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50.ウイークエンダーはいない

「おそれ多いことですが、お願いいたします」

 アーリンくん、格式張りすぎてるよ。

「スラッグヴォンズの進行ルートをしめしてください」

 達美さんはうなづくと。

「お願いします、でいいよ」

 緞帳の映像がかわる。

 ウイークエンダー達がいない世界に。

 小さく書かれた日本列島。

 赤い線が東京に近い太平洋側からはじまる。

 列島を短く横断して日本海をまっすぐ北へ。

 ロシアへわたる。

 線は大陸の中を3ぶんの1ほど進んだら、止まった。


「お願いします。日本の所だけ映してください」

 リクエストどおり、緞帳がかわる。

 そのとき、気づいた。

 アーリンくんの絵。

 ぐにゃぐにゃの枠のなかに、下から右に行って上に上がって左に行って上にぬける線。

 あの枠、静岡や東京から、北陸までだったんだ!

 アーリンくんが達美さんからうながされて棒マーカー、黒板とかを指し示す棒をうけとった。 

 受けとると緞帳に向かっていく。

「日本海がわのルートをみてください」

 スラッグヴォンズは、東京から埼玉県、群馬県、長野県を北上して新潟県で海にでた。

「この地点に注目してください」

 しめされたのは、その新潟だった。

「新潟には、柏崎刈羽原発があります。

 全部で7基。しかし、1基も餌食になっていません」

 そう、これがこの怪獣のなぞ。

「そしてもう1ヵ所」

 新潟から左へ海沿い、富山県を通りすぎる。

 ほとんど、北陸新幹線と同じルートだね。

 そこから線は北にのびるの。

 能登半島に向かって。

 ここまでで2日はかかったはず。

 アーリンくんがしめした地点は、北に行かず、まっすぐ進んだら付くはずの場所。

「日本の原発銀座と言われる、福井県の若狭湾です。

 廃炉中の物もふくめて15基あります」

 そう。

 だけど、そこに不思議があるの。

「放射性物質をエサにする怪獣が、近場にいくつもあるエサには目もくれていないのです。

 これは、生物学的に矛盾しています」

 そう、それなんだよ。

「この後、能登半島を北上して行きます。

 そのと中に羽咋市の志賀原子力発電所を襲っているので、空腹を覚えていないはずがありません」

 そして、ハテノ市までやって来たんだ。

 もう、人間は逃げることしかできなかった。

「ここ、ハテノ市では、丸一日かけて遠吠えを上げ続けています。

 これは、暗号世界へつながるハテノ市から暗号世界にいる怪獣にたいして、勝利宣言をしたものと、考えます」

 この頃はスラッグヴォンズも、お腹がすいていたのが確実なんだ。

 放射性物質を残らず食いつくしている。

 残った放射能は、ないんだよ。

「ここから海に入ります。

 3日かけて、ロシアに上陸しました」

 ウラジオストック。

 ロシア海軍の基地があるの。

 ここまでの海と、ここで、迎え撃ったロシア軍部隊が失敗した。

 そして、海軍が持つ核兵器がエサになった。

「そこからは、まさに食べ散らかしながら移動します」。

 海沿いに西へすすむ。

 線は朝鮮半島の付け根、朝鮮民主主義人民共和国を通る。

 多くの核兵器を食べ散らかし。

 つまり、すべて吸収しきらずに次へ向かった。

 直ぐ南の韓国にも原発はあるけど、スルーだった。

 中国の首都である北京を襲う。

 ここまででも、多くの作戦が行われたの。

 やがて線は、モンゴルを横断して、ロシアへ。

 大陸の奥深く、カザフスタンとの国境近くで止まった。

「今もそこで眠っています。

 放射能汚染の中、無人の森の奥で」

 そこは、ロシアと同盟国のカザフスタンにとって、他国からもっとも遠いところ。

 核兵器の製造工場や大陸間弾道ミサイルの基地が集中しているところ。

 スラッグヴォンズは、そこをナワバリに決めたらしい。

「現在でも、様々な問題があって、倒せないことは、理解しています。

 痛ましいことです」


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