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55.脅威研究室へようこそ

 私の精一杯の紹介は。

「あーっはっは!」

『わははは!』

 大笑いで書き消されてしまった!

 直径10メートルの分厚いコンクリートのドーム。

 爆発物試験場を兼ねている。

 その壁には、作り付けの監視カメラがドーム中心に向かってズラリと並ぶ。

 当然、防弾ケースに収まって壁にはめ込まれたのだよ。

 新しく運び込まれた観測機器も多い。

 それを操作する研究員もたくさんいる。

 白衣を着たいかにも科学者!な人。

 腰ベルトに工具をたくさん下げた、作業着の大工さんみたいな人もいる。

 そのすべてが、緊張しているよ。

 きっと、私と同じ気持ちで。


 そこに響くのは、2種類の笑い声だったの。

「したつもり貯金!」

 1つはどら声。  

 ボルケーナ先輩がワニのような口をプワンプワンさせて上げる声!

「「おはようございます」」

 私たちが言うと。

「あっ、おはよう」

 ふり向いた青い目はクリクリ。

 しっぽはピーンと立ってる。

 毛並みもツヤツヤ。

 良かった。

 寝不足は解消したね。


 そして、もう1つの笑い声は・・・・・・。

『ハハハ、は!』

 突然、自分から断ち切った!

 スピーカーをとおした、にごりのある声。

 大人の男の人を思わせたそれが!


 観測される、包囲されたようにも見える、研究室の中心。

 黒い絵の具を水に垂らしたような、揺らめく表面を持つ球体がある。

 エニシング・キュア・キャプチャー。

 直径は人一人が立って入るほど。

 表面には、どんな方法なのか、たぶん魔法で観測されたデータが更新され、文字やグラフとなって表される。

 その中身が、破滅の鎧。

 それにしても……。

(これが、本当に鎧なの?

 ・・・・・・鎧だね)


 灰色の寸胴鍋のような胴体から、4本の太い手足が伸びている。

 その手足が、だらりとキャプチャーのなかに伸びたようすは、へたりこんでる人に見えるね。

 あのくらい太い服と言えば、宇宙服や、深海用潜水服かな?

 ないわけじゃない。

 でも、服とは思えないその姿は、その表面だよ。

 生クリームを泡だて、すくいあげてちぎるとピン! と立つ。

 それが完成で、「つのが立つ」と言う。

 わずかに床を向いたその角が、全身をおおっている。

 茶色いのは、チョコクリームを思わせるけど、そんなはずはない。

 すごく硬そう。

 それに、ケーキのような飾りを兼ねた付けかたじゃない。

 全身を角で無理やりおおった宇宙服か深海用潜水服。

 それで、ようやくシックリきた。


『ああ……初めまして』

 わずかに聞いた、あの笑い声。

 同じ声とも思えない、しぼんだ声だった。


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