 メリメリ


 腰から下に木の弾力がかかる。

 押し戻す力に逆らって、すすむ。

 足下の土は雨水を巻き込んで、土砂崩れみたいになる。

 泥が足にまとわりつく。

 それでも、木と雨の間からでも、足下の地形を見抜くAIは、さすがだよ。

 それでも。

「「そこだ!」」

 地形も何もかも無視して、ダイブ!

 勝手に揺れ動く木々! 

 そこに隠れた者を、土ごと抱えるようにして、つかまえた!

「「えーい! 」」

 なぜか安菜も叫ぶ。

 目標は両手でしめあげながら、立ち上がる!

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