4.ホクシン・フォクシス
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画面いっぱいに、金属の歪みない床が映される。
プロウォカトルが誇る巨大輸送機、雷切の中だよ。
これはウイークエンダーの頭、メインカメラが写した。
太い支柱で囲まれた防弾ガラスの内側、キューポラに囲まれた映像。
『祈りを捧げます。
天にまします我らの父よ。
願わく御名をあがめさせたまえ』
聞こえてくるのは、私の声だよ。
出撃前のおまじない。
ボルケーナ先輩に考えてもらった、みんなに聞いてもらうための、おまじない。
『御国を来たせ給え。
御心の天なる如く、地にもなさせたまえ。
また、このハンターキラーたちが無事、職務を全うすることを導きたまえ』
雷切の底が開いていく。
日の光が入ってくる。
低いまばらな木、花をちりばめた草原、ところどころに残る雪。
夏の高山ならではの光景だよ。
むき出しの地面は、火山らしいゴツゴツした岩はだ。
ここはハテノ市のある半島の付け根にある、日本の3大霊山の一つにも数えられる山だよ。
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その関係者も、ラポルト・ハテノにきている。
ホクシン・フォクシスの隣に座る瑞獣4人組。
山の霊気を受けて戦う、えらい獣たち。
リーダーは九尾 九尾さん。
19歳の美女で、朱墨のお母さんの妹さん。
九尾さん家に生まれた九尾さん。
実は、20年前のバーストのあと、異能力者が増えた人間への強さを見せつけるために造られた子ども。
そう考えると、ちょっと親近感わくね。
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『良きことをするための力と知恵と勇気を授けたまえ。
この日の終わりにはあなたに使えるハンターキラーをここにお戻しください。
どうぞ、この祈りを聞き入れたまえ。
アーメン。
神はあなた方とともにある』
ワイヤーで降下されるウイークエンダー・ラビット。
赤い角張った装甲。
太い、人間とは逆に曲がるヒザをもつ足が、宙つりになる。
その下を、二筋の青いものが流れていった。
あれが北辰。
『アーメン。うさぎさん、よく来てくれました』
朱墨からの通信だよ。
『データリンクしてるね。私の映像、見える? 』
『うん、見えてる』
コクピットではサブモニターで映していた、ホクシン・フォクシスがだしたドローンからの映像がスクリーンにも映しだされる。
全長17メートル、重量52トンのキツネ型メカが、かたい急斜面を駆け上がっていく。
無駄なエンジン音などはカットしている。
白やピンクの花が、踏まれて散った。