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40.リーダー! 真脇 達美!

 私はベンチにすわらされた。

 逆らうつもりもないけど、逆らえない。

 相手は180キロある金属ボディーだから。

「うさぎ、『何が忘れられたのか』よかったよ」

 並ぶ達美さんが微笑んだ。

 血の繋がりはない、そもそも種族も違うけど。

 達美さんは、ボルケーナ先輩の旦那さんの妹さん。

 そのお兄さんの手で脳に併設された量子コンピュータが、ネットワーク上のあらゆる情報にアクセスできる。

 その達美さんに言われたなら、ちゃんと見たんだろう。

「でも、今日はチューもなしですか?」

 思いっきり顔をよせてみる。

 いつもなら抱きつかれてホッペにチューぐらいするのに。

 私のアイドルは遠ざかった。

 微笑みに寂しさをにじませて。

 達美さんのしっぽがバタバタ降れている。

 不機嫌なネコの特性が。

 フカフカモフモフの赤い毛でおおわれたしっぽ。

 そのなかにも重く固いフレームがある。

 当たるといたい。


 私は背筋をのばして、礼を返す。

「ありがとうございます」

 だけど、ここでほめられたくなかったな。

 この仕事についてイヤなこと。

 それは自分の経験が、イヤな記憶のイメージで上書きされていくことだよ。

「あんまりよかったから、今アーリンくんに見てもらってる」

 たとえ誰に見てもらっても、この日を思いだすんだろう。

 私を無視して、それにファントム・ショットゲーマー九尾 朱墨の監督も無視して、勝手に飛びだしてつかまったアーリンくんを尋問する今日を・・・・・・アレ?

「なんで勝手に見せてるんですか」

 何となく予想はつくけど。

「うちの店のデジタル緞帳、アレってシャイニー☆シャウツがなにか更新するとお知らせがでるでしょ。

 それに興味をもった」

 やっぱりだよ。

 だけどムカついた。

「こっちの世界を知ってもらうよい教材だと思ってね。

 もともと、そのつもりだったでしょ」

「そうですけど、総理大臣がオカルトな謎をそのままにする話しなんて、あの・・・・・・マズイことになりませんか?」

 達美さんの表情に、活気が戻ってきた。

「人の苦境をバカにする奴なら、このまま切っても問題ないと思うよ」

 その誘惑には、引かれるものがあるけど。

「引かれる必要はないみたいだよ。

 本人は、君と朱墨ちゃんたちのためにやりたかったことみたい」

 私たちのため?

 あのロボルケーナで何を……私たちに力を示したかったとか?

「たぶんね。

 でもそれは教えてくれなかった」

 そうですか、そう言えば。

「そもそもあれ、15分の動画です。

 行かないとマズイんじゃ?」

 腰を浮かしかける。

 でも。

「私の店でパティシエがいないことなどありません。

 それに、タケくんが細かい説明をしてる頃だと思うよ」

 全自動こん棒つなぎマシンを、食い入るように見ていたアーリンくん。

 その姿は、本当にメカが好きと言うパワーがあった。

 タケくんとは、鷲矢 武志さん。

 達美さんの彼氏で、ピアニスト。

 そして、達美さんとほぼ同じ型のサイボーグ。

「それなら、時間は問題ないですね。

 今日の戦闘については、車のなかでだいたい見ました。

 他に覚えておくことは?」

「あるよ。今夜の妖菓子鬼茶天タイムは、アーリンくんにやってもらうから」

 妖菓子鬼茶天タイム。

 あやかしきっさてんたいむ。

 ここ、グロリオススメで使うことができる、達美さんの最強形態。

 ボルケーナ先輩が認めた神の力を、依頼人の願いの力を糧に使うことができる。

 ただし、店のなか限定で。

 依頼人は、「丸い角砂糖ください」と言えば・・・・・・アレ?

「じゃあ、私の依頼は?」

「アーリンくんの依頼と同じだった。

 あんたが店に入ったら、実行するよ」

 そういって立ち上がった。

 ・・・・・・朱墨ちゃんに会いたかった?

 ロボルケーナのことで、なにか話があるのかしら。

 私も立ちあがり、エスカレーターで上に向かう。

「そうそう、あのロボルケーナ、パーフェクト朱墨って言うんだって」

 へぇ~~。ええ~~?!


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