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16.エリートでよかった!

 外に飛びだす!

 私はシロドロンド騎士団のおじさまの手を引いて歩きだす。

 顔は氷のように青ざめているはずなのに、手は不快なほど熱い。

 しかもネバネバの気持ち悪い汗をだしてる。

 足もふらふら。

 どう見てもイヤイヤだ。

(かまうもんか!)

 私が向かうのは、テントの中だよ!

 と思ったら、ドドドドと足音が追ってきた。

「装備は仕様書どうりに! 作れ!」「装備は仕様書どうりに! 作れ!」

「「装備は仕様書どうりに! 作れ! 」

 重なる叫びとともに、ハンター・キラーのデモ隊が、やってきた。

 {装備は仕様書どうりに! 作れ!}のプラカードが迫ってくる。

 カードを手にした茂 しゅうじさんが。

「装備は仕様書どうりに! 作れ!」

 スゴイや。デモの掛け声に正式採用だよ。

 さっきもいっしょの宇潮 心晴さんは、好奇心いっぱいの笑顔でタブレットのカメラを向ける。

「ひっ」

 引きつるおじさまが、恐怖に息をのんだ。

 デモ隊の意をくんだのか、足が早くなった。

「うさぎちゃん、待ってよ」

 そうじゃなかった。

 頭上にやっていた赤い影。

「心配してくれるのはありがたいけど、わたし元気だよ」

 ワニのような口から、ドラ声で訴える声。

 不快なゴボゴボという音とともに。

 ボルケーナ先輩がプワプワ浮いてる。

 そうだ。

 腹がたつ!

 おじさまが足を速めたのは、先輩がこわいからにすぎないんだ!

 その先輩のシッポが、ダラ〜ンと垂れさがっている。

 あの人は空を飛ぶとき、重力をあやつる。

 その範囲が、シッポまで届いていないんだ。

 わたしはそのシッポに、中学生にしては驚異的と言われるジャンプで、飛びついた!

 先輩は、同じ大きさの風船くらいの浮力しかなかったの。

「寝不足は元気っていわないです!」

 先輩は「あーれー」と情けない声をあげて、ひき落とされた。

 浮力が同じ大きさの風船くらいしかない。

 これは私には、悲劇なの。

 元気なら、わたしを飛びつかせたまま飛んでいけるのに。

 無念の表情につながるシッポは、安菜にわたした。

 そのまま、マフラーのようにシッポを巻きつける。

「安菜は先輩といっしょにコンサートに行って。

 誰か、捕まえれる人がいるでしょう」

「誰もいなかったら?」

「あなたがずっと捕まえてればいい」

「ここまで来たなら、続きを見届けたい気もするけど」

「まだ付いてきてくれるつもりだったんだ。ありがとう」

 私は進んだ。

 その分、後ろから追いかける人波にはばまれる。

「「うさぎ!」ちゃん!」

 2人の声が重なった。

「コンサートは! たのんだよー!」

 おじさまの部下、男女と子供の3人の騎士もついてきてる。

「ヒエエ〜」「神に逆らった」と、おののきながら。

「あ、朱墨ちゃんはついてくるの?」

「ついていきます」

 小さな体で人波に逆らいながら。

 押し寄せる人の流れを読んで、縫うように勧めるのはさすがハンター・キラー。

「何をしたいか、見せてもらいます!」

 そうなんだ。

 私を見てくれる人はここにいる。

 ボルケーナ先輩しか見ていない、見ているつもりでしかない暗号世界の人たちとは違う。


 私は、声をはり上げた!

「道をあけてくれませんか?!」

 黄色さがふえても暑さはかわらない空気も、デモ隊もかき分けて進む。

 今の私は、プンプン怒りモードだ!

「彼らには私から、見ていただきたいものがあります!」

 聞こえる。「おー、ウイークエンダー・ラビットのパイロット」みたいな、驚きの声が。

 人波がわれていく。

 エリートでよかった!


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