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115/119

115.安菜はどこでも現れる?

 安菜め

 しばらく見ないうちにまた強くなった

 実はこの子、もともとは「一円の足しにもならないけど、大切な友だち」と言うイメージで作りました

 肌が黒かったりするのは、「こういう人がいるんだから仕方がない」くらいの気持ちでした

 それが、フランス貴族になり、巨大特務機関相手に防犯動画を作ったり

 戦う魔法使いに交渉して最前線を渡り歩いたり


 案外、メアリー・スーとか言う連中も、こんな感じでチートになっていったのかな?

 ルルディ王夫妻の許しをもらったころ。

 私たちに後退命令がでた。

 事件の最初から活動していたパイロットたちにね。

 代わりは、レイドリフト四天王がやってくれる。

 ありがたいや。

 それでも、こっちにも仕事ができてたんだ。

 まずは朱墨ちゃんがパーフェクト朱墨を下りる。

 続いてお父さんの北辰に乗りうつる。

 街中で緑のキツネ型ロボットは、スルスル進む。

 閻魔 文華を迎えに行ったんだ。

 レイドリフト・ストレートキーパーも、そっちに行った。


 私は、その様子を監視する。

 ウイークエンダーを後退させるのは、北辰がちゃんと帰るその時だ。

 向かうのは川を挟んだ後ろの山。

 朱墨ちゃんたちホクシン・フォクシスの基地だよ。

 パーフェクト朱墨も、アーリンくんが動かして一緒に。


 この基地は山をくりぬいて作られてる。

 サーチライトや街灯に照らされて。

 山肌にでっかいシャッターが立っている。

 それが上がると、中は50メートル級ロボットが1機入る工場。

 パーフェクト朱墨用で、今、持ち主が入っていく。

 ウイークエンダーが案内されたのは、外の駐車場。

 後でディメンションとブロッサムも来るから。

 基地までは歩く。

 あ、大きな池がある。

 日本庭園だ。

 山の木々に面して作られてる。

 石橋がかかって、池の中に灯籠まである。

 そう言えば、朱墨ちゃんの九尾家は水を司る家系でもあった。

 この池も、基地を守るのに必要な設備なのかな?


「うさぎ~」

 その池の向こうから、呼ばれた。

「こっちから見て。

 まさに明鏡止水の景色だよ」

 安菜が、池を指さしていた。

 明鏡止水。

 すみきった清らかな心を表す四字熟語。

 曇りのない鏡、波のない水に似た心のこと。

 本当だ!

 安菜のとなりで見ると、月が池に映っている。

 周りの明かりにも負けない、凛とした月の姿が!

「まるで私たちみたい」

 さすが安菜。

 て言うか、なんでここにいるの。

「今は、ノーブル・アンビルのついでだよ。

 あの人たちが閻魔 文華の護衛に呼ばれた。

 で、私の精神安定も護衛の仕事でしょ。と言って連れてきてもらった。

 今は、ご飯を作る係だよ」

 あんたの度胸、痛み入るよ。

  

――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――


 シャッターをくぐると、真新しい工場。

 ペンキ塗りたての壁や床。

 奥でパーフェクト朱墨がクレーンで囲まれていく。


 ・・・・・・え?

 何?

 とてつもない見物のパーフェクト朱墨。

 それへの視線のはしに、見忘れるはずのない形が見えた。

 ブルーシートにおおわれてるけど。

 丸くて、人型なのはわかる。

「はーちゃん? 」

 それは、私と安菜が自分でコクピットからほうり出した、大事な友だち。

「我々が回収しました」

 そこには、4人のルルディ騎士がいた。

 敬礼してる。

 タイミングも腕の角度もバラバラ。

 明らかになれてないね。

「ノーブル・アンビルです!

 トロワグロ閣下が気にされていたので、差し出がましいとは思ったのですが」

 気にしてたのは、私も同じ。

「そうでしたか。

 ありがとうございます」

 友だちをポイ捨てみたいにしなくて、良かった。

「うん、そうだね」

 やっぱり安菜も気にしてたんだ。

 しばらく待ってて、はーちゃん。

 後でちゃんと良いようにするからね。


 空気が派手にゆれて、工場の中に吹き込んできた。

 その締めくくりに小さく地面がゆれる。

 ディメンションとブロッサムが到着したんだ。


「あ、閻魔 文華がきた」

 安菜が外を見ていた。

「うさぎ、いつもの紹介をお願い」

 うん、任せて。


 基地に入って来た、4機の北辰。

 一緒に、軽トラックも来る。

 ロープでしばられた黒い大きな固まりを運んできたんだ。

 それは文華のキャプチャー。

 ボルケーナ先輩のしっぽは、ほどけたんだ。

 軽トラックの荷台には、しのぶとみつきもいた。

 ほら、下りておりて。 


『文華さま、ここなら安全です』

 朱墨ちゃんがスピーカー越しに語りかける。

『周りはすべて味方です。

 車から下ろし、支援をうけられるようにいたします』


 よし、はじめよう。

「はじめまして。

 私は佐竹 うさぎ。

 対怪獣機甲機関、プロウォカトルに属しています。

 巨大人型兵器、ウイークエンダー・ラビットのパイロットです」

 そして、安菜を。

「安菜 デ トラムクール トロワグロを紹介させていただきます。

 彼女は、貴族ではありますが、なんの特権も財産、領地もありません。

 しかし、料理の腕が立ちます。

 私と共に、文華さまの料理を担当します」

 文華のキャプチャーに、変化はない。


 ほら、あんたたちも自己紹介して。

「えーと。

 はじめまして。

 佐竹 みつきです。

 うさぎの弟です。

 僕も巨大ロボットのパイロットです。

 ディメンション・フルムーンと言います」

「あの、はじめまして。

 佐竹 しのぶです。

 うさぎの妹です。

 私の巨大ロボットは、ブロッサム・ニンジャです」


 それからも、自己紹介は続いた。

 それでもキャプチャーは動かない。

「ねえ、うさぎ」

 安菜に服を引っ張られた。

「もう、行こう。

 みつきとしのぶも」

 潜めた声で、私たちを急かす。

「朱墨ちゃんとアーリンくんも。

 許可はもらってるから」

 私たちは、キッチンに向かうんだ。


 振り向いて見た。 

 軽トラックの運転手がロープをはずし、ノーブル・アンビルのメンバーが下ろした。

 キャプチャーが自分から動くことはなかった。

 まさか、もう動かないんじゃないだろうな。

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