121.私が見つけた秘密
「黒い、鳥? 」
まわりのみんなも気づいた。
たしかに翼がある。
でも形がおかしい。
太い足が見える。
鳥じゃないあの太さは、人の足だ。
「こん棒エンジェルスだ! 」
頭を回して自分を見ている。
突然光りだした自分に、とまどってるんだ。
そこへ地上から、何本も光の線がのびて来た。
スルスルと、波打つようにのびる光。
ミサイルの軌道だ!
たちまちこん棒エンジェルスを、破壊力をもつ光が飲み込む。
・・・・・・落ちていく。
「あれは、ミサイルだ」
文華が説明してる。
「機械が目標を探知すると、そこに向かって爆発物を飛ばす」
そう言えば、文華が明るくしたくらいで当たる兵器じゃないな。
「だが今、それを導いたのは、異能力を得られず滅んだ人の力だ」
文華が言い続ける。
「この世の理を最大化する力。
そうするという誓いだ」
MCOのことだ。
Mechanical Civilization Oath。
"物質文明から生まれた誓い"。
それを説明してるんだ。
「悠久とも言える年月で、その誓いは高まった。
それを十二分に働かせる形、それが機械だ。
それを、お前たちや私に勝てるか、それさえ解らんのか! 」
なんだか、イメージと違う。
もちろん、文華は恩人の敵だ。
どうなろうと知ったことじゃない。
だけど、あんな風に自分や相手の弱さを、素直に口にできた人なのか?
それを無視して、魂呼長官の腕を奪う人じゃなくて?
何より、安菜が自分の安全を信じてる。
このイメージの違いは、どこから来たんだろう。
その時、文華の動きが、こん棒エンジェルスへの注意が、止まった。
「お父様とお母様の気配がする!」
次の瞬間、黒い巨大な物が外から飛び込んだ。
砲撃? ミサイル?
そうじゃない。
もっと長くて、途切れないもの。
とてつもなく大きな力でできた、ルルディ騎士の魔法炎だ。
炎が文華に直撃する。
さらに闇に近い、真っ暗の中で、文華が浮かび上がる。
安菜が動きだした。
私の前に飛ばされて?
いえ、炎に運ばれてくる!
文華の手が、動いていた。
私に向いて。
もう彼女は観念したらしい。
熱さを感じさせない炎で、安菜を帰してくれたんだ。
炎が消えて、安菜が私の前に落ちた。
私は、抱きしめて支える!
支えた!
お帰り!
「うん。ただいま」
こん棒エンジェルスも、同じように運ばれてきた。
支える人はいなかったので、倒れこんだ。
結局、北辰の口で拘束された。
機械式の緑のキツネの口なら、食べられることはない。
微妙な力加減も調節できるし、そもそも黒い鎧でケガもしないでしょう。
「うワアああ! 」
もうしばらく、絶叫は続きそう。
「「今度こそ逃げよう。お姉ちゃん」」
みつきとしのぶが呼んでる。
パーフェクト朱墨が、私たちと文華たちをさえぎるために立ちはだかった。
たのもしい姿。
まさにこの山の守護者。
ここはパーフェクト朱墨の山だね。
だけどね。
「あの! ルルディ王さまと王妃さま!
お話があります! 」
ああ、やっちゃった。
逃げかかったみんなが、ギョッとして立ち止まる。
ただ、安菜だけは落ち着いてる。
みんなと私の間に立つ。
話す時間を作ってくれるつもりだ。
ありがたい。
私は、どうしても伝えたかった。
それにもう、話せる機会はないかもしれない。
「閻魔 文華は自分じゃ勝てない相手がいることを認めた。
それを言えるようになったのなら。
今まで、できないことが、できるようになったなら、それは強くなったと言えるんじゃないですか?! 」
言ったあとで、しまったと思った。
弱音を吐くことが、強くなったなんて。
侮辱ととられてもおかしくない。
そう思ってた。
だけど、だけどね。
夫妻は、ちょっとだけこっちを向いた。
そして、うなづいたんだ。
見間違いかもしれない。
でももう、確かめることはできなかった。
魔法炎は、今度こそ空間の全てをおおいつくした。
そして、それっきり。




